声<ヴォイス>
「まあアレだよ。今はちょっと調子が悪いだけだって。美味い酒と飯食ってさ、デカイ風呂にノビノビ浸かってぐっすり眠れば元気になるから。あ! おっぱい揉むかい? 照れなくてもいいって。アンタとアタイの仲じゃないさ」
闇の中で誰かの声が聞こえた。
「ぼ、ぼくは諦めるな……なんて言えないッス。本当は、諦めてほしくないけど。無理は身体にも心にも良くないから。辛い時は辛いって口に出して言ってもいいんスよ。誰だって独りじゃ弱いんッスからね」
今度は違う声だ。懐かしい、温かさを覚えた。
「……貴方が手を差し出してくれる限り、私はその手を取り、応じ、何度でも何十回でも何百何千何万回でも、共に戦うと誓う者です」
透き通った別の声には勇ましさが感じられた。
「泣くことさえも忘れてしまうほど傷ついているのね。大丈夫。あたしがぎゅーっとハグしてあげるわ。たとえあなたがどんなに姿になっても、あたしはあなたの母なのだから」
どこまで優しい包み込むような声が、俺の胸に染み渡った。
結局、生きることに意味なんて無いのかもしれない。
死なないからそこにいて、たまたま偶然、幸運にも終わらないから“生”が続いている。
俺の悪あがきが誰かを傷つけて、苦しめる。
それでも――
「あきらめるかって? 答えはNOだ」
深い絶望の谷間から、結局俺は誰かの声に引き上げられた。
絶望的な数字は重く心にのしかかったままだが、もう少しだけあがいてみよう。
洞穴の入り口にナビが姿を現すと、俺は自分から崩れたグズグズの身体を這わせて近づいていった。
青い小動物は、赤い目をまん丸くさせる。
「もしかして、ボクのことが見えてるのかい?」
「ああ、見える」
「そうなんだね。ボクはキミと出逢うために生まれてきたのかもしれないよ。ボクはナビ。キミを導く者さ」
「俺はゼロだ」
名乗るだけの自己紹介で充分だった。
いつものやりとりをして、ナビは額の紅玉からステータストーンを取り出す。
「さあ、ボクのステータストーンだけど、キミにあげるよ。振ってみて」
そうだ。ずっと心のどこかで気になっていたんだが、そういうものなのだと繰り返すうちに思い込んでいた。
「俺のステータストーンはどこにあるんだ?」
ナビは不思議そうに首を傾げた。
「さあ、ボクにはわからないや」
「大切なものなんじゃないか? なんで俺にくれるんだ?」
「それはキミが選ばれし者だからだよゼロ」
今回の行動は、まったくの的外れかもしれない。
だが、試してみよう。以前にも一度、あったのだ。
ナビのステータストーンをナビが使った時にどうなるのか?
「なあナビ。そのステータストーンはお前のものなんだから、お前が振ってくれ」
「え? いいのかい?」
「構わない。俺に一度くれるといったんだから、そのステータストーンをどうしようと、俺の自由だろ」
ナビは耳をピンッと立てた。
「そうだね。キミの言う通りだよゼロ。それじゃあボクが振ってみるね」
前足で赤いダイスに軽く触れると、コロコロとステータストーンは転がった。
出た目は……6だ。
「じゃあボク自身の力に割り振るよ」
「あ、ああ……」
この可能性は想定していたものの、実際に可能だとは……驚いたな。
だが、驚きはそれだけにとどまらなかった。
「力が溢れてくるね」
ナビは後ろ足でひょいっと立ち上がると、その四肢や長い胴体が光に包まれ……ぐんぐんと大きくなっていく。
unknownの俺が見上げるほどの姿は――まるで獣人族だ。
青い髪に尻尾と耳の生えた少女へとナビは姿を変えた。
そっと、軽く開いた両手をみると、ナビは俺のぶよぶよな身体を抱き上げる。
「すごいや。ボク、大きくなったみたいだよ」
「え、あっ……ああ」
「それじゃあ冒険に出発しよう」
ナビは俺を抱きかかえたまま、軽い足取りで洞穴を出ると蒼穹の森の前に立った。
いったい、この先どうなるんだ?
名前:ゼロ
種族:unknown
レベル:0
力:????
知性:????
信仰心:????
敏捷性:????
魅力:????
運:????
――隠しステータス――
白魔法:中級回復魔法 中程度の傷を癒やし、体力を回復する
中級治癒魔法 猛毒などの強力な状態異常を治療する
操眠魔法 対象を眠らせる&眠っている対象を目覚めさせる
精神浄化魔法 混乱状態やパニックになった精神を鎮める
火力支援 腕力を強化して武器による攻撃力を上げる
肉体硬化 肉体を硬化させ防御力を上げる
氷炎防壁 炎と氷から身を守る
即死魔法 対象の命の灯火を消し去る
蘇生魔法 失われた命を取り戻す奇跡の力
黒魔法:初級炎撃魔法 初級氷撃魔法 初級雷撃魔法
中級炎撃魔法 中級氷撃魔法 中級雷撃魔法
上級炎撃魔法 上級氷撃魔法 上級雷撃魔法
超級雷撃魔法
脱力魔法 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める
鈍重魔法 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす
魔法障壁 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾
呪封魔法 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術
流派:女傑流格闘術 猫の構え
学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる。
種族特典:エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し。
:雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される。
特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力。
:無限色彩 左右両手で別の魔法を繰り出す能力 白魔法と黒魔法の純粋な力を合成可能




