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『カオティク✖ルナティック』  作者: ことわり
1/33

プロローグ

俺は走っていた。


岩をひょいっ、ひょいっとリズムかるに

飛び越す。


昼までに帰らないとまた、昼飯抜きの刑が待っている。。。


(ジジイうるさいからなあ)


一瞬気をとられたせいか、着地点に穴が空いているのに気付くのが遅れた。

空中で身体を(ひね)り何とか落ちるのを防ぐ。


新たなる着地先へ足を向ける。。。と


こっちもまた黒ぐろとした穴が空いていた。



『シュポッ』



俺は吸い込まれた。




※※※※※※

落ちた先は、真っ黒だった。

いや、若干薄ボンヤリとしてるって感じか。

足元の感覚は定まらず何かフニャフニャしている。


明るさにだんだん慣れてきたので、目の焦点を定まらせると

目の前に『顔が歪んだ』男がいた。


(歪んでいると言うより、右半分と左半分違った顔を二つ繋ぎ合わせたって言った方が当たっているか。。。)


その男は突然話かけてきた。

『ゴメン、ゴメン設定ミス。あんな場所に『次元の穴』を空けるつもりなんてなかったんだ。


しかも、そのタイミングで、まさか現地の『ヒューモ』がかかるなんて。』


『ドンクサイやつ。』呟きが聞こえた。


(聞こえてる段階で悪意だな。)


気を取り直して質問する。


「もし良かったら、状況教えて下さい。

できれば昼飯前に戻りたいんで。」


「実は、俺様 ちょっとしたミスで

移動先では無い所に『穴』を空けてしまったんだ。

君も聞いた事あるだろう?『神々の通り道』って奴。

ちょっとした『数式の入れ間違い』ってやつさ。」


何か『神っぽい』やつらしい。


「間違いだったのなら、早く元の世界に戻して下さい。」


「嫌だね。僕は忙しいんだ。待ち合わせに遅れる訳にいかないし。たかが『ヒューモ』の為にわざわざ『神々の通り道』開くのなんて面倒くさい。」


わあ、後の方が本音だろうな。。。

かといって、ここに放置されても困る。


「神さまなら、ちゃんと責任をとって下さい。信者に嫌われますよ」


「君って僕の信者?」



「。。。。」



「違うでしょ?なら何でそこまでしなきゃいけないの?」



「誤って連れこんだんだから、『責任』とるのが普通じゃ?」


「それは君の『理屈』だろ、何で僕が君の為に何かしなきゃいけないんだい?


そもそも、昔から神々は『気まぐれ』ってなっているのさ。

さて、正しい数式が組上がったんで僕はいくよ。

帰り道まだ君がいて、僕の気が向いたら帰してあげるかも。

『千年の宴』の後だから、それまで気長に待っててな。。。

はっはっは アバヨ」


言うだけ言うと、黒ぐろとした穴を空けそこに飛びこんだ。


何が 『アバヨ』だ。バカヤロウ。。。泣けてきた。。。


こうして、俺はめでたく『迷子』になった。




※※※※※※

ここはどこか暫く謎だったが、

通り過ぎる神々とポツリポツリと話すにいたって、どうやら神々にとっての(ターミナル)らしいと分かった。


神々は、俺がここに紛れこんだ理由(わけ)を話すと、俺の存在を面白がり、興味も持ってくれたが、誰も助けてはくれなかった。


「戻してあげたいけど、どこから来たのかわからないからね~。

そればっかりは、間違えた本人じゃないと無理だわ。『千年待てば戻ってくる』と言ってたんでしょう。待っていれば良いじゃない。」


こんな感じで、大概の神は答えてくれた。

「『ヒューモ』は千年も生きないと思います。」

そう答えると


大抵「あらあら、それはお気の毒に。。」

そう言って去っていく。


中には気の毒に思ったのか、黙って「ネクタル」とか「仙桃」とかいった食べものをスッと手渡ししてくれる神もいた。


「ノラヒューモにエサは与えちゃいけない規則になっているから内緒だよ」

そう微笑んで去っていく。


俺のポジションって。。。いったい何?




