表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/163

超級存在



 その時――




 黒い羽がゆらり、ゆらりと空から風に舞う木の葉のように落ちた。


 見上げると、先ほどのゴーレムの攻撃で角を削り取られた巨大建築物の上に、影がある。


 背中に翼を広げた天使族の少女だ。


 長い銀髪をしていた。


 全身を喪服のような黒いドレスに包んでいる。その手には、純白の槍。


「黒い……翼?」


 シルフィもぼんやりと、その光景を見ながら呟く。


 超巨大ゴーレムが四肢を地面に食い込ませ、体勢を整え終えた所で――




 ビュンッ!




 と、黒い翼の少女の姿が、矢のように超巨大ゴーレムへと宙を駆けた。


「……殲滅行動開始」


 凜とした声は銀髪の少女のものだ。


 天使族らしく抑揚が無い。


 俺とシルフィに注がれていた赤い光が、混乱したように錯綜した。


 あちこちに分散したかと思うと、黒翼の少女に標的を変え集まる。


 青白い火線が彼女めがけて走った。だが、宙を舞う。まるで鳥のように翼を羽ばたかせ、次々と撃ち出される殺意の波動をかわし続ける。


 充分に超巨大ゴーレムとの距離を詰めると、少女は白い槍を投げ放った。


 反応してゴーレムは投射された槍を阻もうと魔法障壁を展開するが、物理的な攻撃は障壁をすり抜けゴーレムに突き刺さる。


「あんな攻撃じゃ通じないッスよ」


 表面の装甲に刺さっただけだ。だが、黒翼の少女はそれで良いと言わんばかりに、激しい攻撃を避けきると別の高い建物の上に着地した。


 そして――呟く。




「……起動、超級雷撃魔法インドラ


 雷の嵐が彼女の突き刺した白い槍めがけ、数百数千と落ちる。


 その衝撃は空気を切り裂き、衝撃の余波が俺とシルフィの身体を吹き飛ばした。


 そうか……あの槍は魔法をゴーレムの内部に直接撃ち込むための……。


 シルフィの身体を抱いたまま、意識はそこでフッと途切れた。




 目覚めると、そこは廃虚の建物内だった。


「あっ! 気づいたんスね」


 頬を土埃で汚したまま、シルフィが上から顔をのぞき込むようにして、泣きながら笑う。


 どうやら今回は死ななかったらしい。


 倒れた身体を起こそうとすると、違和感に気づいた。


 右腕が治っている。超回復力のおかげか? いや、治っているどころか痛みも残っていない。


 左腕も同様だ。この感触は……ガーネットにかけてもらった回復魔法と同じだ。


「なあシルフィ。お前、回復魔法を使ったのか?」


「つ、使えるわけ無いッスよ! ぼくも……回復魔法で治療してもらったみたいッス。手足のぼろっぼろな感じが、まるで新品に取り替えたみたいに快調だし」


 助けてもらったようだ。名前も知らない天使族の少女に。


 黒い翼の彼女はいったい……。


「あの天使族はシルフィの知り合いか?」


 ショートボブの金髪を左右に揺らしてエルフの少女は声を荒げた。


「知らないッス! というか信じられないッス! 天使族が黒魔法を使ったんスよ!」


「みたいだな」


「なんでそんなに平然としてられるんスか。これじゃあエルフの立場が無いッス。しかも見たことも無い強力な雷撃魔法だったし、相手の魔法障壁を無視して炸裂したんスよ」


 言われてハッと気づいた。


「あのデカブツはどうなった?」


「ぼくも気を失っちゃって……けど、きっとあの黒い翼の天使族が倒したんスよね。ハァ……自信喪失ッスよ。エルフが白魔法使うくらいあり得ないことッス」


 俺は周囲を探すと、部屋の隅で丸くなっていたナビがこちらにやってきた。


「超巨大ゴーレムはヘカトンケイル。天使族が倒していったから、しばらくは安全だよ。二人を介抱してここに運んだのも彼女だね」


 俺はシルフィに気取られない程度に、小さくうなずいた。


「ひとまず戻ろう。依頼主には悪いが、今回は命があっただけ良しって感じだな」


 死にかけたシルフィからも流石に反対意見は出なかった。


「ところであの……ゼロさん」


 じっと俺を見つめて彼女は頬を赤くする。


「ぼくのこと……き、嫌いになっちゃったッスか?」


「どうしてそんなこと聞くんだ」


「だ、だって……死ぬかもしれない時に……一方的にぼくの気持ちだけ押しつけて……実は今、チョー恥ずかしいんスよ。死にたいくらいに。だけど……嬉しかったッス。ギュッと抱きしめてくれて……」


 吐息が熱っぽくなり、潤んだ瞳がさらに湿り気を帯びた。


 背伸びをして顔を近づけると、彼女は言う。


「あの……だから……抱きしめたあとの続きを……してほしいッス。もしゼロさんさえ良ければ……ぼ、ぼくの……大事な初めてを……奪ってほしいッス」


 最初に出会った時には殺されて、二度目の出会いではナンパだと茶化された。


「本当にいいのか?」


「一度死んだようなものッス。冒険者はいつ死ぬかもわからないって、身をもってわかったら……好きな人に好きと言って、自分に素直になって……やり残すことがないようにしたいって……エルフのくせにせっかちって思うかもしれないけど、ゼロさんといつかお別れするかもしれないと思ったら……我慢できなくなったッス」


 俺の胸に顔を埋めて「は、恥ずかしいこと言ったッス! 言ってやったッス!」と、彼女は鼻息も荒く呟く。


 まいったな。


 そこまで言わせてしまって、彼女を拒むことはできなかった。


「ぼく、男の子みたいで女の子らしい魅力はないかもしれないッスけど……」


「シルフィは可愛いよ。お前自身が思っているよりも魅力的だ」


「うへへぇ……嘘でも嬉しいッスよ」


 チュッ……と、彼女の柔らかい唇が俺の頬に触れた。


「くすぐったいな」


「なれるまで、いーっぱいしてあげるッス。ゼロさん」


 そのまま彼女は俺に体重を預けた。


 そんなシルフィを俺は受け止め、受け入れる。


「ぼくを……ゼロさんのものにしてほしいッス」


 今度は頬ではなく、唇と唇を重ねた。


 薄暗い廃虚の中で指と指を絡め合い、俺たちは一つになった。


名前:ゼロ

種族:エルダーエルフ

レベル:71

力:G(0)

知性:A(99)

信仰心:G(0)

敏捷性:A(99)

魅力:D(52)

運:G(0)


黒魔法:初級炎撃魔法ファイアボルト 初級氷撃魔法アイスボルト 初級雷撃魔法サンダーボルト

   中級炎撃魔法ファイアストーム 中級氷撃魔法アイスストーム 中級雷撃魔法サンダーストーム

   上級炎撃魔法ファイアノヴァ 上級氷撃魔法アイスクリスタ 上級雷撃魔法サンダーフレア


   脱力魔法ディスパワン 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める

   鈍重魔法ディスアグレ 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす

   魔法障壁マジルシド 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾

   呪封魔法ディスペルド 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術



種族固有能力:エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し


学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる


恋人:シルフィ

仲間:ガーネット


――隠しステータス――


特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力


種族特典:雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される。


????: 左右両手で別の魔法を繰り出す能力

あー 雷火

これ以上ダメダメ!! エルフがエロフですから!

カットです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