闘技大会終了
六十八話目です。
「【変化】」
―――――――月読虎
シェテの髪と、耳、尻尾の毛が白銀に変わる。
さらに、シェテの周囲に冷気が満ちる。
「今度はこちらの番です!」
シェテの姿がかき消え、次の瞬間グレファンの後ろに現れ
「【氷砕】!」
踵落としを叩きつける。
「がぁっ!」
グレファンの体がフィールドにめり込む。
「ぐぅ、なんて速さだ!」
「まだまだ、いきます!」
「くっ! 【仙術:双山壁】」
「無駄です。【獄拳:深淵】!!」
「な!? ぐはっ!」
岩で出来た壁を破壊し、グレファンを殴り飛ばす。
「ぐっ。ここまで、強くなるとは。普通の【変化】ではないな?」
「さぁ? よく分かりません。でも、これならあなたと戦えます。」
「の、ようだな。ではゆくぞ!【土貫雷】!!」
地面からいくつもの雷が、空へと降り注ぐ。
「【銀氷之庭】」
地面が凍りつき、地面から出ていた雷が止まる。
「はぁっ!」
「ぐっ! ぬんっ!」
「がっ! せいっ!」
拳と拳を打ち合わせ、岩が砕け、氷が散り、雷が轟き、闇が蠢く。両者の技がぶつかり合い、闘技場が震える。強者同士の戦いに観戦者は息を飲んだ。
「そろそろ決着といこう。」
「はい。次の一撃に賭けます!」
両者の緊張が頂点に達し、周囲の空気もピンッと張りつめる。
「ゆくぞ!“金剛雷角”顕現!」
グレファンの額に、雷を纏った大きな角が現れる。
「お父さん。力を借ります! 【月虎ノ氷眼】、“銀氷纏”」
シェテが、自身の腕と拳に銀色の氷を纏う。
「はぁぁぁぁ!!!【金雷閃光角撃】!!!」
「【銀氷拳:虎月】ぅぅぅぅぅぅ!!!」
『ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!』
拳と角が、氷と雷が、銀と金が、両者の全力がぶつかり、轟音と共に閃光が弾け、闘技場を包みこんだ。閃光が晴れると、土煙がもうもうと立ち込めていた。
『どうなったの? シェテちゃんは無事? 大丈夫!?』
『まぁまぁ、ほら土煙が晴れましたよ。』
土煙が晴れると、地面にたおれたシェテと、仁王立ちしたグレファンがいた。
『立っているのはグレファン選手。やはり、五回連続優勝は伊達では………………』
『いや。こいつぁ。』
『うん。かったのは』
「ごふっ! み、見事だ……………………」
グレファンが血を吐き、消えた。そして、倒れていたシェテが起き上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………………ッ!」
『優勝! シェテ選手ぅぅぅぅぅぅ!!!』
『『『『『『うぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』』』
「やりましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『大判狂わせですね。会場も大いに興奮しています。』
『いやー、いいしあいだったね。きてよかったよ。』
『あぁ、いいものが見れた。こればっかりは、スライムフェチに感謝だな。』
『はははー、もっとうやまいたまえ!』
『い・や・だ!』
『そんなー。』
『お二人共、ブレませんね! それよりシェテちゃん、かっこ可愛い!』
『あなたも、普段と変わりませんよ。それでは、引き続き、表彰式を行います。』
◇
『それでは、獣王様より、優勝者に激励の言葉です。』
「うむ。良き試合であった! 俺も久方ぶりに血が昂ったぞ!」
「ありがとうございます!」
「ハッハッハ、その強さを称え、獣王国の秘宝の一つ。かつて、“四神獣”の一人であり、俺の戦友だった“銀氷のコルド”が使っていた。【銀紫手甲 銀氷・紫闇】を授けよう。」
「これが…………(お父さんが使っていた。)ありがとうございます!」
「うむ。では、これにて第500回獣人闘技大会を終わりとする!」
『『『『『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』』』』
長いようで、短かった闘技大会が終わった。
フィー&シェテの新武器説明
【碧流刀 アル・レイン】
備考:かつて、アレクル聖王国を創った。シルグ・アレクルが使っていたとされる刀。使い手は音速を超え、雨を切り裂く事で濡れることがなかったと言われている。
武器スキル:【疾風之脚】【天刃】【不壊】
【銀紫手甲 銀氷・紫闇】
備考:銀色の氷を纏う右、紫色の闇を纏う左。二つの力を宿す手甲。装備者が未熟な場合、身体が氷に変わったり、心が闇に飲み込まれたりする事があると、言われている。
武器スキル:【銀氷変換】【闇喰】【不壊】
【疾風之脚】
自身の〔SPD〕が100倍になる。魔力を消費して、空を駆ける事が出来る。
【天刃】
斬撃をある程度操れる事が出来る。
(斬撃を飛ばす、その場に留める等。)
【銀氷変換】
右腕・拳に纏った氷を“銀氷”に変換する事が出来る。
【闇喰】
左の手甲から闇属性の魔力を飛ばし、周囲のモノから魔力を奪う。
【不壊】
壊れる事がなくなる。