※※※※※※

何年か過ぎた。。。


ここには、昼も夜もなく、薄ぼんやりとした光があるだけである。寒くもなく、暑くもない。食事も別に摂らなくとも良い。

ただ時間だけが過ぎていく。


「暇だ。」

いつのまにやら、身体の感覚もなくなっていた。俺は生きているんだろうか?

意識はあるが。。


時折、こうした疑問が湧くが、答えは勿論ない。。。


変化があったのは、そんなある日だった。

その神は何やら急いでいた。


よほど急いでいるらしく、こちらに気付きもしない。


他の神々と同じように黒い穴を目の前に出現させ、飛び込む

突然「パーン」と音が弾け

穴から再び飛び出て来た。


「俺としたことが。。。

『星の邂逅』に間に合わなかった。。。

次に繋がるのは300年後か。。」


(格好つけてはいるが、単に失敗しただけじゃあ。ぷぷぷ)


俺の気配に気付いたのか、ふいにこちらを見た。


「おい、そこの『亡霊』」


「『亡霊』などじゃあない。俺は。」


「どうでも良い。今、お前俺のこと侮辱しなかったか?」


「可笑しくは正直思ったが、侮辱などしていない。

ただ『全能の神でも失敗するのだな』と思ったら、なぜか笑いが漏れてしまった。」

正直に言った。


「俺は『全能』なんかではない。。。

嘘は言ってないようだな。

正直なのは気に入った。。。

ところで、改めて聞こう『ヒューモの亡霊』が何故こんな所にいるんだ?」


「だから、俺は『亡霊』などではない』」


「なら名前は?何故こんな所にいる?」


「。。。。。」

どうしたのだろう。名前が出てこない。。


「名前が出てこないってことは亡霊化しているってことだ。」


「ただ、どうしてここにいるかは分かる。」

そして、俺はここに来た経緯を語った。


神は黙って話を聞く。

「完全な亡霊化はなされていないようだな。

その神は恐らく『カオス(混沌)』サイドの神であろうが

無責任極まりない。同じ神として、謝ろう。」


この神には一切関係がないはずなのに。

『色々な神がいるのだな』と考えたら、ふいに何故かジーンと来て、涙が流れでた気がした。。。


「まだ感情もある。なら手遅れじゃあないか。。。

よし、どうせ次の『星の邂逅』まであと300年ある。何かの縁だ。お前に力を貸してやろう。」


()ずはだ。お前が『ヒューモ』に戻るには2つ『取り戻すもの』がある。」



「人間に戻れるなら何でもする。」



「その意気だ。」



「で、何を取り戻せば良いんだ?」



「取り戻すもの、一つは『身体』、もう一つは『存在』だ。気付いてはいないだろうが、お前の身体はこの空間に侵食されている。なぜなら、この空間は『สวัสดีโชคดี』だから。故に本来なら存在できるのは、神か、亡霊(何でもないもの)かでしかない。」


「空間はからの言葉が良く分からない。」


「うむ。『ヒューモ』の言葉では概念がないか。あえて言うと『どこでもある場所、何でもない場所』だ。

まあ、簡単に言えば、強烈な個性を持つ者か

無個性の者どちらかでしか存在できない場所だ。


何故お前の様な半端な存在が、永らく意識を保っているのか、俺には分からん。


可能性としては。。。

お前が生きていた時代に、もしや『天界の物を食した』事かとかはなかったか?」


「生きていた時代ではなかったけど、野良時代はあったかな。。。」


「。。。。 運が良かったな。」




「脱線から戻るぞ。これから特訓だ。

まずは、自分の中心に核があるのを想像してみろ。

固い固い核が自分の真ん中にあるって感じでな。」


「核のイメージ? 硬いものでいいのか? 岩石?とかダイヤモンド??」


「なんでもいい。硬いイメージを持てさえすれば良いんだ。」


「じゃ『ダイヤモンド』にする。」

(身体の中心に光るダイヤモンドをイメージする。)


「よしよし良いぞ~。そのまま、そのまま。。次にその核に向かって光が集まってくるイメージを持って。。」

(こんな感じか?)


