『光と風』
学校が終わるとすぐビーチに飛び出して
観光客に木彫りやアクセサリーを売りにくる
子どもたち
「ヤスイヨ」
「ゴセンルピア」
丸覚えの日本語を口々に繰り返す
バリ人は 愛想笑いをしない
物を売る小さな子どもたちも
妙に威厳みたいなものがあって
胸を張って まっすぐに
こちらを見つめる。
光 満ちて流れる水に
葉影が揺れる。
潮騒の音に重なり合う
ガムランの調べ。
見上げるほどの
ブーゲンビレアの大木に
宿る神々の声。
空 いっぱいに
びっしりと花を咲かせ
垂れ下がる無数の枝は
滝のように見える。
花びらの上で飛び散る
しぶきが光り
木陰にいくつもの
陽だまりをつくった。
時おり風に揺れて
散りゆく花に美しい
綿毛のような光の波が
ころころところがって
笑う子どもの額を濡らした。
こどもが笑う
ひかりと遊ぶ
こどもが笑う
ころころ♪ ころころ♪
ブーゲンビレア
「うーん、サンゼンルピア?」
「NO,ヨンセンルピア、、、」
「ん、OK!」
商談成立、
「ナンサイ?」
「9、nine。」
急に、はにかんだ様な顔をして
小さく微笑んだ。