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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
安曇清英編 第2章「七剣姫編」
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来訪者

遅くなりました...何か書けへん(言い訳)


今回も宜しくお願いします!

燃えている。


生の大半を過ごした家が。


実りを齎す畑が。


親友が、愛する両親が。


全てが赤に染まる光景を前にしても、少年は動けない。何も守れないこの体に宿るのはただ重く黒い、触れれば焼け爛れる様な何かだけ。


「やめろッ!」


朝、エクリジットは悪夢で目が覚める。


「...忘れられるわけ、無いよな...。情けない...いつまでも過去に引っ張られるだなんて...。」


二年前、自分の故郷を襲った盗賊団。そこで自分は親を、友を、故郷を無くした。友と親を殺した元凶は死んだが、制御出来ない力での仇討ちなんて何も感じない。

この力は自分の生きる意味を消した。


(だから僕は冒険者に...違う。僕は..."死にたい"のか...?)


着替えながらそんな事を考えてみたが、直ぐに首を横に振ってその考えを振り払う。


(皆の分まで生きるって決めたのに僕はまた!今は僕が死んだら悲しむ人が居るんだ!そう簡単に死んじゃダメだ!)


「よしっ!今日も特訓だ!」

「エクちゃん、朝ごはん出来てるけど食べる?」

「う、うん!...もしかして、見てた?」

「エクちゃん珍しく悩んでる顔してたからどうしたの?って聞こうと思ったんだけど、その様子なら大丈夫だねえ。」

「僕は大丈夫だよおばあちゃん。朝ごはん出来てるんでしょ?食べよ! 」


朝食を済ませて家を出ると、三人の見慣れない人間が居た。この村は初めてなのか、辺りをきょろきょろしながら歩いている。


「この村は初めてですか?」


滅多に無い来客だった。つい声をかけてしまう。


「君は...この村の子?」

「はい。」

「私達は見ての通り冒険者。少し息抜きしようと思って歩いてたら、この村があったから寄ってみたんだ。」


自分と歳はそう離れていないだろうこの少女も冒険者らしい。長めの金髪に美しい容姿。これなら受付嬢をした方が良いのにと考えてしまう。


「宿ならあそこに。でもちょうど団体の冒険者の方達が居るので空いてるかは分かりません。その時はまた僕に聞いて下さい。」

「ありがと。それじゃあまた。」

「あっ...。」


(気のせいかな...今目に何かあった気が...。)


「最悪野宿だな。テントを持ってきて良かった。」

「野宿はやだな〜。材料に虫が集るよ〜。」

「そんな事言ってないで、さっさと行くよ。」


(興味本位で人の事あれこれ聞くのは失礼だよなあ...。でも...気になる。)


「おはよう、エクリジット。」

「あ、おはようございますセイエイさん。ちょうど今向おうと思ってたところで。」

「その事なんだけど、今日は無しになっちゃって。」

「え。何かあったんですか?」

「いや本当に俺の都合で中止して申し訳無いんだけど...。実は...。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日はどうしようか...そろそろ一対一でもやるべきかな?」

「セイエイ!」

「はい!?どうしたの?」

「今日は二人でこの前の川に行きましょう。いや、行くわよ。」

「なんで突然。」

「だってこの前デートしてくれるって言って出来てないじゃない!」

「あっ...そうだったね。」

「私水着も買ったのにずっと使えないし...本当は海に行きたかったけど無理じゃない?だから今日はあの川で水浴びするの!」

「うーんでもなあ...。」

「エクにも休息は必要よ!ていうかほぼ毎日じゃない!」

「そう...だね...。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「という訳で。」

「ははあ。って...大変そうですね。」

「約束を守れてない俺が悪いんだ...。俺はもう行かないといけないから、今日は休んでて!」

「は、はい。...休むって言ってもなあ...。」


目的を失ったまま当ても無く村をぶらぶらと歩いていると、先程会った少女と会う。彼女はこちらを見ると小走りで近付いて来る。


「また会ったね。えっと...。」

「エクリジットです。貴女は?お仲間の方は居ないようですけど...。」

「アリス。あいつらは空いてた最後の部屋に泊まるけど、私だけ部屋が無くて。村の方の家に泊めてもらうにも余所者がそういう事をするのは気が引けて。」

「そういう事なら僕の所に来て下さい。祖母と住んでいるんですけど、部屋が多くて。」

「さっきのは勢いだけじゃなかったのね。」


アリスと名乗る少女はそう言うとクスリと微笑む。


「じゃあ、お世話になろうかな。」

「疲れてるでしょうし、直ぐに行きましょう。荷物だけでも置きたいでしょ?」

「それじゃあお言葉に甘えて。」


アリスを連れ、自分の家に向かう。荷物を持つと言ったが、これ以上は世話を掛けられないと言われ断られた。


「おばあちゃん、ただいま。」

「今日は早いねえ...あら。その娘は?」

「アリスです。冒険者をやっています。」

「アリスさんだけ宿の部屋が一杯で泊まれなくてさ。だから部屋を一つ貸したいんだけどいいかな?」

「大丈夫よ。しばらく掃除して無くて埃が多いけどごめんねえ。」

「大丈夫です。そういうのは慣れていますから。」


(少し違う気がする...。)


