1-16 ボス
ヨシ!準備OKだな。
帰ってきた時以来、また婆さんは居ない‥‥‥
そんなに俺と居るのが嫌か!?‥‥‥拗ねたりしないけどな!ふん。
今回は、何処にどんな状況で飛ぶか分かってるから、準備万端!
前回よりは上手く過ごせると思う‥‥‥では、
・・・・・・飛ぶか・・・・・・
・・・・・・飛べ!・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
毎回のこの感覚は慣れない。ちょっと吐きそうになる。
無事に戻ってきた‥‥‥ん?戻ってきた?‥‥こちらが本拠地になってる証拠かな?ははっ!
さて!と思ったら外が騒がしい!‥‥‥ん??なんだ?
まさか?また牙猿か?‥‥‥なんて扉を開ける。
「!!っっ!!」
その、まさかだった!牙猿が大量に居て、騒いでいた。
「おいおいおいおい!!どうなってんだ?牙猿は話して分かった筈だろ?‥‥別の群れが来てるって可能性もあるか?‥‥」
もう一度、扉を開ける‥‥‥牙猿が大量に居るが、誰もこちらを見ていない。
「なんだ?何が起きてる??」
その時、雄叫びが聞こえた!
「ウグォーーーーーーーーーーーォォッ」
正に耳を劈く様な雄叫びだった!!
今の一声で、足が震えそうな恐怖を覚えた。
‥‥‥その声の方を向くと、
「グァアァァァーーーーー!!!!!」
牙猿が見上げるような熊?‥見上げるような巨体の角のある熊に牙猿が弾き飛ばされていた!
牙猿!?それを見た瞬間!!‥‥血が沸き立った!!
「『剣』!『造林鎌』!」
走り出していた!
「『剣』!殺れ!」
叫ぶと同時に、『造林鎌』を斜め下から振り上げる!
『剣』に気を取られた角熊は、『造林鎌』を避けられず脇腹から右の肩まで切り裂かれた。
更に『剣』に、首の左を切り裂かれ、血をシャワーのように噴出した。そして、ゆっくりと後ろに倒れた。
直ぐに牙猿の所に行き、
「おい!大丈夫か?死ぬな!!」
シルバーの毛並みは血だらけで、満身創痍だった。周囲には雌?らしき牙猿が、三頭、泣きそうに見ている。
「おい!おい!死ぬな!戻って来い!牙猿!死ぬな!」
「‥‥‥‥‥‥グァ~~‥‥まだ死んでねぇぞ。」
「おぉ!生き返ったか!!」
「まだ、死んでねぇって‥‥‥」
牙猿はヨロヨロと身体を起こした。
「牙猿!取り敢えず家に来い!周りの雌も一緒に!」
牙猿の両手を雌2頭が支えて、家の中に招き入れる。
謎結界は敵対心が無ければ大丈夫なようだ。
周りの牙猿も心配そうに見ている。
「お前らは少し待ってろ!」
中には不満そうに牙を鳴らす牙猿も居たが、特に何も言わなかった。
家の中で、畳の上にブルーシートを引いて、牙猿を寝かす。雌たち三頭は土間に座ってて貰った。
湯を沸かして、タオルを雌に渡して牙猿の身体を拭かす。
アイテムBOXからリンゴを取り出し、
「牙猿!食えるか?」
リンゴは植物鑑定で見ると、滋養強壮、疲労回復、更には治癒効果まであるらしい!
牙猿は意識朦朧な状態なので、雌のうち、一番格上?であろう雌に口移しの方法を教えて、牙猿にリンゴを食わす。・・・少しすると牙猿も落ち着いてきたようだ。
外で待っている牙猿たちにも、リンゴを一つづつ渡した。子供達も居て、彼らにはキャラメルを追加で配った。キャラメルを食った牙猿(子供)は大騒ぎしてたが、ちょっと失敗した気がする。
そして、喉と胸を切り裂かれた熊?、角があるから角熊と呼ぶ。角熊は絶命して、もう血も出なくなっていた。今はどうこう出来ないので、取り敢えず格納。‥‥‥格納した瞬間、牙猿がざわついたが、処理は後から考えよう。
そうこうしてるうちに、牙猿が雌に肩を支えられて外に出てきた。
「助かった。済まない。」
「おぉ。無理すんな!まだ寝てろ。」
「そんな訳に行かない。群れを纏めないといけない。‥‥‥グァーーーグォグォッ!ググゥ」
周囲にいた牙猿が、牙猿の一言でキレイに並んだ。
このまま出て行くつもりなのは直ぐ分かった。
「おいおいおい!!待て待て!!」
「この恩義は忘れない。前回は見逃して貰って、今回は助けられた。これ以上迷惑は掛けない。」
「だから、待てって!今、出てっても、体力的にも戦力的にも辛いだけだろ?だから、提案があるんだが、聞いてくれるか?」
「提案??なんだ?」
「まずは、お前らの遷移隊を殺ッてしまった。それについて謝る。だから許して欲しい。」
「それは、遷移隊の定めだ。強い奴が勝つ。当然だ。」
「そうか、ありがとう。次に、今の角熊だ。お前らに家を守って貰った。それについても礼を言う。ありがとう。それにあんな奴がゴロゴロ居るのか?」
「あいつは偶に出る。牙猿(我等)の宿敵だ。出会ったら必ず戦いになる。お前が気にする事じゃない。」
「そこで提案なんだ。この家の周囲を警戒してくれないか?」
「は?どういう事だ?」
「そのまんまの意味だよ。ここに住んで辺りを警戒して欲しい。見返りは食事だ。全員の毎日の食事を面倒見よう。‥‥‥俺はこの辺の事は良く知らない。だから、この森を良く知るお前らに警戒して貰えれば助かるんだ。」
「牙猿(我等)は相当食うぞ?お前に賄えるのか?」
「あぁ。この畑も広げるし、お前らも狩りはするだろ?もし飢えるようなら直ぐに出てってくれて構わない。」
牙猿は周りを見渡した。‥‥雌3頭は頷き、子供たちは、超絶喜んでいた!
