襲撃
遅くなりました!今回も宜しくお願いします!
「アルフレートッ!」
「アリス、来たか。薬を飲め。こちらから仕掛ける。」
「でも...!」
「あの狼人か?」
「うっ...。」
図星だったアリスはアルフレートから目を逸らし俯く。
「勘違いするな。私達はただの使い捨ての道具だ。とっくに未来は上の言う『神』に毟り取られている。」
「...私に、未来なんて無かったんだね...。」
「...そうだ。だが、私は今少し嬉しいのさ。」
アルフレートは少し笑いを漏らす。その様子に、三人は顔を見合わせる。
「私が死ねば神に不満のある彼ら...『死神の鎌』が立ち上がってくれるだろう。追い詰められた神や枢機卿、そして教皇の怯える顔を想像するだけで面白い。」
「そうだな!"未来を生きれなくても未来を託す事は出来る"だな!」
「それ教典の言葉だけどね〜。」
「そうだ、私達の死が彼らを導くのだ。」
死を覚悟したとは思えない仲間の表情を見てアリスは自然と手を握り締めていた。
「私の...私の死があの子を導けるのなら...。それが...生きた証になる...!」
「アリス...カイト...メルテ...逃げても、良いんだぞ。」
アルフレートは疲れた笑いを浮かべながら、そう呟く。
「何言ってんだよアルフレート!俺達は逃げたら死んじまうだろ?魔法陣を心臓に刻まれてんだ。逃げ場なんて無いさ。」
「そうだったな...すまない。...よし、では行こう。消耗品にも出来る事があるという事を見せてやろう!」
「ああ!」
「やってやろうか〜。」
「...やるわ。」
アリス、カイト、メルテの三人は各々の武器を取り一斉に粉薬を飲む。
「エク、ごめん...!」
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「アリス...何でこんな事を!」
建物の屋上に立つアリスは無言で持っていた長剣をこちらに向かって投げる。不意を突かれ防御するのが遅れた俺は飛んで来る剣をガントレットでなんとか受けるが、余りの衝撃に吹き飛ばされる。
「セイエイッ!...貴様ァ!"墜星光条"!!」
アスィの大剣から放たれたビームをアリスは瞬時に躱し、地面に降りて来る。俺はアスィに抱き起こされる。
「セイエイ!大丈夫!?怪我は!?」
「うおおっ、大丈夫大丈夫どうどう。ちょっと油断しただけさ。それより...。」
地面に降りたアリスは長剣を持った両手をだらりと下げたまま、こちらを見詰めている。
「アリスっ...何でこんな事をする!」
「私の死が彼を導くの。」
「何を言って...クソッ!」
俺の言葉を遮る様にアリスは両手の長剣を投擲して来る。今度は回避出来たが、投げられた長剣は地面に深く刺さり土を焼いている。
「あれは...ワイヤー?」
よく見れば長剣の柄には細いワイヤーが付いており、それはアリスの付ける鎧の腕部分に繋がっていた。
「あの膂力での近接攻撃も怖いのに剣を投げてくるなんて...!」
「死ねええええ!!」
「な、なんだ!?うおっ!!」
ワイヤーを戻し再び長剣を構えるアリスから一旦距離を取ろうとすると、背後の建物から剣を持った少年が飛び掛って来る。間一髪斬撃を避け、その少年からも距離を取る。
「チッ...!クソがッ!」
「大丈夫かセイエイッ!」
「かかったぜえ!!アリス!行って来い!」
「何?良いだろう。来いッ!」
俺の元に来ようとしたクリスさんにアリスが凄まじいスピードで迫る。クリスさんの大剣とアリスの持つ赤熱した長剣二本がぶつかり、激しい金属音が鳴り響く。
「私と張り合うか...!」
「行けえッ!敵を殺せ!"ユヴェーレン"!!」
ウェーブの掛かった髪の少年は叫び声と共に左手のタワーシールドから宝石の様な物を飛ばす。射出された宝石はクリスさんを囲うように高速で飛び回る。
「クッ!何だこれは!!」
クリスさんは宝石から放たれる無数の光の弾を避けながらアリスの剣を受け、隙を見つけ反撃している。
「クリスさん!今助けるぞ!」
「...せない。」
「...!ガングさん!後ろぉ!」
「なんだ!?...うおお!?」
クリスさんの援護に向かおうとしたガングさんの後ろから短髪の少年がダガーを振りかざし猛然と襲いかかって来る。高速で繰り出される攻撃をガングさんは槍で凌ぐが、徐々に押されていく。
「なんだこの馬鹿力は...!一体どんな手品使ったッ...!」
「援護する...!」
「メイファか!助かる!」
メイファさんの援護のお陰で短髪の少年は一旦ガングさんから距離を取る。
「うおおお!!」
「うぜぇ!!誰だか知らねえが死んでろおおおお!!」
「やっぱりだ...! クリスさん!その宝石はコイツが操作してます!」
「チイイッ!!大人しく死んでれば良いんだよお!?行けよお"ユヴェーレン"!!敵を焼き殺せェ!」
「不味い...アレは流石に...!」
俺は盾を構える少年に向かって攻撃するが、全て盾で防がれた上に先程の宝石が全てこちらに向かって来るのが見えた。
「見えたっ!」
「アスィ!助かった!」
「"ユヴェーレン"を切っただと...!?だがなあ!たかが1つ2つ切ったぐらいで...調子に乗ってんじゃあねえ!!リフレクトォ!」
アスィが宝石を数個一度に斬り裂いた事に少年は少し驚いた様子を見せたが、直ぐに宝石に別の命令を出す。
「動きが変わった...?」
「何よこれ!やりにくい!」
宝石は俺とアスィを囲うような配置を作り、宝石が互いの攻撃を反射し合い濃い弾幕を張る。
「お前ら邪魔なんだよ!」
「くっ!」
少年は宝石の攻撃などお構い無しに突撃して来る。繰り出される一撃は重く、宝石の攻撃を躱しながらでは反撃もままならない。
だが、やはり彼女は違った。
「このっ!」
「チッ!うぜぇ!!てめぇから先に焼いてやるよ!!」
少年は自身に剣で攻撃して来たアスィを盾で押し返し、宝石をアスィに集中させる。
「アスィ!」
「...大丈夫!コイツは...私が仕留めるッ!」
「ゴチャゴチャうるせえんだよ!焼けろォ!」
アスィは宝石から放たれる光弾を的確に避け、かつ間合いに入った物から破壊しながら徐々に距離を詰めて行く。
「これで終わり!」
「クソがあッ!」
アスィは少年に大剣での攻撃が届く距離にまで近付く。
「...とでも思ったかバカが!カイトォ!やっちまええ!」
「...!」
「アスィ!後ろだ!」
ガングさんと交戦していたはずの短髪の少年はいつの間にかアスィの後ろに移動していた。
「ふん!」
「何?」
アスィは左手で腰の長剣を抜き後ろを突く。少年はそれを避けるために体を逸らす。それを確認したアスィは軽く跳躍し、ウェーブの掛かった髪の少年の持つ剣の上に乗る。
「めんどくせえ!!」
「...ッ!」
アスィは剣から飛ぶと、空中で一回転し俺の元に戻って来る。
「ごめん!仕留められなかった!」
「俺も援護出来なかった!次は二人で行こう!」
「うん!」
「いやあすまねえセイエイ!アイツ素早くてよ!」
「三人で対処しましょう!」
俺、アスィ、ガングさんは再び少年二人と対峙する。
遅くなります。気長にお待ち下さい...!