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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
安曇清英編 第2章「七剣姫編」
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震える村

ここ最近すぐ眠くなります。それなのにやりたい事はあるという。

大変遅れましたが今回も宜しくお願いします!

「そら。少しは手荒に扱っても大丈夫なようにはした。壊しても簡単に直せる筈だ。」

「有難う御座います。」

「お代は...」

「お金、置いときますね!では!」

「おおい!?...ったく...倍近いじゃねえか。本当に持ってたのか...。」


俺は改良された鎧と大剣をせっせと運び、宿に戻る。


「おー!何か色々変わってる!」

「使い方は後で教えるよ。あ、ヨハンさん、有難う御座いました。」

「よい。我が子孫の友となれば助けるのは当然だ。金など幾らでも作れる。......魔力があればな。」


アスィは改良したての鎧を着てくるくると回っている。


「どうかな?邪魔じゃない?」

「何に使うかは分かんないけど、今の所は大丈夫よ!」

「セイエイ!準備は出来たか?早くこーい!」

「了解です!行こっか。」

「うん。」


俺とアスィが宿屋の部屋から出て入口に行くと、既に皆揃っていた。


「遅いぞ。」

「クリスさん達が早いんです。さあ行きましょう。」

「ああ。不快感が少し強くなって来た。急ぐぞ。」


俺達はクリスさんの手紙を持たせた使者をアルハムに送った後、王都を出発した。手紙の内容は分からないが、今後に関わることらしかった。


「まったく...デート出来なかったじゃない。」

「今度どこか行こう。勿論、二人きりで。」

「うん!」


アスィと約束し、暫く歩いた後クリスさんが思い出した様にアルビオに質問する。


「そうだ。聖騎士達は何時国を出た?」

「第二騎士隊の二日後です。情報が正しければ、『ポリュージョン』が出ます。」

「不味いな。アレは制御が効かねば魔物と同じだ。早急に向かわねばならんな。」

「あの、その『ポリュージョン』というのは?」

「俺も聞きたい。そいつらは聖騎士なのか?」


俺とガングさんでアルビオさんに問うと、アルビオさんは周りを窺った後に小声で喋り始める。


「彼らの存在を普通の騎士や一部の聖騎士は知りません。彼らは幼い時から戦闘訓練と洗脳を受けており、身体能力を極限まで強化する為に魔法や違法な薬品も使われています。」

