脱出と【暴食】
五十一話目です。
俺の中にナニカが流れ込む感覚がする。そして、周囲の風景が森に戻る。
「レイ!」
「師匠!」
「レ〜イ!」
「レイくん!」
「レイく〜ん、無事だったんだね!」
よしよし全員無事のようで、なにより、なにより。
「何? 何をしたの!?」
どうやら、お怒りのようで。
「俺の“奥義”で、君が創った空間を吸収したんだよ。」
「そ、そんな事できるわけ…………………」
「俺も初めて使ったけど、うまくいくもんだな!」
いやー、思いつきで使ったけど、ちゃんと空間だけ吸収できてよかった。
「あ! お嬢様こんな所に、おーい! お嬢様いたぞー。」
「本当? よかっタ。」
「「これで、怒られずにすむ〜♪」」
なんか、可笑しな連中が来たな、真っ白な仮面をつけたスーツの男、ピエロみたいなヤツ、双子の女の子…………………うん、変人だな!
「ん? 他にも人が…………………は! まさか、お嬢様この人達に迷惑をかけていませんよね?」
「少し遊んでもらっただけ。」
「あぁぁぁぁ!!! やっぱり、ルゼ様に怒られてしまうじゃないですか!」
「だって、詰まらないんだもん。」
「はぁ………………………すみません、お嬢様がご迷惑をおかけしたようで。」
「いや、まぁ、というか誰?」
「よくぞ聞いてくださいました! ワタシは“カゲ”の“ふぁんとむ”!」
「ワガハイは“ミチ”の“くらうん”!」
「ウィ達は!」「“フシギ”の!」「「“とりっく・すたー”!」」
「「「「四人合わせて…………」」」」
「「「「べへお嬢様護衛部隊!!!」」」」
うん、きっとたくさん練習したんだな。
「何が護衛部隊よ、四人しかいないし、自分の身体を犠牲にしないと守れないくせに。」
「本当の事を言われると辛いんですが…………」
「というカ、ワガハイ達の姿また勝手に使ったりしてませんヨネ?」
「感謝しなさい! 弱いアンタ達でも、私の空間ではかなり強いんだから!」
「やっぱり使われてるね。」「ウィ達に人権はないんだ。」
なんか、護衛部隊の人達落ち込んでるな。
「とにかく! 宿に戻りますよお嬢様、ルゼ様にご報告しないと…………………お説教があると思うので、覚悟していてくださいね。」
「うっ……………わ、分かったわよ。」
どうやら、帰るみたいだな。
「あの、お詫びをしたいノデ、是非ワガハイ達のとまっている宿へいらしてくだサイ。」
「どうする?」
「「「「「いいんじゃない。」」」」」
「ではでは〜♪」「ご案内〜♪」
◇
「“ふぁんとむ”、“くらうん”、“とりっく・すたー”…………」
「「「「はい。」」」」
「3ヶ月の減給。」
「ノーーーーーーーー!!!」
「そ、そんな、家族になんて言えバ……………」
「「この世の終わりだーーーーー!!!」」
護衛部隊の皆さんがorzしている。可哀想に。
「べへは後でお説教、分かったわね。」
「………………はい、お姉様。」
「ふぅ、妹がご迷惑をおかけしたようで、ごめんなさい。」
べへのお姉さんであろう人に謝られる。お姉さんは、黒いスーツを着た、すこし茶色がかった金髪に、青色の瞳をした人だ。
「お礼といってはなんだけど、ご馳走するわ。」
◇
「うわー! これ全部ですか!」
すごく多い、長い机三つ分にたくさんの料理が置かれている。
「いえ、皆さんのお料理は右端の机の料理だけです。」
「「「「「「え?」」」」」」
じゃあ、後の二つは? 俺のそんな心の声を感じ取ったかは分からないが、答えてくれた。
「後は全てルゼ様が食べる料理です。」
「「「「「「は?」」」」」」
「ふぅ、ご馳走さま。」
「「「「「「早すぎだろ!!!」」」」」」
気づいたら、二つの机にあった料理がキレイに無くなっていた。
「あら? 皆様お食べにならないの? ならワタクシが…………………」
「「「「「「いえ! 大丈夫です!」」」」」」
「そう? ではごゆっくり。」
危ねー、全部食べられるところだったよ。
◇
「いやー、美味しかったですね!」
「本当にな。」
にしても、あのルゼって人なにものなんだろうか?
「あのルゼさんって何者なんだい?」
おお、俺が聞きたい事を聞き出してくれるとは、ネア、ナイス!
「あぁ、皆さんも聞いた事あると思いますが、ルゼ様は【暴食】の魔王です。」
なるほど、それであの量を、あの速度で食べれたのか。
「へぇ、あの人が【暴食】なんだ。」
暴食か…………………魔王は二人目だな。
ネアを見ながらそう思った。
【暴食】初登場、食べる量、速度以外はできる女です。
護衛部隊の四人は、現実ではむちゃくちゃ弱いです。ただし、なかなか倒れない。