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雨が迎えてくれるとき
私の終わりを
よく見ておきなさい
やがて来るときのために
視界がかすんで
おまえの声が遠くなっても
雨が
降っていると
それだけはわかった
うれしいね
何十年ぶりに
私に迎えがきたよ
信じられるかい
人に嫌われ
けれど頼られ
まるで
悪魔か何かのように
恐れられている私でも
むかし
雨が降ると
わらべうたのように
傘をさして
迎えにきてくれる母を待っていた
それから変わることなく
また
私はこの迎えを喜んでいる
あの日の私と
死に際の私の
何が違うというのだろう
ねえ
おまえには
今の私がどう見える
夕夜
そこにいるね
もう声にならないけれど
この最後の呪文を
おまえに託そう
時は風
時は雨
人は人
雨に濡れたなら風に乾かされ
日に焼かれたなら月に癒され
生き続けたなら死ぬだけのこと
守られた凪の
時は終わった
かつておまえの父母が
嵐に身を投げたように
次はおまえたちの時だ
だけどまだ
雨の迎えの力を借りて
もう少しだけ猶予を残そう
泣いて、考えて、強くなれ。
うれしいね
お母さん
私は最後まで
好きな私でいられたよ
凪守 魅津子