「なんだそりゃ。」

「精神が破綻しているのでまともな連携も取れません。私も戦った事が無いので簡単に行くかも分かりませんが、強敵であることに変わりはありません。」

「聖騎士ってだけでも面倒なのに強化人間なんて...。」

「お前ら何を話しているんだ?...それより、もうすぐ村に着くぞ。念の為パトロールと村長に警告もしておく。」


クリスさんに言われ俺達の歩く先を見ると、確かに前方に村が見える。王都から数時間の距離しかないからか、中々規模の大きい村だった。


「大きな村ですね。」

「ここは王都へ向かう際の最終準備を整える場所だからな。森も近いだろう?そこで取れる果実でも利益を出している。」

「へえ...。」

「あ、冒険者の方ですか?」

「はい。それが何か?」


俺に話しかけて来たのは、ヒトの方が濃い髪の長い狼人(ウェアウルフ)だった。可愛らしいモフモフの耳をピコピコさせている。


「すみません。黒髪に黒目なんて珍しくてつい。それに見ない顔でしたので。」

「確かにここに来たのは初めてですけど...何かあるんですか?。」

「この村で見る冒険者の方は何時も同じですから。村の防衛で駐在しているんです。」

「なるほど。」

「だから冒険者の方には感謝しているんです。僕も将来は冒険者になって色々な所に行きたいんです。」

「エクー!何やってるのー!早く来てー!」

「それじゃあまた!ゆっくりして行って下さい!」

「あ、ああ!」


そう言って狼人(ウェアウルフ)の子は走って行ってしまった。


「社交的な子だなあ...。」

「...あんな耳が好きなの?」

「えっ?まあ、好きかなあ。」

「そ、そう。」


アスィは何かを得たような顔をしてリリアナさんの所に走って行く。


「どういう事なんだ...。」

「私はギルド長と話をして来る。お前達はそこで待っていろ。」

「あ、了解です。」


話しながら歩いていると、いつの間にか村にあるギルド支部に到着していた。

暫く待っていると、クリスさんがギルドから出て来る。


「どうでした?」

「信じきってはいなかったな。聞いた話が本当ならこの村の戦力では聖騎士等相手に出来ん。どうしたものか...。」

「少し滞在しましょう。俺達が居る間に来なかったらギルド長に再度釘を刺せばいいんです。」

「そうするか...。」

「俺は何か依頼を受けて来ます。改良した装備が機能するか試したいので。」

「ああ。私はパトロールと使い魔を放って来る。気付かれるとは思うがな。」


俺はギルドで『リザードマン討伐』の依頼を受け、アスィの元へ行く。


「アスィ、依頼を受けて来たから行こう。装備がどう動くか見たいからさ。」

「分かったわ。」

「私も行く。」

「姉さんも?何でです?」

「戦い方の確認はしておいた方が良いと思うの。」

「一理ありますけど......分かりました。行きましょう。」


俺達三人は依頼を達成するべく村を囲うような森に赴く。森へ向かう最中、俺は気になった事をアスィに聞いてみる。


「そういえばアスィはどうやってシュレアまで来たの?」

「?決まってるじゃない、リリィに乗ってきたのよ。」

「な、なるほど。でもよく俺の居る所が分かったね。」

「それは勘よ!遠くにいる感じはしなかったからシュレアを拠点にしたの。予想以上に上手く行っちゃったし団員の士気も高くって...。終わり良ければって言うし良いんだけど。」

「勘か...。」


そのまま森の中へ歩いて行くと、一本の大きい川があった。水は透明で川の周りには木の槍を持ったリザードマンが多数いた。


「これは依頼が来る訳だ。」

「リーダー争いも無かったのかしら。数が多いわね...メイファ、やれる?」

「前衛は任せる。セイエイ、アスィが突撃してる間に私達で一気に殲滅するよ。いい?」

「分かりました。姉さんは手慣れてますね。」

「短い期間で色々あったから。」

「行くわ...3、2、1...突撃!」


アスィはカウントを取ると、一気にリザードマンの群れの中に突撃する。最初に一番近い位置にいたリザードマンを大剣で横一文字に切る。


「アスィ!『ウィンドブラスト』を頭の中で唱えるんだ!新装備のトリガーだから!」

「やってみる!こう...わわっ!?」

「フォローを!」

「なんとおー!!」


テールバインダーからの予想以上の風量に驚いたアスィは一瞬体勢を崩してしまうが、直ぐに復帰し飛びかかって来たリザードマンを縦に切り裂く。


「っと!難しいけど...ふふっ!面白いじゃないこれ!」

「アスィなら使いこなせるはずだから!っとお!」


俺はリザードマンの頭を拳撃で破壊し、二体目も同様に素早く仕留める。


「セイエイ凄い!強くなってる!」

「自然とね...。」

「でもメイファの戦い方は凄いわよ!仕組みは分かんないけど、取り敢えず相手にはしたく無いな。」

「アスィにそこまで言わせるなんて...。」


周囲に気を配りながら姉さんの方を見ると、武器を使わずにリザードマンを肉片に変えていく姉さんの姿があった。姉さんが手を振ると、少し遅れてリザードマンが弾けるようにバラバラ担っていく。


