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星の砂漠を征く

 第十二階層は星屑砂漠。白い砂の海がどこまでも広がっていた。


 天井まで真っ白で、太陽と月の代わりをする天球から降り注ぐ日差しは眩しく熱く暑い。


 立っているだけで汗が噴き出した。


 スタート地点となる祭壇はオアシスに隣接していて、無人ながらテントが張られている。


 ここには往来する冒険者が使えるようにと、砂漠の旅を支援する装備類が用意されていた。


 水筒や日よけ帽やマントにザック類もあるため、遠慮せず借りていこう。


 出口となる祭壇近くのオアシスに戻しておけばいいらしい。途中途中のオアシスで手に入るナツメヤシは、食べきれなかった場合にキャンプにおいておくと次の冒険者の助けになるのだとか。


 吊されている干し網からナツメヤシも拝借した。一つ食べてみると、甘くて美味い。オークになってから口にした物の中では一番だ。


 白い砂漠に浮かぶような色合いの青い獣が俺に告げる。


「この星屑砂漠にも強力な魔物はいるけど、うまく避けて通れば遭遇せずに済むよ。ルート案内はボクに任せて」


「そいつはありがたいな。頼むぜナビ」


「ボクはキミを導く者だから当然さ」


 すぐにも出発したそうなナビを俺は呼び止めた。


「ちょっと待ってくれ。さっき食らったダメージもまだ抜けきってないし、このオアシス付近で十二階層の魔物と戦っておきたい。暑い中、どれくらい自分が動けるかも計っておきたいしな。身体を慣らす期間が欲しい」


 くるりと進路を反転させてナビは俺の足下に戻ってきた。


「それもそうだね。とても冷静な判断だと思うよゼロ」


 それに無人テントには厚手のコートやマントのようなものまであった。このクソ暑い砂漠を横断するのには不要な気もするのだが……。


 急ぐ旅でもなし、身体を環境に慣らすため、しばらくスタート地点のオアシス付近を探索することにした。




 砂漠の敵は擬態が得意なものが多い。中で背中が白い砂と同じ色をした爬虫類――砂モドキオオトカゲは、足音も立てずに奇襲してくるのがやっかいだ。


 とはいえ、魔法攻撃さえしてこなければどうということはない。モルゲンシュテルンで思いっきりぶっ叩けば、二発で砂の海に沈めることができる。


 なにぶん遮蔽物が無いため、森や地下通路と違って武器を振り回し放題なのは快適だ。


 砂モドキオオトカゲとは、この階層にいる間、ずっと仲良くできそうだな。


 レベルが上がった。ステータストーンの出目は「4」だ。


 平均「3」とすれば合計値はレベル11で33になる。ここまで一極集中させた力の数値は39と、現状で+6なので、なかなか運もいいんじゃなかろうか。


 運の項目にポイントをつぎ込む必要性は無いな。




名前:ゼロ

種族:オーク

レベル:11

力:E+(39)

知性:G(0)

信仰心:G(0)

敏捷性:G(0)

魅力:G(0)

運:G(0)

装備:ゴルドラモルゲンシュテルン レア度B 攻撃力80

スキル:ウォークライ 持続三十秒 再使用まで五分

    力溜め 相手の行動が一度終わるまで力を溜める 持続十秒 再使用まで三十秒






 日が落ち天球が月の輝きをたたえると、途端に砂漠の気温は下がっていった。


 夜の砂漠は寒くなると、どこかで聞いた話を思い出す。なるほどコートやマントが必要になるわけだ。


 と、記憶がぼやけているのにこういったことは覚えているなんて、不思議なものだ。


 ナビは寒暖差など物ともしない。そして俺はといえば、暑い太陽の下よりも寒いくらいがちょうど良かった。オークの皮下脂肪様々である。


 なので夜の行軍を提案したのは俺からだ。


 似たような風景がずっと続く砂漠で迷えば命取り。だが、昼だろうと夜だろうと導く者には関係ないらしい。ナビは夜に進むことに賛成してくれた。


 星空が恋しい。砂漠に浮かぶのは天球の淡い光だけだ。


 テントに用意されていたザックの中から一番大きい物を選び、水や食料や砂漠越えに必要な装備品を詰め込んだ。ナビ曰く「エルフの細腕じゃ持ち上げることもできないね」とのことだ。


「エルフ……エルフがいるのか?」


「最果ての街には様々な種族が集まっているからね」


 ヒゲを自慢げに揺らしつつナビは解説を続ける。


 エルフとは耳の長い森に生きる種族で、長寿なうえに高い知性を誇るのだとか。黒魔法に長じており、力こそ弱いが敏捷性にも富むため、弓の名手も多いという。


 まるでオークとは真逆の生き物だ。


「魔法と弓が得意なのか。安全な遠距離から攻撃できるなんてうらやましいな」


「その分、撃たれ弱いし近接戦闘は苦手だけどね。キミの腕力や頑強さは、きっとエルフにはうらやましいはずだよ」


 お互いに弱点を補い合うことができれば、心強い仲間になるかもしれない。


 ザックを背負って俺はナビに訊ねた。


「そういえば街で冒険の仲間を集うことはできるのか?」


「そのために街があると言っても過言ではないね」


 なるほどそいつは楽しみだ。ナビとの二人旅も悪くはないが、力に特化した俺の強みも弱点も、仲間とともにいれば長所は伸ばして短所を帳消し……なんて、できるかもしれない。


 と、思って気づいた。


「もしかして仲間の雇用条件とかあったりするのか?」


「うーん、ボクも詳しいところまではわからないけど、街で知り合うケースやギルドで登録するのが一般的みたいだね。ただ種族によっては絶対に組まないどころか、敵対するのが普通なんてこともあるみたいだよ。もちろん絶対ではないし個人差もあるだろうけど……」


 そこで魅力の項目が効いてくるってわけだな。


 耳と尻尾をぺたんとさせてナビは続ける。


「それと、なにかに特化している方が仲間にしてもらいやすいみたいだね。中途半端なステータスだと採用されないなんてこともあるみたい」


「そ、そういうことは早く言ってくれよ! ハァ……けどまぁ良かった」


 どうしたの? と言わんばかりに首を傾げるナビだが、ともあれ取り返しのつかないことにならなくてセーフである。


 途中で信仰心にポイントを振るか悩んだけど、それは先に進むのに“どうしようもなくなる”まで我慢しよう。


 幸い、ここまで地下道ルートのような抜け道は用意されていたことだし。階層越えを阻む強い魔物や警戒網も、眠っている時間を狙ったりパターンを研究すれば突破できたわけだし……この先ずっと同じとは限らないが。


 なんにせよ、これからも俺は力一筋だ。

3が出る確率も4が出る確率も同じだから、間を取って3.5が期待値なのかなわからん自信ないアルよ(ばかまっしぐら)

3で見積もっているゼロは前向きなのかもしれない……

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