「おっ、良いぞ良いぞ。 『核を中心に光がまとわりついていく』そんな感じをそのまま持ちつづけるんだ。」

(どうやら出来てるみたいだ)


「そうそう、だんだん練れてきた。次に『ヒューモ』だった時にあった器官をイメージして」

(器官って?胃とか?腸とか????)


「細かいことは良いから、ざっざっと。

あくまで、仮初めの身体なんだから、

ざっくりざっくりで。、。」

(なら、最小限必要な機能だな。頭、胴体、手足、目、鼻、口、耳ってか?)


「おっ、良い感じ良い感じ。やればできるじゃないか。」


「身体は取り敢えずこれでOKだな。」

(OK。。。なんかい。。。)



「じゃ、次。『存在』を取り戻すぞ。これは、簡単に見えて実は一番難しい。」


(方法は?)


「『名前を思い出す』ことだ。」


(名前を思い出す? なんだ、簡単なことじゃないか。。。

えっ?


。。。


何故?


でも?ダメだ、


思い出せない。。。


俺の名前は。。。)


「まあ、時間はたっぷりある。母音と子音を組み合わせて音を出し、自分の核に『共鳴するもの』を探していけば良い。」


(えっ、まさか片っ端から音を組み合わせていくとか?)


「そうだ。」

(そうなんかい。まあ時間だけはあるし。

片っ端からやっていくか。)


「ああ、あい、あいあ、あいい、あいう、、、あいざあ、あいざい、、、」

(地味に大変だ。根気良くやるしかないかあ)


結局幾日たったか分からない、

が、俺は名前を取り戻した。

『クキ カイト』それが俺の名前だった。


不思議なもので、、、

名前が分かったとたん、

全ての記憶が舞い戻ってきた。




※※※※※※

記憶の中で、俺は孤児であった。


幼くして、両親を車の事故で無くし、孤児院に引き取られていた。


贅沢はできないものの、暖かく優しい施設のスタッフ、そして多少癖はあるものの、それなりに楽しい仲間に囲まれ、数年は過ぎた。


『このまま、ここで大きくなるんだな。』

そう漠然と思っていた俺の転機は突然として訪れた。


「やはり、身内の方と住むのが一番良いと思うの。」

そう言う施設長の一言ともに

俺は送り出され、遠い親戚(じじい)によって引き取られることになった。


じじいは一子相伝を謳う古武道「九鬼神道流」の皆伝者であったものの、残念ながら子はなく、技を伝承する相手を探していたらしい。

そのアンテナに俺が運良く(運悪く?)引っ掛かったという訳である。


「腹が減ったなら、自分で何とかしなさい。お前には手もあり、足もある。そこに載っているのは頭だろう。」


食べものを採る事や、捕ることについて簡単に教えてもらった後、寝る場所だけ与えられ、俺は山の中で放し飼い?にされた。とにかく『生きる』と言うその事だけに必死な時代だった。


幸いジジイ以外、他の比較対象のいない環境?

(山の中だもんな。)

だったので、それが当たり前のことと刷り込まれ育った。


年頃になり、学校に行くようになったころには流石に何かおかしいと思う様になったが、住んでいる小屋との往復だけで数時間かかる場所であった事もあり、特に気にせずに時は過ぎた。


