クイッククルクル
朝食の後、べネットさんに牛脂の調達を頼み俺たちは、街の郊外に出て来た。
「これまでは、『銀狼』から逃げ伸びる訓練をしてきた。
そして、これからは残り5分『銀狼』を抑える訓練に入る。
これは魔法の素養がある者、いわゆる『俺みたいな者』にしか習得するのは難しい。まあ、無理だったとしても諦めるんじゃないぞ。ま、一応聞くが、お前、出来るとかぬかすんじゃないだろうな。」
(『ハイド・シャドウ』比較的簡単に習得したせいか、警戒されているな。。。)
「勿論、出来ません。」
「そうかそうか」
とドヤ顔を浮かべる。
「簡単に出来てたまるかっ」
(ボソッと呟いたのはちゃんと聞こえてますから。。。これさえ無けりゃあ。。ね)
まずは自分の動きを早くする魔法だ。
『クイック』って言う。
「身体の中のマナが、まず上から下までゆっくり循環している様子を思い浮かべろ。そして、それが出来たらダンダンそのスピードがアップする様子を思い浮かべるんだ。」
(多分、『気』と『マナ』は同じものだ。瞑想で気を思い浮かべて。。。どうやって回すんだ?)
「『クイック』を唱えると、こんな風に早く動くことが出来るようになる」
「クイック」
ベネル師匠の動くスピードが上がり目で追うのが難しくなってくる。
(わあ、お兄さん、あのおじさん面白い。『マナ』がクルクルキラキラ回ってるよ。)
(お前、もしかして見えるのか?)
(うん。お兄さんも見てみたい?)
(そんな事も出来るのか?)
(勿論。凄いでしょ。)
(凄いな。)
(でしょ、でしょ。何せお兄さんと僕は一心同体だからね。)
こいつ(エル)を拾って初めて良かったと思えた瞬間だった。
ふとみると師匠の動きは止まっており、俺を睨んでいるように見えた。
「師匠の動き早くて目で追っているのがやっとでした。流石ですね。」
「だろだろ」
にやりと笑う。
(単純だ。。。)
(単純だね。妖精族にもあんなチョロいやついないよ)
とエルに相槌をうたれた。
「もう一回だけ見せてください。」
(『エル』、準備はいいか?)
(おっけ~)
間の伸びた思念が飛び込んできた。
そして、視角が急に開け光が飛び込んできた。
「よし、始めるぞ」と師匠の声が響き
師匠の身体をうっすらと白い光が被う。ゆっくりとだが身体を巡っているように見える。
師匠が『クイック』と呟やくと青い光球が現れ、ぐるぐると身体に沿って回り初めた。それに引っ張られるように身体を覆っていた白い光も回り初め同時に加速した。
(ああ、これが『クイック』って魔法か。。。)
(『エル』ありがとう。おかげで何か掴めた気がする。でも、あの青い光の玉って何だろう。。白い光は『気』に違いないが。。。『エル』あの青い光って何だ?)
(お兄さん、本当分かってないなあ、白いのが『マナ』で青いのが『魔力』だよ。妖精なら産まれたばかりの子でも知っていることだよ)
横を見るとドヤ顔をしていた。
(俺は『妖精』じゃあないし。。。)