“悪魔王”
八十一話目です。
「着いた!」
【魔大陸】にある欲望の城に着いた、何故か屋根が無くなっていた、なんでや。
「よっし! 行くか。」
扉を開け中に入る。
装飾はほとんどない、飾りけの無い城だなおい。
というか、敵いねぇ! こんな警備手薄で大丈夫か? この城。って、敵の心配をしても無駄なんだけど。
「おっじゃま、しまーす!」
最上階にあった、いかにも『ここに、魔王いますよ!』って、ドアを蹴り飛ばす。
「どんな入り方だよ、おい。」
「レイくん!」
「よぉ、マコト。コユキも久しぶり。」
中に入ると、見知った顔がちらほらと……………
げっ! 至宝里までいやがる。
「レイくん! レイくん、じゃないか!」
「誰だお前。」
至宝里が爽やか笑顔で話かけてきた。嫌な印象ゼロ、いつもみたいな殺気も皆無。こいつは至宝里じゃない! 似た誰かだ!
「おいおい、レイくん。僕だよ、僕、至宝里 信さ!」
俺は無言でマコトの方を見る。
マコトは無言で首を振った。
こいつ、頭でも打ったのか。
「頭など打ってはいないさ。目が醒めるようなビンタを頬にくらっただけさ!」
「あぁ、うん。そうか。」
こいつは、ほうっておこう。
「で、何しに来たんだ? レイ。」
「そうですね。何しに来たんですか?」
「おっと、すっかり忘れる所だった。【強欲】の魔王はどこだ?」
「あそこにいるぞ。」
マコトが指をさした方へ歩くと、傷だらけの魔族の男がいた。もうすでに、死んでいる。
「もう、こいつの中にはいないか。」
【神眼】を使い居場所を探る………………いた!
「〔光神の矢〕!」
ヤツが入るであろう場所に、【霊術】を叩き込む。
「おやおや、私を見つけるとは、何者ですか?」
「名乗るなら、そっちからだろ? “悪魔王”さん?」
「ほほう? 私の正体が分かるのですか。“神霊王”殿?」
神霊王と悪魔王は、互いに睨み合う。
「レイ。“悪魔王”って、なんなんだ?」
「【強欲】の魔王の本体。いや、【魔王スキル:強欲】そのものだ。」
「本当かい!?」
「あぁ、こっからは俺の領分だ。お前らは逃げろ。」
「了解。」「頼んだ!」「すたこら、さっさー。」
こいつら、思い切りがいいな。
「僕も戦う。と、言いたいところだけど、ヤツは僕よりかなり強いね。待ってる人がいるから、僕も行くよ。世界を頼んだよ、レイくん。」
「任せとけ、至宝里。」
「死ぬなよ、レイ。」
「こんな所で死なねぇよ、マコト。」
「………………レイくん。」
泣きそうな顔をして、此方を見るコユキ。安心させるために頭を撫でて言う。
「心配すんな、こんなヤツに負けねぇよ。」
「はい、信じます。必ず帰って来てください。」
「おう!」
コユキが部屋から出たのを確認し、構える。
「さぁ、殺り合おうか? “悪魔王”」
「今頃、私の部下が、世界を征服しようと動いていますが。いいので?」
「あぁ、三体の“公爵級”悪魔だろ? 一名は俺の知り合い達がいる所に行ったが、アイツらなら問題ない。他二名は、かなり強いヤツがあたってるよ。」
「ほう? 面白い。此方は此方で始めますか。“神霊王”」
そして、二人は再び睨み合った。
◇
「ハハハハハハ! この俺様を倒す? “公爵級”の俺様、ディアドレをよぉ!」
「ボクも、魔王の端くれだからね。キミみたいなヤバそうなヤツを、放っておくわけにはいかないんだ。」
ここは、【魔大陸】にある、“夢見の草原”
ここで、三体いる“公爵級”悪魔ディアドレと、【嫉妬】の魔王、ネイリア。ネアが向かい合っていた。
「まぁいい。さっさと殺して、お仕事しますかー。」
「さーて、できるかな?」
◇
『ズドンッ!』
「いきなり何? ワタクシを“公爵級”悪魔の一人、イリテアと知ってのこと?」
「おや? 暗殺者かと思えば、とんだ危険人物みたいですね。」
「執事?」
「えぇ、私はこの城に住む姫様、アリウェル様に仕える、専属執事アルタです。姫様はお昼寝の真っ最中、帰って頂けると幸いです。」
そう言ってアルタは、丁寧にお辞儀した。
「嫌よ、貴方が欲しくなったわ。殺してでもね。」
「これはこれは、光栄ですが、お断りさせて頂きます。(何故俺は、幼女との出会いしかないんだろう?)」
イリテアが自身の周囲に魔法陣を生み出した。それに対し、アルタは二丁の銃を取り出し、構えた。
◇
「ぐっ!」
「がっ!」
「ぐほっ!」
「おいおい、レオシアン。こいつはヤバいぜ。」
「あぁ、ヴィーネ。非戦闘系のヤツらは逃がしたが、まずいな。」
獣王国では、絶望的な戦いが繰り広げられていた。
「シェテ。大丈夫?」
「はぁ、はぁ、はい。でもこのままじゃ。」
「オデ、“公爵級”悪魔。オークス。オデ、最強。」
オークスと名乗る悪魔は、【傲慢】の魔王との戦いで消耗した者達には、辛い戦いだった。オークスは、どんな攻撃をも無効化した。“奥義”さえも。
「オデ、お前ら殺す。」
そう言うと、自身の魔力を収束させていく。
「あれはまずいな。おい! お前ら! タイミングを合わせろ! 打ち消してみようぜ!」
「分かった。」「はい!」「それしか無いな。」「分かったわ、ママ。」「やるしかないな。」「………………!」「よし!」「行くでヤンス!」
「オデ、殺る! 【カタストロフ・バースト】」
「今だ!」
オークスの技と、皆の技がぶつかり合う。しかし
「くそっ! 駄目だ!」
タイミングを合わせた、全員の技がオークスの技に飲み込まれ、そして━━━━━
『ズドォォォォォォォォン!!!』
━━━━━爆発した。
「オデ、最強。オデ、無敵。」
もうもうとした煙が晴れると、そこには
「まったく、危ないじゃない! 尻尾の毛が焦げるところだったわ!」
そう言って、白髪に同色の狐の耳と、尻尾をした少女がおり、その後ろにはオークスと戦っていた人達がいた。
「お前、誰?」
「私は、ヒツキ。その二人に聞きたい事があるの。だから殺されると困るんだけど?」
「オデ、全員殺す。」
「はぁ、なら力づくで止めて上げる。」
そう言うとヒツキの周囲に、白い炎がいくつも灯る。
「無理。オデ、最強。」
「あら? 教えて上げるは、上には上がいるってね。」
そう言って、ヒツキはうっすらと笑った。
レイ、ネア、アルタ、ヒツキの戦いが始まりました。
オークスと戦っていたのは、レオシアン、ヴィーネ、フィー、シェテ、クレア、レウル、フェノ、ジルバ、リグです。