学校への往復と日々の食材集めなどで

基礎体力がついてきたと判断されたのか

ある日、鍛練を始めると宣言され、

勉強と生き残りの毎日が始まったのだった。



最初の一年は

ひたすら人体について叩き込まれた。


即ち、急所の位置、間接の仕組み、脳の辺野、天穴などを医学書を元に夜勉強させられ、昼は人体模型図に似た人形相手の打ち込みを繰り返し繰り返しさせられた。


『練習は自分を裏切らない』

これが師匠(じじい)の口癖だった。


2年目からは1年目の訓練に「外功」の訓練が加わった。

「外功」とは即ち肉体を鋼のように鍛え、己の身体を武器とする技をさす。


これが痛い。


板や木槌で自分の急所以外を叩く訓練

砂場に全身ダイブする訓練

サンドバックに抜き手を指す訓練

石を素足で繰り上げる訓練

地面に打ち付けた杭を素手で引き抜く訓練

木の杭を敵にみたて、その喉部分にあたる場所を引きちぎる訓練


こんなのをマジ普通にさせられた。


3年目になると、「内功」を始めることになった。

簡単に言えば、いわゆる『ドラ○ンボール』における『カメ○メ波』を放つことを目的にすると言えば分かり易いかもしれない。


身体の(パワー)を丹田と言われるヘソ辺りに込め、気脈に沿って流れることをイメージし、それを身体の中で循環させることで身体中の細胞を活性化させたり、

それを相手に放出する事によりダメージを与える武術である。

まあ、瞑想している間は痛い思いをしないから地味に嬉しかった。


そして、俺が中学を卒業するころ

「輕功」の訓練が始まった。

これは内功の一種で、身体の重さを感じられなくする技だ。


『立っているのがやっとの大きさの穴』に落とされ、そこから気功の力だけで飛び出る訓練をこれまた繰り返しやらされた。

達人になると、空中を駆けることも出来る様になると師匠は言っていた。

(ほんとうかよ。。。)


高校に入るころには、3功を未熟なりに使える様になった俺をみて

「『武林』の達人になる為には、外功、内功、輕功をバランス良く使える様にならないと一人前とは言えぬ。精々精進しなさい。」

そう言って笑った師匠(じじい)は少し嬉しそうだった。


もう少し精進すれば、そのうち秘伝の一を伝えようとも言ってた矢先に、あの事件は起きた。


(繋がった。。。)

すべての記憶の破片が繋がったような気がした。


「俺は『九鬼 海人』っていいます。」


「『カイト』か良い名だな。もう名前を無くさないよう気を付けるのだぞ。そして自分の存在が、この空間に霧散しないよう、

常に自分の身体、そして存在を意識する様、心がけろ。」


「色々、本当に色々ありがとうございました。」


「なあに、ホンの暇潰しだ。

それにお前の場合、『筋が良い』っていうのか、勘所も良くて覚えも早い。本当に教えがいがある。」

何か楽しそうだ。


俺も誉められ満更でもなかった。



※※※※※※

幸いヒューモだった時の記憶が戻ったので、もう少し精緻に自分の存在を作り込む事にした。

内功で重要なのは丹田。そして、そこから身体の隅々まで流れる気脈。。。

そこに重なる様に外骨格や、脳、神経、血管を配置し、最後にその他の器官や、筋肉を配置していくことにした。一つ一つ丁寧に作っていく。

神経と気脈、天穴はズレがない様、特に意識して作り込んだ。

後は、顔の作り込みをして終わりだ。

3割りほど、男前に。。。

(良いじゃん。イメージなんだし。)


そんな俺を横で神さまが、ニタニタ見ていた。


「見事だな。ここまで存在を明確にイメージできる『ヒューモ』なぞ、我も見た事がない。ただ、まだお前はヒューモを作るには経験が足りないな。そいつも精々出来の良い『ゴーレム』ってところだ。

まあ、はじめてならこんなものか。

仕上げを手伝うか?」


「勿論そうして頂くと助かります。」

言うや否や、手伝いをはじめてくれた。

爪や、まぶた、耳たぶなどイメージが足りなかった部位がどんどん組上がっていく。


(すごい)

あっと言う間に『俺』が出来上がった。


「『神は努力するものを助けるもの』だからな。」

そう言うとにっと笑った。


「ここは我が支配空間ではないから、流石の俺でも『新たなヒューモ』の作成はできない。だが『すでにある、ヒューモ』の再生の手助けと。。。『祝福』をさずけるくらいならできる。」


そう言うと手を俺に翳した。


その瞬間何かが俺の『核』に流れ込んでくるのが感じられた。


「多少出力を上げておいた。」


「あと、これはサービス。」

そう言うと額の辺りに手をかざす。


(えっ、えっ、えっ?)

