表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/163

解放への道

教会を出て俺は常闇街には戻らずに、街を見下ろす丘に向かった。


 十九階層と二十階層を繋ぐ祭壇の付近だ。


 まだ天球は明るい。昼食を摂るには遅いな。ドナの焼くマドレーヌやクッキーが食べたくなった。


 スウッと音も立てずに、黒翼の天使が丘の上に舞い降りる。


 ヘレンだ。ナビが「今日はキスしないのかい?」と首を傾げたが、俺はそれには返答せずに、じっとヘレンの赤い瞳を見据えた。


「というわけで、ドナ暗殺の命令が出たんだが」


 街を離れて二人きり。口振りも素の俺で通すことにした。


「……想定外」


 ヘレンがどんな想定で動いていたのかはわからないが、シルフィへの記憶上書きがそもそも俺にとっては予想外もいいところだ。


 さて、どうしたものか。ヘレンがどこまで俺の記憶を読み取ったのかは、不明なままである。


 ナビは見えているんだろうか。コード66を知っているんだろうか。


 直接訊いてしまうのがもっとも早く、そして危険な確認方法だった。


「俺としては絶対にNOだ。もしヘレンが代わりにやるというのであれば、俺がお前を止める」


「……命令は絶対。ただし、私への命令ではない」


 俺に暗殺指令が下っている間は、ヘレンが手を染めることもなさそうだな。


「……貴方が手間取るようであれば、状況は変化」


 もたもたしていると、業を煮やした司祭が俺ではなくヘレンに暗殺を命じるってことだ。


「……提案。命令の実行を推奨。命令は絶対。拒否すれば教会との対立は不可避」


「実行って……それは無いって言っただろう」


「……補足。即死魔法ブラックウインドと対となる魔法の習得。暗殺命令遂行後の行動は、命令されていない」


 死を与える魔法の対になるって……つまりは蘇生の魔法か?


「ヘレンは蘇生魔法が使えるのか?」


「……条件付きにて肯定」


 言うなり彼女はしゃがみ込むと、今回もあまりに唐突にそのうっすらとだけ紅潮した唇で、俺の口を塞いだ。




 彼女の記憶が流れ込む。


 見覚えこそない場所だが、雰囲気でそこが死毒沼地だというのが理解できた。


 灰色の地面はまるで灰のようで、そこかしこに紫色に濁った湖沼が点在している。


 森の菌類は毒気を吐きだし、不死の魔物が跋扈ばっこする世界だ。


 その最奥に立てられた封印地域の看板の先へと、ヘレンは進む。


 石柱の並ぶ道を行き、台形の遺跡ピラミッドを上がった先で彼女を待ち構えていたのは――


 骸骨だった。玉座に腰掛け冠を戴いた死者の王。錫杖を手にした姿には威厳すら感じられる。


 ヘレンは単身、その王に挑んだ。戦いは天球が三度消えては輝く間続いた。


 死者の王は何度倒しても甦る。そして……。


 錫杖が放つ不気味な光が、ヘレンの力を封印した。この戦いで彼女は力を失ったのだ。


 元来、彼女は中級天使アークなどではなく、司祭よりも上の階位の持ち主だった。


 その力を封じられるまでは。


 寸前のところで司祭がヘレンを助け、死者の王から逃亡に成功。


 そして彼女は司祭に仕えることとなった。




 心臓がバクバクと音をたてている。


 そっとヘレンは俺を解放して離れた。


「今のは……」


「…………」


 無言で天使族の少女は首を左右に振る。


 俺とナビの他は、誰もいないというのにだ。


 ヘレンは明らかに警戒していた。認識の歪みからナビが見えていないようだが、俺の死のいくつかの記憶を彼女は見たのだろう。


 そして、本来知らないはずの情報を俺が知っていると、その“存在”に気づかれた時にどうなるかも、ヘレンは認識しているようだった。


 彼女はそれ以上何も説明しないが、あとは察してほしいと言わんばかりだ。


 死毒沼地の死者の王を倒す。


 これでヘレンの封じられた力が解放されれば、彼女は本来の階位に戻ることができる。


 上級天使以上の存在――超級天使セラフに。


 ドナを即死魔法で暗殺するという命令を、ヘレンが仮に実行したとしても、俺が“力を取り戻した彼女から習得した蘇生魔法”で生き返らせれば問題無い……とは、いささか強引すぎる気もするのだが……。


