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かなちゃんが泣いた
かなちゃんが泣いた所を
私は初めて見た
寒い朝で
雨が降っていて
私がいつもするように
かなちゃんの家を訪ねたとき
すでにかなちゃんは泣いていた
だから私も泣いた
私たちは二人とも
泣きながら歩いて
泣きながら話して
泣きながら慰めあって
泣きながら学校をさぼった
やがて
かなちゃんは泣きやんで
ごめん
と言った
かなちゃんは何も悪くないのに
すごくすごく
申し訳なさそうにしていたから
私はこめかみに
キスをしてと言った
やさしい時が過ぎて
私たちは笑いあった
そして私は
悲しかったけれど嬉しかったから
悲しかったけれど嬉しかったと言った
かなちゃんが泣いた所を
私は初めて見た
その日はいつまでも
雨が降っていた
繭




