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もう一度、ナビとは道連れ

 ナビの装備は極めて貧弱で、布を巻き付けただけのような胸と腰布だけだった。


 当然、武器も無し。持たざる者っぷりで言えば、オークだった俺に似てるな。


「どうしようゼロ。はぐれ銀狼がボクを見て牙を剥いてるよ?」


 蒼穹の森に入ってすぐのことだ。


 俺を抱っこしたまま、ナビは困り顔なのに、声はどことなく嬉しそうに言った。


「とりあえずお前は下がってろ。ここは俺がなんとか……」


「あっ。わかったよゼロ。やっつければいいんだね」


 そっと俺を地面に下ろすと、ナビは拳を握って構える。武器も無しで挑むなんて無謀すぎるぞ。


「待てよナビ! お前、戦ったことあるのか?」


 どうせ戦うならコード66の時に放った炎を使え……なんて言えば、その炎が俺を焼き尽くすに違いない。


 ナビはぐるぐると腕を回すようにした。


「いっくぞー。ボクのパンチを受けてみうああああああああああ」


 俊敏な足取りで、はぐれ銀狼がナビに飛びかかった。


 言わんこっちゃない。いきなり組み敷かれてナビは手足をジタバタさせるばかりだ。


「対峙してみると本当に動きが早いんだね」


 何をのんきな。俺は出来るかどうかわからないまま、ナビに魔法を使う。


肉体硬化ストスキン!」


 ナビの柔らかそうな喉首に刃物のような牙が突き刺さる寸前で、魔法が発動した。


 全身を硬化させるには俺自身の能力が不足しているため、十中八九、狼が狙ってくる喉笛に防御力を結集させてある。


 魔法の改編アレンジも、この姿でできるようになるなんて、俺もずいぶんと成長したものだ。


 牙が通らず岩でも噛んだような気持ちになったのか、はぐれ銀狼はナビから飛び退き距離を取った。


「ありがとうゼロ。キミは魔法が得意なんだね」


「前を向いて集中しろ。まだ向こうはやる気だぞ」


 ナビはそっとうなずいた。相変わらず構えはめちゃくちゃだ。


 あとで教えてやった方がよさそうだな。


 今はその時間もないので、ナビの勝率が上がるよう援護に徹する。


火力支援パワゲインッ!」


「すごいやゼロ。力が溢れてくるよ」


 さらに、はぐれ銀狼には脱力魔法ディスパワン鈍重魔法ディスアグレのオマケ付きだ。


 自慢のスピードを封じられ、攻撃力はもちろん防御力も下げられた状態だというのに、はぐれ銀狼はナビに向かっていった。


「頭を思いっきりぶん殴ってやれ!」


「うん、やってみるね」


 今度は腕をぐるぐる回すような大きな動作はせずに、ナビは右手で正拳突きもどきを放った。


 鈍重魔法も手伝ってか、見事に狼の眉間を捉える。飛びかかった勢いはそのまま魔物自身に跳ね返るカウンターパンチとなった。




 キャウンキャウンギャウンッ!




