獣人盗賊三兄弟、再び。
五十九話目です。
あの三人が、一話はさんで再登場!
「王都まで後、どれくらいだ?」
村から出発した俺達は、ブライルの王都を目指して歩いている。
「そうですね~、後十日ぐらいですかね?」
「食べ物足りるかな?」
「途中に村か何かあればいいな。」
ぽかぽか陽気の中、雑談をしながら歩いていると。
「いやー、あの連中やばかったな。」
「そうでヤンスね。盗賊として一回りも、二回りも、上でヤンシたね。」
「……………………………?」
「だよな~。王女様を誘拐するなんて、王家大好きな俺達にゃ、出来ねぇわ。」
「…………………………!?」
「え? 『王女様が誘拐されたなんて聞いてない? 助けに行く。』って、何言ってるでヤンスか、殺されちまうでヤンスよ!?」
「そうだ! バカな事言ってねぇで帰るぞ!」
「いや、助けに行けよ!」
何見捨てようとしてるんだ、コイツら。
「そうです! 酷すぎますよ!」
「最低。」
「てめぇらはいつぞやの…………………うるせぇ! 俺達なんかが本格的な盗賊に勝てるわけねぇだろ!」
「んじゃ、案内だけでいい。」
「案内だけならいいんじゃないでヤンスか? アニキ。」
「ちっ! しかたねぇなぁ、ついてこい!」
◇
「そういや、お前ら名前なんていうんだ?」
「あん? “ジルバ”だよ。」
「オイラは、“リグ”でヤンス。」
「………………………………。」
「えぇと、『自分は、“フェノ”っていいます。』って、言ってるでヤンス。」
「なんで、分かるんだ?」
「なんとなくでヤンス。」
「へぇ~……………………って、なんとなくかよ!? まぁいいか、俺は“レイ”だ。」
「“フィネア”、フィーでいい。」
「私は、シェテです!」
「そうか……………………っと、見えたぞあの洞窟の中だ。」
「あそこですか。あれ? フェノさんは?」
ん? そういやいないな……………………って、アイツ一人で乗り込んでるぞ!?
「まずい! 追うぞ!」
◇
洞窟の中に入ると、フェノのヤツが盗賊達をちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた。何者なんだ? 鑑定っと。
■ ■
【名前】フェノ
【種族】獣人:狼族
【年齢】16
【Lv】250
HP500000/500000
MP10000/10000
STR 600000
VIT 500000
INT 500
MND 10000
SPD 300000
DEX 300
LUK 測定不能
ノーマルスキル
【格闘術】【体術】【仙術:水】【仙術:風】
【仙術:雷】【魔力纏:風】【魔力纏:雷】
【物理攻撃耐性】
エクストラスキル
【魔力纏:複】【剛力】【剛身】
ユニークスキル
【変化スキル:燼滅狼】
種族スキル
【野生の勘】【獣化】
■ ■
何コイツ!? めちゃくちゃ強いじゃん。
「なんでアイツに俺達襲わせなかったんだ?」
「フェノは、俺ら二人に付き合ってるだけで、いいやつでな悪いことできないんだよ。」
「盗賊稼業が成功したこと、一度もないでヤンスし。」
「お前ら盗賊向いてねぇよ。」
「そこにもいたか! 【ファイヤーボール】!」
「リグ!」
「はいでヤンス!」
「「【二重仙術:双岩盾】!!!」」
地面からつきだした岩の盾が、相手の魔法を防ぐ。
「なっ!?」
「いくぜ! 【仙術:鎖岩縛】!!!」
岩の鎖が、相手の動きを封じる。
「くらうでヤンス! 【仙術:岩捻拳】!!!」
地面から、捻るように繰り出された岩の拳が、相手を、岩の鎖ごと吹き飛ばす。
「「大勝利!」」
「お前ら、冒険者とかやれよ。」
◇
■フェノ■
「……………………! (くらえ!)」
「なんだこい……ぐぺっ!」
自分は今、王女様を探しながら盗賊達を殲滅している。
「このやろ! ぐぴゃっ!」
「……………………。 (邪魔するな。)」
倒し損ねたヤツらは、兄さん達が倒しているだろう。あの二人も、悪いことなんかやめればいいのに、柄じゃないんだから。
「てめぇ、俺の部下をよくも!」
どうやら、盗賊の親玉のようだ。
「ぶっ殺してやる! 【変化】!」
「…………………! (【変化】か………なら、【変化】!)」
―――――――燼滅狼
「て、てめぇも【変化】が使えるのか。」
「………………………! (“獣人武術”【崩拳】!)」
「なっ!? がはっ!」
たいしたヤツじゃなかったみたいだ。それより王女様はどこかな?
◇
いた! とりあえず、牢屋の鍵がないから、壊して。
『バキッ!』
「……………………。 (もう大丈夫ですよ。)」
「助けていただき、ありがとうございます。何かお礼を……………」
「…………………。(そんなもの要りません、当然の事をしたまでです。ご無事でなにより。)」
「なんて素敵な人なんでしょう。(ぜひ、婚約を………………)」
最後の方に、何か言っていたようだけど、よく聞こえなかった。何を言ったんだろう?
フェノは、獣人側主人公ポジです。