蚊対俺
蚊??
(さて、どうするか?まずなんで倒れたかだよな。)
「おいっ、聞こえているか?」
「どこからか声が聞こえる。なくなったお母さま?」
「な訳ないだろ、しっかりしろ」
思わず突っ込みを入れてしまった。
(っていうか、妖精も死ぬんだ。)
「はっ、私を拉致した上、名前を奪ったさっきのヒューモ。」
「やっぱりおいていく。」
「しかも極悪ひどう」
「じゃ、そういう訳で。。。」
「あたしを捨てていくのね。」
「なんでそうなる。そもそも今日会ったばかりだし。俺を殺そうとしたし。」
「ぎくっ。細けえな、男のくせに。。。」
(心の声駄々漏れだな。。。関わらないほーが良さそうだ。)
スタスタスタ
「ねぇ待ってよ~。『か弱い』しかも契約した妖精を放置していくの?祟ってやるから。」
(祟るって、嫌な響きだな。そもそも契約なんてしてないぞ。)
「契約なら、さっきしたじゃない。私の真名を訊ねて、呼んだじゃない。」
「えっ、あっ、じゃあキャンセルで」
「んなこと出来る訳ないじゃん。あたしの純情返せ~。今すぐ返せ~。」
(えっ、いつそんな関係に?)
「私のハートはギューグルグルと締め付けられるようにいたいの。私のハート奪った責任取りなさいよね」
(って、そもそもそこ胸じゃなく腹だし。完全無敵な電波系?だな)
「ぐう」
音がなる。
「ほら、胸の高鳴りが、、、」
「もしかして、腹減ってるだけじゃないか?」
そしてまた、こいつはぶっ倒れた。
※※※※※※
それから数刻後、俺の肩の上を指定席と決めたらしい、デブの妖精が耳元で騒いでいた。
「デブって言うな、デブって。せめて成長期って言いなさいよね。『成長期』分かった。」
(そもそも口に出してないし。)
さっきから不思議に思ったが、どうやら俺とこいつはテレパシーでつながっているらしい。
(お互いの考えが駄々漏れって何か嫌だな。。しかも位置まで分かるらしい。
はあ。。。)
結局のところ、この妖精は単に『腹が減って』ぶっ倒れただけらしい。
なんでも今まで食事を取ると言った行為をした事がないとか。
聞いた話を総合すると
どうやら妖精という種族は、普段彼らの住んでいる世界(妖精界)から直接マナを取りこんでいるようだ。
ただこいつ(エル)に限って言えば、俺に『見られたこと』で、彼らの世界から切り離され、この世界(物質世界)に定着してしまった。
その結果、食事を取らなきゃならなくなったみたいだ。
(俺のせいもちょっと?いや、多々あるのか。)
「お兄さんやっと理解したみたいだね。僕のマスターとしては『にぶちん』だな~。
もっと頭を使った方がいいんじゃないかな。」
(ほっとけ)
「とにかく、ちゃんと責任とってくれれば良いから。。」
そう言いつつ俺の頭に止まり
「ちゅる」っと何か吸った。
「意外とお兄さんのこれ美味しいね。」
えっ、えっ、何か吸われた?
(こいつ、もしかして、蚊みたいに生き物からマナを吸い取るのか)
「失礼な、どの生物からもマナをとるなんて無節操なことしないよ。
お兄さんのマナしか吸う訳ないじゃん。
お兄さんは僕の契約者として自覚持った方が良いよ。」
「ちゅるちゅるちゅる、ずっずっず
美味しいね~」という歌声が聞こえる。
微妙に上手いだけにむかついた。