【賢者】VS【舞闘王】
三十二話目です。
マコト視点です。
場所と時間は変わって、レイ達がネアと出会った2時間ほど後。“アイン王国”〔不毛の大地〕
「来たか。」
「要件はなんだ?真。」
「変わったよな、お前。」
「? なんの事だ?」
「覚えてるか?“レーネ村”の事。」
「あぁ、覚えてる。」
少し前に、魔王軍に攻められた村の事だ。
「あの時、お前は“間に合わない”からと、村人を見捨て、別の村で撃退したらしいな。」
「あぁ……………俺も辛かったが、ああするのが一番だった。」
「それは、俺も分かるさ、別の魔王軍がお前が守った村に、向かっていたらしいからな。」
「あぁ、その通りだ。」
「だがな、違うんだよ。」
「何がだ?」
「いつものお前なら、“間に合わない”なんて事考えない。0.1%でも可能性があれば助けに行く。一人の命と、大勢の命を天秤にかけたりしない。全て助けようとする、そういうヤツだ。」
「何が言いたい?」
「お前は、誰だ?」
「…………………………。」
「この世界に来てから、ずっとおかしいと思ってた。」
「…………………………。」
「どうやってレイの仕草や、癖をコピーしたのか分からないが、根っこのところは違う。」
「…………………………。」
「お前はいったい、レイの身体で何をするきだ!」
「はぁ、こんなに早くバレるとはな。」
「ッ!? テメェ!」
「我は、この世界を我が物にする。その前に、にっくき【怠惰】を殺す。だが貴様も殺さないとな。」
「そうはいくかよ、さっさと、レイの身体から出ていってもらおうか!」
「………………貴様まさか。」
「?」
「ホモか!」
「ちげーよ!」
「悪いが、近づかないでほしい。」
「ちげーって、言ってんだろ!」
「ならいい。」
「あぁ、くそっ!先手必勝だ!【フル・バースト】!!!」
「遅い。」
「ちっ!これならどうだ、【ダークプリズン】」
「閉じ込められたな。」
「【メテオ】」
雲を裂き、隕石が落ちてくる。
「殺すきか!」
「レイの身体が、この程度で殺られるかよ!」
『ドゴォォォォォォォォォン!!!!!』
轟音と共に隕石が落ちる。
「気絶したかな?」
「フハハ!残念だったな!」
「ちっ!駄目か、なら【スターダスト・レインボー】!!!」
“虹色に輝く流星群”が降りそそぐ。
「ふん!【覇天龍閃撃】!!!」
虹色の流星が砕かれる。
「何ッ!?」
「無駄だこんな攻撃、次は、貴様の番だ!」
「くっ!【テレポート】」
「そこだ!!!」
「ぐはっ!何故場所が?」
「空間の歪みが分かれば、容易いこと。」
「くそっ!【転移】」
真の姿が消え、気配も消える。
「ちっ!逃げられたか。………………まあいい、アイツの言う事を信じるヤツなど、どうせいやしないのだから。クックック、ハーハッハッハ。」
去っていく、レイの身体を乗っ取った誰か。そして…………………
「そんな、柳くんが…………………。」
◇
あぁ、くそっ!アイツを助けられなかった。次はもっと強くなって。
「うわぁっ! 急に人が現れましたよ!」
「空間魔法。」
誰かいるのか?
「え!? 空間魔法って、急に人が現れる魔法なんですか!」
「うーん、なんか違う。」
なんか、アホっぽいな。
「あっ!師匠!見て下さい、急に人が現れたんです!………………………え?知り合いなんですか?」
俺に、師匠やってる知り合いなんて、いないんだが。
「分かりました!」
何が分かったんだ?
「おい、フィー、これ使うぞ。」
「いいよ。」
「にしても、相変わらずの、ネーミングセンスだな、なんだよ【痛いとこナクナールくん】って。」
「なんでも治るポーション!」
「なら、【パーフェクト・リカバリーポーション】で、よくないか?」
「微妙。」
「………………まあいいや、ほいっと。」
なんだ?痛みが。
「よお、大丈夫か? 真。」
声の方を向くと、虎耳美少女と、銀髪美少女がいた。
とりあえず、声をかけてきた、虎耳美少女に話しかける。
「えーと、どちら様?」
「俺だよ、レイ、“柳 霊”だ。」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
今まで生きたなかで、一番驚いた。
【テレポート】は、目視範囲(目で見える範囲)で転移可能。
【転移】は、自分が、行ったことのある場所に転移可能。