第3幕 人間不信につき友達にはなれません[後編]
「ねえ。僕たちが友達になる証に、ローズにあだ名つけていい?」
は?友達?
「え、マジ嫌なんだが。」
「どうしたの?そんなにあだ名、いやだったっ?」
「いえ。今まで、動物たちや草花以外、友達が、いなかったものですので。ちょっと、そういうの怖いというか………。」
よし、なんか勘違いしてくれたからとりあえず人間不信の体で流そう。
私は人間不信。だからやめてくれ。
「……フラワ………ラーファ。」
と、つぶやいた。
思わず「は?」と、聞き返した。何言ってんだこいつ。
「にっこりしたローズの顔を見てると、お花みたいだなあって思って。昔召喚された勇者が、お花のこと、そう言ってたんだって。それをいじって、ラーファって。それとも、いや?」
いやわらってないんだが。まさかお前も苦笑を笑顔と取ったのか。
取りあえず話逸らすか。
「動物たちに餌、あげてみますか?」
「ああ。そう言えば、ラーファ。よく、ここまで野生の動物と、仲良くなれたね。」
……やはりごまかせないか。
「私は、動物と会話できるんです。そしたら、お友達になれて。」
これでいいだろ。さぁここで切って会話の終了を……
「そうなの?じゃあ、話してみて。」
切れない。こいつ確実に意識的にやってるな。
これだから腹黒は嫌なんだ………。
「はい。『こんにちは』。」
私がそういうと、動物たちは頭を下げた。
ちなみに、私には、こんにちは。という声も聞こえる。
奴が、「すごい………。」という、声が聞こえた。
ああ。すごいと思うなら今すぐ帰ってくれ。
奴は、何か気づいたようにハッとすると、
「ラーワ。生まれつき、柄のような模様を持った、あざ持ってない?」
……こいつ、ストーカーか?
取りあえず頷いとくか。
「やっぱり………。どっどこにあるの?」
「左肘に…。」
んー、この様子じゃ知らないみたいだな。じゃあ何故知っているんだこいつ。
まぁ、見せるか。少し長袖の服をたくし上げたら見えるし。
このあざは、見つけた時、「何かの呪いか?」と、両親がともに大騒ぎした記憶がある。
私も、こんな「設定なかったはず…」と、首をひねっていた。
結局、いろんな呪術師に診てもらって、害はないと言われたので、放って置くことにしたのだが…。
「これと、なんの関係が?」
「うわあ。やっぱり。祝福の乙女だ。」
「祝福の乙女。」
「うん。祝福の乙女っていうのは、その名の通り、この世界に祝福されている存在。神の使徒のような存在でもある。この世界を保たせる存在でもあるんだよ。」
「………じゃあ、なんで父様は知らなかったのですか?父様、公爵様ですよ?」
「うん。このことは、王と、王太子しか知らないことだから。」
「………そうなのですね。では、貴方が王太子だと受け取ってもよろしいでしょうか。」
私の父は、王弟だが、王と王太子しか知らないのならば、父は知らないこととなる。
というかやはりこいつが王太子……。
「ああ。やっぱり頭いいね。あらためて自己紹介するよ。僕は、サルベーヌ・シエル・アイファルト。この国の、王太子だよ。このこと、父上に、報告するから。それに、僕、君のこと、好きになっちゃったみたいだし。絶対婚約者になると思うよ。じゃ、またね!」
奴は私の喉に、キスを落とすと、ふわりと笑って去っていった。
え、なにあのマセ餓鬼。
「てか、こんな設定なかったよな。無効にしてほしいな。困るし。
リセット。」
………その瞬間、世界が、回った。
〈その願い、叶えましょう〉
実は幾度も聞いたことのあるその声は、酷く、無機質に聞こえた。
***
「………。」
目の前がクリアになって、何も見えない。
綺麗にまっさらで、何度瞬きをしても同じ。
すると、何かに吸収されるかのように、体が強く引き込まれるような感覚がした。
「おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
え?
あの日のように、周囲で赤子の声が響いた。
その発生源は………また、私だった。
***
父たちが、あの日のように私に『ローズ』と言う名前をつけて、去っていく。
あの日と全く同じ光景。
まるで、事が繰り返されているかのような如く。
(何故こんな事になってるの?意味がわからない。どうして?)
不安だけが私を責める。
それから、緩やかに時が流れて。
全てが同じ。
全てが変わらない。
まるで、そう設定されているかのように。
「なに。これ。」
苦しい。
全てが同じ。牢獄のようで。
囚われてる、みたいで。
ここが、ゲームの世界で、私が、プレイヤーなのだとしたら。
本当に、私はヒロインになっていて、攻略できて、この世界が全て作り物で、創作物で。
なーんて考えると思ったら、大間違いだ!
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