決勝戦開始
六十六話目です。
『キタキタキタキター、第500回獣人闘技大会トーナメント。決勝戦!!!』
『ゲストは引き続きらぷたさん、そして。』
『ぼくのおともだちをよんだよー。』
『スライムフェチに連れ去られた。』
『Sランク冒険者、“灰嵐”のアッシュさんです。』
『ふぉぉぉぉ! 生ける伝説に会えるとは! もう死んでもいい。』
『じゃあ死んでくれ、テンションがウザい。』
『ひどい!』
『こんな感じで、イジればいいんだろ?』
『えぇ、ばっちりです。』
『そんなかんじで、おーけー。』
『三人がかりでイジられるの!? 可哀想な私!』
『自分で自分を可哀想とは………………ヤバいな。』
『ヤバいですね。』
『やばいね~。』
『ちょっ、何がヤバいの!?』
『『『全部?』』』
『全部!? 疑問系!? 私はいつからイジられキャラになったの!?』
『『『生まれた時から! (ビシッ!)』』』
『力強く断定された!?』
『決勝戦の対戦カードは、ダークホースシェテ選手。』
『シェテちゃ~ん、が・ん・ば・れ・~!』
『シェテちゃんは、きんせつとっかのとらぞくだよ~。』
『5回連続優勝、優勝候補筆頭、獣王国の英雄、グレファン・シグ・ダルグル選手です。』
『『『『『『うぉぉぉぉぉ!!!』』』』』』
『たしか、冒険者でいえばSランクに匹敵する実力だったな。犀族の獣人で、棒術を使いこなす強者でもある。知り合いの戦闘狂なら、嬉々として勝負を挑みそうだな。』
『かのじょなら、わらいながら、しゅういをはかいしつつたたかうだろうね。』
『シャレになりませんねソレ。』
『そんなこんなで、試合開始!』
◇
これに勝てば優勝、負けられない、でも相手は………………。
身長3メートルはあるだろう巨体で、仁王立ちしていた。
強い、一目で分かる、それにあの英雄と戦う事になるなんて…………………足が震える。
「娘よ、棄権するか? 逃げる事は恥じではない。」
「いえ、ここまで来たんです。最後まで戦います。」
「ふむ。では、始めよう!」
両者共に構える。
先手必勝です!
「【魔拳:爆裂】!!!」
魔力を纏ったシェテの拳が、グレファンの腹に当たり、拳に纏っていた魔力が爆発する。
「………………な!?」
爆発による土煙がはれると、仁王立ちしたまま無傷のグレファンが立っていた。
「その程度か? ふんっ!」
「ぐっ!」
シェテは、グレファンの棒の一撃を、両腕をクロスさせ受け止めようとして、吹き飛ばされる。
「その程度の威力では、我が肉体にかすり傷一つつけられぬ。」
「これならどうです【岩砕弾】!」
「無駄だ、【仙術:双山壁】」
岩の弾丸を、岩の壁が防ぐ。
「次はどうする?……………む? 何処に行った?」
「ここです! 【氷脚:冷槍】!!」
グレファンの足元に屈みこんでいたシェテが、冷気を纏った足を、顎に向かって繰り出す。
「ぐっ! 今のは効いたぞ、ふんっ!」
「はぁっ!」
グレファンの棒の一撃と、シェテの拳がぶつかる。だが、シェテはすぐに受け流すように拳を滑らせ、棒を避ける。
「【吸闇】、【鉄拳:暗闇】!!」
「“獣人武術”【覇拳】」
拳と、拳がぶつかり合い火花が散る。
「強いな、その強さを認め見せてやろう。我が【変化】を…………………【変化】!」
―――――金剛犀
「ッ!」
「ゆくぞ! 【風蹄】【雷衣】、はっ!」
グレファンが消え、その瞬間寒気を感じたシェテは、その場から飛び退く。
「がっ!」
音速を超えた速度で通りすぎたグレファン。その際発生した衝撃波で、シェテは吹き飛ばされる。
「まだ、行くぞ!」
「くっ! 【闇沼】」
「無駄だ。」
自信を中心として【闇沼】を形成した、シェテだが。
「ッ!?」
【闇沼】をものともせず突進して来たグレファンの一撃を、シェテはモロにくらい吹き飛ばされる。
「娘、お前の負けだ。」
「負けて………ません。まだ…………戦えます。」
ボロボロになりながらも立ち上がるシェテ。
「ぶっつけ本番ですが、いきます。【変化】」
シェテも、己の奥の手を使った。
次回は、シェテの過去の解決話です。