急に視界がひらけた。


「『第三の眼』と呼ばれるものだ。『先読みの眼』とも呼ばれる。普通『ヒューモ』はこれを持っていないから、ありがたく思うと良い。」


(なんか段々人間から離れていくような気がする。。。)


「心配しないでも良い。

『第三の眼』は外的なものではなく。あくまで内的なものだ。意識した時にのみ開けられるから今後色々お前の役にたってくれよう。

『カオス』の神と関わったからには、これからお前には幸運はいくらあっても足りないからな。


さて、あまりにヒューモへ干渉すると『天秤』のバランスが崩れてしまう。

我が干渉するのはここまでだ。


星の並びも揃ったようだし。そろそろ行くぞ。」


「何とお礼を言えば良いか。」


「なに、星が揃うまでの暇潰しだ。

運命の輪がまわり、神と人との宿が交わる時が何時の時代か来よう。それまで達者でな。」


「あっ、その前に是非お名前を。。。」


「まだ名乗ってなかったか。『ジート』だ。」


そう言い、黒ぐろとした穴を空間に開ける

とそこに歩み始めた。


「ありがとうございました。」

それしか言う言葉はなかったのだった。



(行ってしまったな。。。)


そう思って感慨にふけっていると、不意に

声が届いた。


「言うか言わぬか迷ったのだが、敢えて伝える。


『カオスの神よりの贈り(ギフト)には気をつけろ。願いは叶うが、望む形での結果とはならない。』


良く意味を考えるんだぞ。」


(叶うなら???良いんじゃないか?)


「もう少しヒントを。。。」


答えは返って来なかった。




※※※※※※

その日は突然にやってきた。


いつもの通りの鍛錬を、代わり映えのないこの世界で行っていた。


黒い穴が世界に開くと一柱の神が出てきた。そいつは酒に酔ったかのように千鳥足で歩いてる。


(何処か見覚えがある?あいつだ)


「俺を元のとこに返せ」

俺は詰め寄った。


「ん?なんだこいつは?」


「千年前、ここに間違えて連れてきた上に放置して、『千年の宴』とやらに消えたこと、忘れたとは言わせないぞ。

待っていれば帰りに帰すと言っただろうが。」


「ん?。。。。

まず、お口チャック。

ヒューモの分際で無礼だぞ。」


(口が硬直した。)


「ん~。そう言えば、

そんな事もあったよーな。なかったよーな。


千年もたってるし~。

しかし千年か~

お前大概しつこいな~。

普通諦めてどっかいくでしょうが。


あっ『ヒューモ』じゃ無理だね。

ゴメンゴメン


でも、そもそも何で意識がお前に残ってるの?

もしかして『執念?』『怨念?』嫌だ嫌だ。


にしても長いよね~。

まあ、俺は今日気分が良いんで、どっか送ってやるよ。どこにいきたいんだい?」


「。。。。。」


「おっと口チャックじゃ喋れないか。ほいっと。喋れるはずだから言ってご覧?」


「もとの世界の元の時代。おれがこっち来たタイミングで戻して欲しい。」


「ん?無理。そもそも数式忘れてしまったし。。。何かギフトを上げるから適当なところで手を打っといてよ。じゃないとここに放置するよ。」


涙がポロポロこぼれる。。。

(『あの場所に帰ること』だけを考えてきたのに、戻る事もかなわないのか。)


「あっ、なんか。。。不愉快

女々しいのは、好きじゃないんだ。


まず、能力(ギフト)だけ。

千年待たしたお詫びになんかアゲルよ。

何がお望みかい?


千里を見通す目?

死者を操る言葉?

鬼神の力?

女性が君に必ず惚れるようになる力?

絶対死なない力?

触るものすべてを金に変える力?

全世界の知識?

今ならなんでも大盤振る舞いであげちゃう。」


(心が少し揺らぐ。

でも。。。なんか凄くうさんくさい。。)


出た言葉は結局

「何もいらない。」だった。


「えっ?このナハト様の『ギフト』をいらないって? 嘘でしょう?ね、嘘でしょう?」

周りを跳び跳ねる。


「元の世界に戻せないなら、もうかまわないで下さい。」


「きぃ~、信じられない。この僕を『拒絶』するだなんて。この『僕』をだよ?


『スライム』に変えて、僕のダンジョンで飼ってやる。魔物の死骸掃除を一生してるがいいさ。


この場所じゃあ、俺様の力は使えないから、連れて帰るとするかな。」


そう言うと俺を小脇に抱え、黒グロとした穴に飛びこんだ。


『シュッポ』




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