【憤怒】の終わり。
七十三話目です。
始めは【憤怒】の過去話から、始まります。
彼女は、美しい女性だった。
「おはよう、カタロフ。今日も早いのね。」
「やぁ、ローズ。なんだか、目が覚めちゃってね。」
「ふふふ。そうなの?」
「ハハハ。そうなんだよ。」
彼女は、魔族の中でも特に厳つく、怖いと言われる俺にも、普通に接してくれた。
「皆な、怖い。怖い。って、言ってるけど。全然怖くないわ。」
「そ、そうかな?」
「えぇ、ハンサムだと思うわ。」
「え!?」
「ふふふ。冗談よ。」
冗談でも、嬉しかった。
「カタロフ、私ね、夢があるの。」
「夢?」
「そう。私のお店が世界一になって、世界中が私の店の、たくさんの花に包まれるの。素敵でしょ?」
「あぁ、とても良いことだ。」
「ねぇ。その時も側にいてくれる? いつもみたいに。」
「もちろんだ!」
「ふふふ。約束よ。」
「あぁ、約束だ。」
彼女の笑顔を守りたくて、強くなった。【魔大陸】でも、知る人ぞ知る達人に、だが
◇
「なんだ、コレは?」
長期の仕事が終わり町に帰ると、燃えていた。真っ赤に、あちこちから火の手があがり、叫び声が聞こえた。
「なんで?」
「おいおい、まだ魔族がいるぞ。」
「本当だな。」
嫌な笑みを浮かべた、人間がいた。
「お前達のせいか! 【バースト・ナックル】!」
「ぐほっ!」
「くそっ! なんでこんな事に…………………ローズ? ローズは無事か?」
すぐにローズの店に向かう、そして、そこにローズはいた。燃える店に手を伸ばしたまま、倒れているローズが、ボロボロの状態で。
「ローズ!」
すぐさま、ローズを抱き上げる。ローズはこちらを見て涙を浮かべた。
「ごめんね、カタロフ。私汚されちゃった。初めてはあなたにって、決めてたのに。」
「喋るな! 傷が開くぞ!」
「ごめんね。一緒にいるって約束したのに。ごめんね。ごめんね。ごめ……………」
「ローズ! ローズ! 頼む起きてくれ!」
何故ローズが? ローズが何をした?
「ふざけるな! フザケルナ! なんでなんだ! ローズが何をしたんだよ! 優しい彼女が何をしたんだ! ユルサナイゾ! 彼女を奪った人間も! コノセカイモ!」
《【魔王スキル:憤怒】を取得しました。》
「全部壊シテヤルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
◇
「ユルサナイ、カノジョヲウバッタ、コノセカイをコワシテヤル!」
「黙れよ。」
「マダイキテイルノカ。」
ボロボロになりながらも、ベルは立ち上がった。その瞳を怒りに染めて。
「生きてりゃ、嫌なこともある。死にたくもなる。だけどな、それでも精一杯生きなきゃなんねぇんだよ。自分を産んでくれた人に失礼だろ? お前の事情はよく分かった。だけどな、怒りに我を忘れて、そのローズさんの好きだったこの世界を壊すのは許せねぇ!」
「ダマレ! キサマニナニガワカル! カノジョノキモチノナニガワカル!」
「分かんなきゃいけねぇのは、てめぇだろうが!」
「ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレ! ダマレェェェェェェェ!!!」
カタロフが拳を大きく振り上げ、ベルに叩きつける。
「死んで頭冷やしてこい!」
ベルも拳をカタロフへ向けて放つ。そして、拳と拳が当たる瞬間
「【マキシマム・カウンター】!!!」
ベルの持つ始源スキル【反逆者】の奥義が発動した、その力は相手の攻撃を100000000倍にして、跳ね返すという技だ。
「ッ!?」
周囲一帯が閃光に包まれ、晴れた場所には、血まみれのベルがいた。
「ったく。バカなヤツだったぜ。」
そう言ってベルはそのまま倒れ、気絶した。
「まったく、無茶しすぎよ。【天之祈】」
アルフェリアが、ベルに向けて魔法を使い。傷を癒す。
「少し、休むといいわ。」
◇
――――ここは?
――――カタロフ。
――――ローズ? 何故?
――――いいじゃない、そんな事。これからは、ずっと一緒よ
――――ずっと?
――――えぇ、ずっと。
――――そうか、そうか…………
色とりどりの花が咲きほこる場所で、二つの魂は、今一度巡り会った。
【憤怒】撃破! 次は、【傲慢】です。