つか、みんな言葉は分かるのかよ?‥‥‥あっ『言語理解』があったな!あれが良い仕事してるのか。
「分かった。世話になろう。人間、よろしく頼む。」
「あぁ。こちらこそよろしく頼む。俺は真悟人という。そのままマコトと呼んでくれ。」
「牙猿(我等)には特に名前は無い。好きに呼べ。」
「分かった。牙猿、お前はボスだ!」
「『異界の指輪』の声がする‥‥‥牙猿に認められました。」
牙猿に認められたので、新たな機能を解放!‥‥
「動物鑑定を開放‥‥‥植物の次は動物ですね!・・・おぅ。これは!名前や好き嫌いや弱点、それに毒や食性、素材も分かるのか!!なかなか有用なスキルだな。」
「マコト。我等の巣を作りたい。場所を指定してくれ。」
「牙猿たちはどんな巣を作るんだ?小屋みたいなのがあった方が良いのか?」
「我等は森で生活をする。木の間に蔓などで巣を作る。
「そうか。んじゃ、車の横の林か、畑の奥の森はどうだ?」
ボスは辺りを見渡して、雌を呼ぶ。何か会話をして雌は奥の森に入っていった。
「我等は奥の森に巣を作ろう。食事は自分たちで何とかなるから、気にしないで良い。ただ、偶に畑の作物や果実を分けて欲しい。」
「分かった。今はリンゴしかないが、持って行くか?」
ボスは頭を振って、
「あのリンゴはとても希少なものだ。やたらと食わせるモノじゃない。‥‥‥ケガをして、直せる果実は中々無い。大事にした方が良い。」
「そうなのか。分かった。忠告ありがとう。」
「では、巣を作りに行く。・・・・・グォーーーー!クォックォッ!」
あっという間に見えなくなってしまった。
あのスピード!まともに戦ってたら、アッという間に狩られてたんだろうな。‥‥‥色んな偶然が重なって、仲間になって貰えた。この縁を大事にしないとな。
しかし『言語理解』で言葉が分かるのは良いんだが、牙猿同士の会話はサッパリ分かんねぇな。それと、あの雌たちはボスの嫁か?やはり一夫多妻なんだなぁ‥‥寂しくなんかないからね!‥‥‥って、俺は阿保か?
家に戻るとスライムが居た。
「おいおい!あいつらココに住むのかよ?」
そうか。最悪、スライムも食われるって言ってたな。‥‥‥スライム食って旨いのか?・・・ジッとスライムを見てたら、
「なんだなんだ?牙猿と同じ目ぇしてんぞ?、こりゃもうここに居られねぇかぁ?」
「はっ!!ごめんごめん!牙猿がスライムも食うってのを思い出して、旨いのか?って、考えちゃったよ」
「旨い訳ないだろ!ほとんど水だよ!本気でここには居られないかぁ?」
「ゴメン!本当にごめん!ちゃんと牙猿たちには紹介するし、絶対に危害を加えないように言うから!お詫びに、(リンゴは大事にしろって言われたから。)キャラメル食べてみるか?」
一粒300mのキャラメルを包み紙から出してあげてみる。‥‥‥すると。
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉ・・・・・・」
なんだ?スライムが震えて収縮を繰り返す。更に色もクルクル変わって行く!・・・・・ちょっとすると落ち着いて、なんか一回り大きくなって、色も薄いブルーから、沖縄の海の様な透明感のあるキレイな青になった。
「なんだ?何が起こったんだ?」
まだ続くって。