 甲高い声を上げて、はぐれ銀狼は赤い粒子に変換される。


「やったね。ボクってもしかして強いかも」


 その場で万歳しながら青い髪のケモノ少女はピョンピョン跳びはねた。


 胸がぷるんぷるんと上下する。


 布を巻き付けただけのような格好なので、はみ出してしまわないか心配になる。


「あ、ああ、そうだな」


「この調子でばんばん魔物をやっつけて、強くなれば“真理に通じる扉”に行けるかもしれないね」


 そいつはどうだろう……と、生まれたての新米冒険者に言うのは意地が悪いかもしれない。


 しかし、ナビのやつ、ずいぶんと嬉しそうだな。


 行く当てはあるがたどるべき未来の当てがない今は、ナビに付き合ってみるとしよう。




 はぐれ銀狼をもう一体倒したところで、ナビはステータストーンを手に入れた。


「やったね。はい、今度はゼロの番だよ」


「俺の?」


「そうさ。キミがステータストーンを振るのさ」


 このまま謎の軟体生物でいてもいいのだが、ナビに抱えられて移動するのはもどかしい。


 それに、十階層程度なら魔法の支援も通じるが、魔物が強くなればその限りじゃない。


「わかった。じゃあ振らせてもらおうか」


 これで果たして姿が変わるのだろうか……といったような疑問はやってみれば解決だ。


 赤い六面体を放り投げると、コロコロ地面を転がった。


「すごいやゼロ! 6だよ!」


「そうだな」


 オークかエルフか天使族か、もしくはそれ以外の何かになるかもしれないが、さてどうしたものか。


 力重視でオークになる。そこに恐らく、信仰心を加えればドワーフだ。


 知性と敏捷を高めるならエルフ。


 信仰心主体で天使族である。


 極振りについてはオークの時に学んだが、後半の伸びしろが低かった印象だ。


 最果ての街まで乗り切れるなら、一極集中させない方がいい。


 なにより今回は、ナビが戦力として換算できるわけだし。


 ナビはわくわくそわそわしながら、尻尾をピーンと立てて俺をのぞき込む。


「じゃあ、こうしてみるか」


 今回の割り振り方で、自分がどう変わるのかも、やってみればわかることだ。


 身体は光に包まれ四肢が伸び頭と胴体の区別がついて、俺はゲル状生物からようやく脱した。


「キミはどうやら獣人族みたいだね」


 青い猫の獣人族が俺を見上げて告げる。


 なるほど……奇妙な感覚だ。尻のあたりでフサフサとしたものが揺れている。


 耳も獣毛がふんわりと覆っており、どの動物かはわからないが獣人族というのは自分の姿を見るまでもなく、理解できた。


 ナビは俺の腕をとって軽く引く。


「この先に湖があるから、そこで自分の姿を確認するといいよ」


「あ、ああ。そうすることにしよう」



 幻影湖の水面を鏡代わりにして、俺は自分の姿をまじまじと見る。


 年の頃なら17~18か。二十代中盤に見えるエルフより若く、十代になりたてな天使族よりは大人だ。


 黒髪黒目。ケモノの種類でいえば犬系らしい。


 体格もエルフよりはしっかりとしているが、オークほどの筋力バカでもない。獣人族らしいしなやかな肉体とも言えた。


 中庸。バランス。そんな印象だ。


 何か特化した才能は無いが、どの項目においても万遍なくという意味では伸びしろは高いかもしれない。




名前:ゼロ

種族:獣人族 シヴァ種

レベル:1

力:G(1)

知性:G(1)

信仰心:G(1)

敏捷性:G(1)

魅力:G(1)

運:G(1)


白魔法:中級回復魔法ハイヒーリング 中程度の傷を癒やし、体力を回復する

中級治癒魔法ハイキュア 猛毒などの強力な状態異常を治療する

   操眠魔法スリプコン 対象を眠らせる&眠っている対象を目覚めさせる

   精神浄化魔法マインドクリア 混乱状態やパニックになった精神を鎮める

   火力支援パワゲイン 腕力を強化して武器による攻撃力を上げる

   肉体硬化ストスキン 肉体を硬化させ防御力を上げる

   氷炎防壁サマルシド 炎と氷から身を守る

   即死魔法ブラックウインド 対象の命の灯火を消し去る

   蘇生魔法リヴァイブ 失われた命を取り戻す奇跡の力


黒魔法:初級炎撃魔法ファイアボルト 初級氷撃魔法アイスボルト 初級雷撃魔法サンダーボルト

   中級炎撃魔法ファイアストーム 中級氷撃魔法アイスストーム 中級雷撃魔法サンダーストーム

   上級炎撃魔法ファイアノヴァ 上級氷撃魔法アイスクリスタ 上級雷撃魔法サンダーフレア

   超級雷撃魔法インドラ


   脱力魔法ディスパワン 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める

   鈍重魔法ディスアグレ 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす

   魔法障壁マジルシド 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾

   呪封魔法ディスペルド 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術


流派:女傑クインドナ流格闘術 猫の構え

学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる。


――隠しステータス――


特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力。

    :無限色彩アンリミテッド:左右両手で別の魔法を繰り出す能力 白魔法と黒魔法の純粋な力を合成可能


種族特典:エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し。

    :雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される。

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