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新生活は聖職系

 予想してた。そういう探りが入ることくらい。


 俺はコクリと首を縦に振って、ナビに合図した。


 ナビが赤い光を額から放って、所持品をさらけ出す。


「ふむ……狼の牙に蜂の針。それに下位レベルの機械人形の欠片ですか」


 こうなることも考えて、弱い魔物から得られるゴミだけを入れておいたのだ。


 金目の物は街の手前の森に目印をつけて埋めてある。腐敗しない錬金素材になるエレメンタルの結晶体だ。錬金術ギルドに持ち込まなくても、目抜き通りの市場でさばけば百万メイズにはなる。


 ゆっくり立ち上がると持ち物を精査せず、司祭は俺に告げる。


「そういえば武器の類いを持っていませんね」


「逃げる時に落としちゃったのかも……あはは、僕っておっちょこちょいだから」


「やはり貴方は誰かの連れだったのかもしれません。もし、貴方の保護者が無事であれば……きっと無事です。祈りましょう。そうですね……提案なのですが、教会で働いてみませんか?」


「え? こ、ここに置いてくれるんですか司祭様?」


「ええ。仕事は色々とありますからね。もちろん、難しい事や恐ろしい事はありません。聖堂の掃除や庭園の手入れといった、簡単な仕事から始めてもらいます。少ないですが給金も出ますし、衣食住には困りませんよ」


 ここまで思い通りになると変な笑いがこみ上げそうだ。


「けど、僕……いいんですか? 司祭様にご迷惑をかけちゃいそうで……」


「貴方さえよければ、いつまででも居てくれてかまいません」


 俺はちょこんとお辞儀をした。


「本当に、本当にありがとうございます。僕、お掃除でも庭のお手入れでも、なんでもがんばります」


 顔を上げると、司祭は一層穏やかな顔つきで俺に告げた。


いだ海のような穏やかすぎる日々を退屈に感じる者もいますが、私はこの平穏こそ宝だと思うのです。いつかきっと記憶も戻り、貴方を迎えにやってくる人も現れますよ。それまでは、この教会が貴方の家となるでしょう」


 俺は心から安堵の息をつく。


 司祭は告げた。


「これらの品は教会への喜捨物として浄財させていただきますが、よろしいですね」


「は、はい! 構いません」


 そんなゴミならいくらでもどうぞっと。


 司祭はペンダントの紅玉に俺の収集物をしまい込んだ。


「では共に祈りましょう」


 司祭が十字を切る……が、俺は神に祈ったことがない。棒立ちでいると、司祭は「もしや」と小さく呟いた。


「あの、司祭様? 僕、なにかおかしな事しちゃいましたか?」


「いいえ。これも記憶喪失だからなのでしょうね。祈り方もわからないだなんて……」


「ごめんなさい……僕、教会にはいられないですか?」


「素直に謝ることができるのは素晴らしいことです。そうですね……これを機会と思って神学の初歩を学ぶのは良いかもしれません」


「お勉強ですか? 僕にお勉強を教えてくれるんですか司祭様?」


「私には司祭としての勤めがありますから……そうだ、ちょうど良い人材がいました」


 司祭が名を呼ぶと、大聖堂を支える支柱の陰から銀髪の少女が姿を現した。


 頭からすっぽりとフードをかぶり、ゆったりとしたローブに身を包んだ天使族だ。


 細い銀色の縁の眼鏡をしている。


 歪みの無いレンズ越しに、赤い瞳がじっと俺の顔を見据えた。


 背中の翼は白い。が、間違い無い。


 彼女だ――


 こうも早く再会できるなんて、俺は嬉しいぞ。


「シスターヘレン。貴方が彼の教師をしてあげてください」


「……理解不能」


「いいですかシスターヘレン。誰かに教えるということは、自身も学び直すということなのです。貴方のためにも彼を教育してあげてください。これは命令です」


「……命令は絶対」


 ヘレンはコクリとうなずいた。


 命令は絶対ねぇ。今ので誰の指示か証拠は無いが九分九厘、疑惑が確信に変わったぜ。


 司祭は俺に訊く。


「そういえばまだ名前をうかがっていませんでしたね。私はニコラスティラ。階位は上級天使ヴァーチェです。彼女は私の手伝いをしてくれているシスターのヘレン。階位は中級天使アークとなります」


「ぼ、僕はゼロです。あの、階位ってなんですか?」


「これから貴方が遭遇するであろう、様々な疑問にはヘレンが答えてくれるでしょう。まずは食堂へお行きなさい」


 司祭――ニコラスティラは俺に優しく告げると職務に戻った。


「……誘導する」


 ヘレンが勝手に歩き出す。その後ろについていくと、俺は独り……口元を緩ませた。


 こいつらは何かを隠している。


 当然、俺みたいなガキがその真相に触れるのは難しい。しばらくは辛抱して天使族について学ぶことにしよう。


 そして、なんとか司祭の信頼を勝ち取るんだ。


 その口から直接訊いてやるよ。それからの事は、その時に考えるとしよう。


 報いを受けるべきかどうか、神に代わってこの俺が裁いてやる。


名前:ゼロ

種族:下級天使エンジェリオ

レベル:39

力:G(0)

知性:D(64)

信仰心:D+(65)

敏捷性:G(0)

魅力:G(0)

運:G(0)


白魔法:初級回復魔法ヒーリング 小さな傷を癒やし少しだけ体力を回復する。


――隠しステータス――


特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力。


種族特典:雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される。

    :エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し。


学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる。


黒魔法:初級炎撃魔法ファイアボルト 初級氷撃魔法アイスボルト 初級雷撃魔法サンダーボルト

   中級炎撃魔法ファイアストーム 中級氷撃魔法アイスストーム 中級雷撃魔法サンダーストーム

   上級炎撃魔法ファイアノヴァ 上級氷撃魔法アイスクリスタ 上級雷撃魔法サンダーフレア


   脱力魔法ディスパワン 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める

   鈍重魔法ディスアグレ 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす

   魔法障壁マジルシド 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾

   呪封魔法ディスペルド 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術


????:左右両手で別の魔法を繰り出す能力

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