夢うつつ
「ぴちゃ」
「ぴちゃ、ぴちゃ、、、ぴちゃ」
ぼんやりした意識の中で、腹に何かこそばゆい(くすぐったい)感じがした。
ヒンヤリとした、だが少しざらついた感触を感じる。
「ぴちゃっ。。。。」
そして足に温かく柔らかい何かがこすりつけられている感じられる。
(あっ。。。俺どうしたんだっけ。
狼の群れに追われる少女を助けようとして
角で脇腹を刺された記憶がある。
その後は。。。。
その少女に噛みつかれたんだったっけ。
そのあとの記憶は。。。ない。
正直眠い。全身を気だるさが覆っている。
それでも目蓋を開けようとなんとか努力をした。
甲斐があってうっすらと開く。
(えっ?)
俺の上に少女が覆い被さっていた。
そして赤い小さな舌で必死に俺の腹を舐めている。。。
「ぴちゃっ。。。ぴちゃっ。。ぴちゃっ」
その『現実』よりも、俺の頭に過ったは 。。
(あっこの世界でも『チャイナ服』があるんだな。)
そんなことだった。
もちろん微妙に違うかもしれないが、もとより俺にはそこまでの知識はない。兎に角、彼女は赤地に金の刺繍が施されたスリットのあるチャイナ服みたいな服を着ていた。
髪の色は『白?』いや『プラチナブロンド』か。
サラサラしていて綺麗だな。肩までじゃなくもっと伸ばせばいいのに。。。目は深い青か。。。
朦朧としている中でそんな事ばかりに眼がいく。
(スリットから覗く白いふとももが、いいなあ。。。)
俺の右足をふとももで挟みながら
ゆっくり、ゆっくり、腰を揺らしている。
ゆっくり、ゆっくり。。
(それにこれは。。。頭のピコピコと動く耳が何か可愛らしい。作りものにしてはリアルだ。
『えっ耳?』)
そこで意識が一気に覚醒した。
目を一気に開けると少女と目があった。
「▼#%◆★」
何故か頭をグーで殴られ。。。俺の意識はまた暗闇に落ちていった。
※※※※
俺が次に目を覚ました時、横にいたのは肥え太った老婆だった。驚いたのは、その姿だった。
まず、俺より確実に二回りほどは余裕でデカイ。その上、何と首に人骨で出来ているらしいネックレスをし、指にはゴテゴテと宝石の指輪らしきものを嵌めている。
俺は本能的に逃げようと身体を動かそうした。
『動かない』
よくみると身体中縄で縛られていた。
一通りのパニックが過ぎるとかえって頭がしゃっきりし、状況を判断する余裕が出てきた。
そこで、見える範囲を観察することにした。
どうやら俺は洞窟らしき場所におり、
縛られた上、台の上に転がされているらしい。
上には鍾乳石が見える。
横をチラリと見ると台座には紋様が刻まれていれ、脈動している
ように感じた。(気持ち悪いな。)
そしてここには俺と老婆以外に3人いるらしいことも
なんとなく気配で分かった。
薄ぐらい明かりにも徐々になれる。
3人の人影のうち真ん中には見覚えがあった。
「あの少女? か。」
彼女は両側の二人により、取り押さえられている。
よくみると顔にはアザらしき殴られた跡が複数見える。
「★◆▼▼%★★#」
「▼/▼》★#◆」
見ると老婆と少女は何か言い争っている。
今にも、少女は二人をフリほどいて
老婆につかみかかりそうだ。
(もしかして俺を助けようとしてくれているのかな?)
淡い期待が宿る。
しかしその抵抗も虚しく、少女は老婆に顔を叩かれふっとんだ。
(俺の人生とうとう詰みか。。。)
そんな事をぼんやり考えている間に、
口をこじ開けられ、丸いボールのような物を突っ込まれた。
(息が。。。詰まる。。?)
意外にも、スッと身体に入った。
少女はその隙に立ち上がり、老婆に突っ込んだ。
決まったのは『老婆』による『カウンターパンチ』だった。。。
「さかりのついた猫みたいに、発情してるんじゃないよ。」
突如大声が響いた。
そして、何故か彼女達の言葉がはっきり分かった。
(先程のボールか?)
「いくら『初めての男』の血だったからと言って限度がある。」
「でもお婆様」
「誰もお前が見初めた『雄』をとったりしないよ。それより『銀狼』の誇りはどこにやっちまったんだい?
朝から晩まで、その『雄』の血を舐めて、殺しちまうつもりかい?」
「だからそれは、その彼を助けようとして。。。」
「『ポイゾンブォルフ』の毒ならとっくに『吸出した』だろうさ。足に『マーキング』までして取られたくないのは分かるが、やり過ぎじゃないかね。。。」
(ん?足?)
「そこの『ヒューモ』、言葉が分かるようになったみたいだね。ちょっとまちな。縄をほどくから。」
そう言うと老婆は縄をほどいてくれた。
(少女=善 老婆=悪 って訳ても無いらしい?)
俺は縄を解いてもらうと、早速自分の右足の臭いを嗅ごうとした。
「すんっ、すんっ」
何か甘く湿った匂いがした。
「ムスク系の香水の匂い?」だ。。。
「ダメーーー」
そう言う声とともに俺は突き飛ばされた。
今回は、身体の自由が効いたおかげで『受け身』を取ること
ができた。縛られたままだったら多分大ケガをおっただろう。
「ごめんなさい。。。」
上目遣いで俺を彼女は見た。
(『上目遣い+涙目』これはある意味『必殺』だろう。)
匂いを嗅がれたのが、よっぽど恥ずかしかったんだな。
でも『マーキング』って犬が、よく電柱に○○○して自分の縄張りや物を主張する行為じゃなかったっけ?
確か尿にホルモンが含まれていて、その臭いによって縄張り等を主張するとか聞いた気がする。
えっじゃこの臭いって???
「何を考えているか知らぬが、多分お主の考えていることとは違うと思う。」
そう老女に突っ込まれた。
ははは。。。
そう言えば、改めて見るとこの娘こんなに大きかったっけ?
(もちろん、何がって、こんもり盛り上がった二つの。。。山、
じゃなく、背の高さである。
狼に追われて逃げていた少女は、せいぜい中学生ぐらいだったはず。もしかして、『お姉さん』?)
「その娘が、お前の助けようとした者に間違いないぞ。」
(お婆さん、あんたはエスパーか?)
「お前さん、どこから来たのか知らないが、我ら『呪われた銀狼族』について、どうやら何も知らないようじゃの。長くなるが聞くか?」
(巻き込まれた以上、『聞かない』って選択肢は多分ないんだろうな。。。)
「その前に、簡単に自己紹介しとくかね。
私は、この村『ロックウェル』の長老をしている『エレン』っていうもんだ。そして、この二人が『サーシャ』と『ミナ』。最後にこのアホ娘が『セラ』だ。
三人とも私の孫だよ。父親は違うがね。
そして、最後の『銀狼属』でもある。まあ、『銀狼』についてはおいおい語るとして、お前は誰だい?」
「『九鬼 海人』といいます。」
「クッキー?あの食べ物の?」
「伸ばさず『クキ』と呼びます。『クキ』でも、『カイト』でも好きな方でお呼びください。」
「あたし、『カイト』って呼ぶ。」
目をキラキラさせながら、彼女は言った。