「どうなってんの?アレ?」

「分かんないわ。正直言ってさっぱり。」

「スキル...なのか?」


その後三人でリザードマンを討伐し動く物が見えなくなった所で、思い切って質問をしてみる。


「姉さん、さっきのはスキルか何かですか?」

「私の武器...かな。多分。」

「多分?」

「でもスキルみたいなものかな...。服を来てる間は見えない鋼鉄の糸を出せるの。でも来てない時は出せないから...でも便利だよ。この糸物を掴めるし。」

「どっちとも言えない...。でも本当に見えなかったです。」

「気配で防ぐ相手は少し辛いな。死神さんは論外。全部見切られるなんて予想外過ぎてね...。」

「アレはそもそも人じゃありませんし。勝とうとなんて考えませんし戦おうなんて絶対思いません。」

「だよね。」

「...アイツには勝てる気がしない。あの時は油断したから一撃与えられた。けど素の戦闘力が高過ぎる...。」

「なんでクリスさんは人の姿にこだわるんだろう。あの人なりの意地なのかな...ん?」

「どうしたの?」


リザードマンの死骸から何か光る霧の様な物が出て来るのが見えた。


「何か光る...霧?みたいなのが、ほら。」

「何?それは倒したリザードマンよ。」

「ええ?俺だけなのか?」


ちょっと怖いんだけど...あれ?何か忘れてるような...。


「あ。」

「ん。」

「思い出したぞ...!クリスさんから貰ったスキルだ!『魂』が見えるとかなんとか!」

「ええ!?スキル譲渡なんて事、神ぐらいしか出来ない...あ。」

「そういや神だったな...。」

「そうね...。」

「きゃああああ!!」

「悲鳴...近いぞ!」


クリスさんが曲がりなりにも神だったことを再確認していると、川の向こう岸の奥から甲高い悲鳴が聞こえる。


「さっきの亜人の女の子だわ!間違い無い!」

「と言うことはのあの子も...!?行こう!」

「早く行かないと。」


俺達は急いで川を飛び越えて向かう岸に着地し、悲鳴の聞こえた方向に走る。


「貴方達はさっきの...!?」

『ガアアアアッ!!』

「なんだあアレ!!」


狐人ウェアフォックスの少女の周りには俺達が戦っていた群れの生き残りだろうリザードマン数体の死骸がそこかしこに転がっていた。

そして、少女の前には巨大な黒い狼が佇んでいた。黒い体毛からは絶えず赤黒い電気のような物が飛び、当たった木は異常な速度で燃えて行く。


「なんだコイツ...!?今までのと格が違う!気を付けろアスィ!」

「一撃で仕留めれば良い...。そこの貴女は離れてて。」

「私から仕掛ける!はああっ!」

「待って違うの!殺しちゃダメええええ!!」

「何でっ!!...ハッ!?」


テールバインダーの加速で一気に仕掛けようと大剣で突撃したアスィに狐人ウェアフォックスの少女が突然静止に入る。


「アスィ!」

「セイエイ!?」

『ガガガガガ...!!』

「ううおおお...!」


アスィに向けられた巨大な狼の爪を俺は間一髪で受け止めるが、追加で来たもう片方の前脚も受け止め、俺の両手は軋み始める。


「エク止まって!もう敵は居ないの!!エクその人達は敵じゃない!」

「なんだって?コイツが...コイツがさっきの子だって言うのか!!」

『ガガガ...ガァァ...』


狐人ウェアフォックスの少女の声を聞くと、巨大な狼は急に倒れどんどん小さくなっていく。最後にはさっき出会った狼人ウェアウルフの子の姿になってしまう。


「大丈夫セイエイ!!ああごめんね私が悪いの...!痛いでしょ?ああでも治癒魔法なんて憶えてないよ...!」

「落ち着いてアスィ。それより君は...。」

「...サナリィです。倒れているこの子がエクリジット。」

「サナリィにエクリジットだね。ひとまず村に戻ろう。そこで話を聞きたいんだけど...いいかな?」

「はい。私には説明する義務がありますから...。はい...。」


俺達は気絶していたエクリジットを担いで村に向かう。

俺の気のせいか、下を向いて歩くサナリィの顔は何かに怯えている様な顔をしている気がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暴走する巨狼はエクリジットだった。深い闇と大き過ぎる力を持つ少年の前に再び悪夢が訪れる。

エクリジットとの出会いはセイエイに何を(もたら)すのか。


次回『リミッター』


私には...守るべきものがあるから...!

不定期更新マッハです(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

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