三人で二階に登り、エクリジットの部屋の隣の部屋に入る。


「じゃあこの部屋に泊まりなさいね。」

「ありがとうございます。」

「私はやる事があるから行くけど、くれぐれも可愛いからって襲っちゃ駄目よエクちゃん?」

「そんな事しないよ!大丈夫だから!」

「あ、男の子だったんだ...。」

「え?」

「それじゃあね。エクちゃんをよろしくねアリスちゃん。」

「はい。お気を付けて。」


降りて行く祖母をアリスは手を振り見送る。


「ま、まさか女と思われてただなんて...!」

「ごめん。全体的に可愛いから間違えちゃった。」

「そ、そうなんですか。」

「そんな事より、敬語は無しだよ。なんだっけ?ひとつ屋根の下の仲になったんだから。アリスでいいよ。私もエクって呼ぶから。」

「はい...じゃなくて...アリス。」

「うん合格。立ち話より部屋に入ろっか。荷物置きたいな。」


アリスはそう言うとふふふと微笑む。その笑顔にはどこか儚い美しさが見える。少し見入ってしまうが、ふと違和感に気付く。


「その、アリスの出身は何処かな?」

「育ちはアスカントだよ。生まれた所は覚えて無い。なんで?」

「さっき目に模様みたいなのが見えてさ。遠い所の出身なのかなって気になって...。」

「...。」

「いや、気を悪くしたなら答えなくて良いんだ...。ごめん。」


置いた大きなケースを開けようとしていたアリスは固まり、真顔で振り向く。だが直ぐに表情を笑顔に戻す。


「そうだった?目に模様なんてある種族いたかな?」

「気のせいかな...失礼...だったよ。」

「気にしてないよ。私は疲れたから少し休むね。」

「分かった。夕食の時は呼ぶよ。」

「ありがと。」


アリスの部屋を出て自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がる。やる事も無いので昼寝でもしようと考えるが、なかなか寝ようと思っても寝れるものでも無い。


(さっきのアリス...少し怖かった...。確かにアスカントとの戦いもあったし、あんな事聞くのは失礼だったな...きっと他の場所でも色々あったんだろうな...。)


自分の言動を悔いながら悶々としている内に、いつしか意識は落ちていた。結局、この後逆に自分が起こされ夕食に行くことになる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「待たせたな。...ん?アリスは何処だ?」

「アルフレート。アリスなら村の民家に泊まるって言ってたぞ。」

「そうか。場所は?」

「やべっ、そこまでは確認して無かった。」

「全く...。薬を渡しておく。何時でも飲めるようにしまっておけ。...ターゲットは既にこの村に居る。」


アルフレートと呼ばれた男性の絞るような声を聞いたウェーブのかかった髪の少年は本から顔を上げる。


「やっぱり。でも今までで一番頭が痛かったから相当だよ〜。」

「メルテ、敵の戦力は測れたか?」

「大体は出来たけど...確実に勝てる方法を取るなら、アリスに限界まで強化処置をしないと負けるよ。油断でもすればカイトも僕もまとめて死ぬ。」

「アリスはもう限界だ。抑制と解放をし過ぎた。上の老害共め...。」

「今も頭が痛いんだ...。」

「明日アリスとも合流し作戦を練る。それまでは休め。俺も寝る。」

「アルフレート...あと一つ良いかな?」


メルテと呼ばれた少年は神妙な面持ちで小さく呟く。


「何だ。」

「...修正なんだけど、多分僕ら全員を最大まで強化しても負ける。アリスはもう使い物にならなくなると思う。」

「何が言いたい...?」

「僕ら多分捨て駒にされたんだと思う。削れれば良し、削れなくても本国..."あいつら"に損害は少ない。僕達みたいなのは吐き捨てる程居る。」

「...心配するな。ターゲットだけを確実に仕留めて帰る。俺も上のやり方は気に食わない。」

「ならいいんだ。それじゃおやすみ〜。」

「...ああ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あのアリスっての何か気に食わない...!セイエイの言う「バブみ」?って言うのも含めて気に食わない!


次回『母の温もり』 母性ぐらい私にもある!

気長に待って頂ければ...!

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