聖剣か星剣か
かつて勇者の剣を鍛えたドワーフの血を引くガーネットが、この世界に再び剣を甦らせたのは、仕事を始めてから七日目のことだった。
名工の手で磨き上げられた二振りの一方は、聖白金による純白の意匠が施されている。
まるで光を体現したかのような、眩しくすら思えるその名は――聖剣。
そして、黒を基調とした隕石鋼による意匠が施された剣は、光と対をなす影のようだ。黒き夜空に煌めく刀身を持つ――星剣。
双子の兄弟ともいえる剣は、意匠の素材の比重が違うことを感じさせなかった。
添えられた鞘の色も純白と漆黒で対照的だ。
時刻は黄昏時。昼と夜の境目に生まれた聖剣と星剣は、工房の作業台の上に静かにたたずんでいる。
目の下にクマをつくって、髪の毛をボサボサにしながらガーネットが俺とナビに告げた。
「アタイの生涯最高の傑作だよ。今日まで培ってきた技術の全部を叩き込んでやったさね。おかげでもうフラフラなんだ。本当は完成記念に飲み行きたいとこだけど、先に仮眠させてもらうよ」
「ありがとうガーネット」
俺が手を差し出すと、彼女はそっと握り返した。いつもならギュッと力を込めてくるのに、それすらできないほど憔悴している。
ナビが「回復魔法かけようか?」とガーネットに言うが、この手の披露と消耗は、魔法でどうこうできるものではない。
ガーネットが消費したのは、恐らく魂の力だ。職人の魂を癒やす魔法は、恐らく充分な休息しかないのだろう。
ガーネットはそっと手を離す。
「なんでか、アンタとはずっとずーっと一緒に仕事をしてたような気がするよゼロ。良い助手になれるんじゃないかい?」
「世界一の名工のお褒めにあずかり光栄だな」
「お世辞なんかじゃないって。お代はアタイの満足とヘパイオの種火で充分さね。どっちの剣を誰が使うかは、二人に任せるとして……ふあーぁ……剣だけじゃ困るだろ? アタイも一緒に行くから。ちょうど明日は新月明けだし、海底鉱床で素材集めして、鎧や盾なんかも揃えて……アンタら二人と一緒なら、魔物も怖くないしね。そいじゃ……お休みぃ」
ねむそうに目をこすりながら、ガーネットは工房から出る。
ナビが手を振った。
「お休みガーネット。また明日ね!」
ガーネットは「ほやふひぃ」と、あくび混じりに返しながら、寝室のある二階へと上がっていった。
さてと――
「ねえゼロ! 次は海底鉱床ってところを冒険できるみたいだね! ガーネットはボクらの仲間になってくれるのかな?」
瞳をキラキラさせるナビに俺は首を左右に振った。
「いや、今夜……発つ」
「え? もうどこかへ出発するの」
偶然にしては出来すぎているが……今夜は新月だった。
もしこの期を逃せば、あと一ヶ月は“真理に通じる門”に挑戦できない。
その間に、ガーネットが仲間になってしまうのは避けたかった。
俺はナビに告げる。
「海底鉱床ってのがどういう場所か、俺たちだけで予習しよう。最強の剣もあるし、無茶しない程度に探索だ」
「そうだね! ボク、わくわくしてきたよ。ところでゼロはどっちの剣を使うんだい?」
ガーネットが言うには、装飾や意匠が違うだけで性能は同等だ。
特に意識していなかったが、自然と右手が純白の聖剣を手にしていた。
「じゃあボクはこっちの黒い剣にするね。ふっふっふ。我が暗黒剣の餌食となれぇ!」
ナビは星剣を手にしてノリノリで剣を構える。なにやら変な病気が発症したようだ。
ナビほどではないが、俺も手に吸い付くようにしっくりと馴染む聖剣の手応えに、力が溢れるのを感じた。
名前:ゼロ
種族:獣人族 シヴァ種 武神
レベル:99
力:A(99)
知性:A(98)
信仰心:A(98)
敏捷性:A(99)
魅力:G(1)
運:G(1)
白魔法:中級回復魔法 中程度の傷を癒やし、体力を回復する
中級治癒魔法 猛毒などの強力な状態異常を治療する
操眠魔法 対象を眠らせる&眠っている対象を目覚めさせる
精神浄化魔法 混乱状態やパニックになった精神を鎮める
火力支援 腕力を強化して武器による攻撃力を上げる
肉体硬化 肉体を硬化させ防御力を上げる
氷炎防壁 炎と氷から身を守る
即死魔法 対象の命の灯火を消し去る
蘇生魔法 失われた命を取り戻す奇跡の力
黒魔法:初級炎撃魔法 初級氷撃魔法 初級雷撃魔法
中級炎撃魔法 中級氷撃魔法 中級雷撃魔法
上級炎撃魔法 上級氷撃魔法 上級雷撃魔法
超級雷撃魔法
脱力魔法 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める
鈍重魔法 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす
魔法障壁 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾
呪封魔法 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術
装備:聖剣
流派:天星流免許皆伝
女傑流格闘術 猫の構え
修行:武芸百般 ありとあらゆる武技に精通する
:天星流免許皆伝 最終奥義取得――天流星舞 森羅万象救いし勇者の剣技
学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる。
師匠:チューラ(天星流)
弟弟子:ナビ(天星流)
――隠しステータス――
特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力
:無限色彩 左右両手で別の魔法を繰り出す能力 白魔法と黒魔法の純粋な力を合成可能
種族特典:エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し
:雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される