 ヘレンは軽く握った拳をそっと差し伸べた。


 俺も拳を作って、彼女の拳にコツンとあてる。


 ナビはこのやりとりがさっぱりわからないようで「ああ、今回もキスをしたと思ったら、何をしてるんだい?」と不思議そうに首をかしげっぱなしだった。


 上手く行くかはわからないが、ヘレンが独りで苦戦し叶わなかった相手にどう勝つかということを考えた時に、ふと気づいた。


 もしガーネットとシルフィの協力を得られれば。


 俺自身の成長も、もちろん必要だ。そうなると、炎竜王と氷神には死者王討伐のための踏み台になってもらう必要があるな。


 ドナを守るためにも、次の目標はこれで決まりだ。


名前:ゼロ

種族:中級天使アーク

レベル:55

力:E(33)

知性:C(65)

信仰心:C+(70)

敏捷性:E(33)

魅力:G(0)

運:G(0)


装備:武闘着

   拳闘僧侶バトルモンクの軽鎧 レア度B 防御力77 敏捷性が低下しない

   魔装鉄拳マジカルフィスト レア度B 攻撃力65 防御力12 接触起動で魔法の威力を100%発揮

   

   中級天使のローブ 儀礼用

   銀の十字架 教会の修道士の証


白魔法:中級回復魔法ハイヒーリング 中程度の傷を癒やし、体力を回復する

中級治癒魔法ハイキュア 猛毒などの強力な状態異常を治療する

   操眠魔法スリプコン 対象を眠らせる&眠っている対象を目覚めさせる

   精神浄化魔法マインドクリア 混乱状態やパニックになった精神を鎮める

   火力支援パワゲイン 腕力を強化して武器による攻撃力を上げる

   肉体硬化ストスキン 肉体を硬化させ防御力を上げる

   氷炎防壁サマルシド 炎と氷から身を守る

   即死魔法ブラックウインド 対象の命の灯火を消し去る


黒魔法:初級炎撃魔法ファイアボルト 初級氷撃魔法アイスボルト 初級雷撃魔法サンダーボルト

   中級炎撃魔法ファイアストーム 中級氷撃魔法アイスストーム 中級雷撃魔法サンダーストーム

   上級炎撃魔法ファイアノヴァ 上級氷撃魔法アイスクリスタ 上級雷撃魔法サンダーフレア


   脱力魔法ディスパワン 対象の力を下げ攻撃と物理防御を弱める

   鈍重魔法ディスアグレ 対象の敏捷性を下げ速度や命中率を落とす

   魔法障壁マジルシド 敵意ある魔法による攻撃を防ぐ盾

   呪封魔法ディスペルド 魔法を打ち消し封じる魔法殺しの術


流派:女傑クインドナ流格闘術 猫の構え


お姉ちゃん:シスターヘレン

ママ:クインドナ

親公認嫁候補:ガーネット

      :シルフィ


????:左右両手で別の魔法を繰り出す能力 白魔法と黒魔法でも可能


――隠しステータス――


特殊能力:魂の記憶 力を引き継ぎ積み重ねる選ばれし者の能力。


種族特典:雄々しきオークの超回復力 休憩中の回復力がアップし、通常の毒と麻痺を無効化。猛毒など治療が必要な状態異常も自然回復するようになる。ただし、そのたくましさが災いして、一部の種族の異性から激しく嫌悪される。

    :エルフの目 魔法によって隠されたものを見つけ出す探求の眼差し。


学習成果:黒魔法の最適化 学習進度によって魔法力の効率的な運用が可能となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