旅だち
飛びこんだ穴の先には、なんとも奇妙な宮殿があった。
(『継ぎ足し継ぎ足しで拡張して、どこか纏まりがなくなった田舎の旅館』、良く聞くがきっとこんな感じだろう。。。
この場合は旅館じゃなく、城だから。。。もっと残念だが。)
「ふふん、どうだ恐れいったか。凄いだろう。」
(本音言っても録なことにはならないか。。。)
「全く持って素晴らしいデス。。。」
「なんじゃ、その棒読みは。。
まあ、ここの地下にあるダンジョンがお前の仕事場になる。早く慣れろよ。
その前に何か言いたいことはあるか?
命ごいするとか、泣いてすがるとか。(笑)
寛大な俺様は今なら聞いてやるぞ~
『スライム』になったら、そうは喋れんだろうからな。」
(結局なんだかんだ言っても『スライム』にする気満々じゃないか。こんなやつ神でもなんでもねぇ。)
「『カオスの神』だか何だか判らんが、言いたいことばかり言いやがって。神だからと言って許されることばかりだと思うなよ」
タンカを切った。
「何故俺様が『カオス』の神だと知ってるんだ?
『不思議だ不思議だ。』
しかも『天秤』のこともどうやら知っているようだな。
さては『コスモス』の連中に入れ知恵されたか?
まさか『スパイ』?
そう言えば、奴らの匂いがお前から少ししたが。。
『レピア』か。。。
何れにせよ、この結界内には置いてはおけんな。」
勝手に独り言をいって、勝手に納得してる。
(『天秤』とか『レピア』なんて俺は知らない。。。)
こっちを睨むと、
「『レピア』め、そう上手くいくと思うなよ。」
そう言って俺にデコピンをした。
※※※※※※
「いたっ~」
『糞神』に文句を言おうとして、
周りを見回したところ、辺りはなんと
森に切り替わっていた。
(結界から弾き飛ばされたのか?)
『異常事態』だが俺は比較的冷静だった。
(まあ、あの異常な世界に千年飛ばされた事よりましだな。)
ぶなの木に似た広葉樹が群生して生おり、
あちこちに動物の糞など落ちていることから豊かな森だと推測される。
(まあ『ヒューモ』もいるみたいだから、どこかに村や街もあるだろう。
そして『スライム』もいると『ナハト(あいつ)』が言っていたことから間違いなく魔物もいる。
運が悪けりゃ魔物の真っ只中に飛ばされた可能性もあった。
そういう意味では飛ばされた先が『森』だったのは本当運が良かったな。ここなら獲物に困らないし、水の確保もできる。)
まず、安全な水場を確保することから始めることにした。
倒れていた場所を起点として半径1kmを探索する。位置把握には太陽を使った。
(勿論この世界の太陽が必ずしも東から西へと進む訳とは限らないが、一応の目安となるな)
果たして、川は簡単に見つかった。
そして、嬉しいことに魚らしきものも泳いでいる。(ラッキー)
ここで水を飲み数匹川魚を確保、柔らかい木と硬い木をすり合わせ火をおこし早速食べる。
(不思議なことにあの空間より出たとたん空腹を感じ始めたんだよな。『物を食べる』って本当に生きてることに直結するんだな。)
『この土地の動物の生態』について知らないのと、『服を着ていないこと』に今さら気付いた俺は、木に登りそこで夜を過ごすことにした。
(裸は駄目だろ。さすがに。。明日は服の確保だな。)
そして翌朝、服の確保は以外と簡単にできた。
朝起きると近くの木の下に鹿がいたのだ。
軽脚(軽功の一種)で木から木へと飛び移り
鹿に飛び乗った。後は首の関節を。。。
(残酷描写有り。南無~)
角を割るとナイフとして使えそうだったのでそれをナイフ代わりに皮を捌き、木のつるで身体に巻きつけた。
(肉はもちろん美味しく頂いたのだった。)
しばらくここで食料を自給自足する生活を続け、
1ヶ月ぐらい経った後、俺はここを発つことにした。
俺の人生を奪った『ナハト』とは何者なのか、そしてそれに対抗しているらしい『レピア』、『天秤』についても俺は知りたかった。
※※※※※※
旅を開始し3日たったが、見えるのは森また森である。
(はたして、本当にこの世界には『人間』は存在しているのか?)
そんな思いが頭に過る。
不安に思いながらさらに歩を進め、さらに2日ほどたったころ、
やっと文明の痕跡を見つけた。
『道』らしきものにぶち当たったのだった。
『道』にそって進めば『ヒューモ』にいつか会えるどろう。
そう考え道に添って暫く歩くことにした。
(なかなか、人と会わないな。)
聞こえるのも、鳥の声のみである。
そう思った矢先
「キャー」と言う声が森に響く。
「★◆▼※%#」何か言っているようだ。
悲鳴のする方へと走る。
見ると小柄な女性が緑色の狼に囲まれていた。
(全部で5頭か。)
幸いこちらが風下であったせいかまだ気付いていない。
石ころを適当に拾い、相手の鼻先めがけ投擲する。
不意討ちにより、3頭は無力化した。
残り2頭。。。うち1頭の体格は他を圧していた。おそらく群れのボスだろう。
あと1頭は小柄。
2匹は俺にターゲットを絞らせないよう、俺の周りをぐるぐる周り、交互に攻撃を
仕掛けてきた。
俺は大型のオオカミに狙いを絞った。
「★◆%%##▼▼★」
良く分からないが応援してくれている?
ん?違う何か伝えたいのか?
とりあえず 《ゴキリ》 首を折り
これであと一匹。
そう思ったところで、脇腹に痛みがはしった。
(こいつ角がある?)
猛烈な痛みで意識を持っていかれそうになるが、足で蹴飛ばした。
《ギャン》
ーはるか彼方に飛んでいく。
(やっつけたか。)
少女が駆けよってくる。。。
(無事だったみたいだ。。良かった。)
《カプ》
(えっ。。。。えっ?噛まれた??)
ここで、俺は意識を手放した。