魔人合流地点
遅くなりました。寝過ぎたか...!
今回も宜しくお願いします!
七剣姫の情報を探すべく、俺達は王都の冒険者ギルドに赴いた。流石は大陸三大国家の支部とだけあって、施設そのものも大きく、中は大勢の冒険者で賑わっていた。
「凄いなあ...流石王都のギルド。」
「んで、どうすんだ?まずは聞き込みでもするか?」
「それなら私にお任せ下さい!まだ受付嬢ですので、情報を引き出せる可能性はあります!」
「それなら...。」
「頼んだ。無理はするな。」
「はい!では行ってまいります!」
ルリィさんはそう言って走って行くが...やはり好感触だ。凄く可愛いもんなあ。あれっ、戻って来た。
「駄目でした...。」
「早。」
「やっぱり人間への嫌悪感はありますね...。七剣姫について話した途端、話を切られてしまいました。」
「んじゃ俺が行って来る。なに、まずは魔人族以外からだぜ?」
ガングさんは自信ありげに他の冒険者に近寄って行く。本当に大丈夫だろうか...。
「よお、ちょっと良いか?」
「なんだ?」
「『七剣姫』ってのについて教えて欲しいんだよ。ついこないだ王都に上って来たばっかで、話題を何も知らないからな。」
「あんまり大声で喋るなよ...。最近勢いがあるんだよ連中。ったく魔人族が調子に乗って...。」
「んで、教えてくれないのか?」
「分かった分かった。お前が言ってるのは『七剣姫アズミ』が団長の『魔族解放戦線』の事だろ?名前の通り魔人族しか入れない旅団でな。アイツらのせいで最近は稼ぎも少なくなってんだよ...ん?どうした。」
「いや何でもない。ありがとよ!」
ベテランらしき冒険者から話を聞き終えたガングさんは、少し離れて見ていた俺達の元に戻って来る。
「なあセイエイ。お前、兄弟とかいるか?」
「ええ?弟はいましたけど...。それが何か?」
「そうか...。七剣姫の名前は『アズミ』って言うらしいからな。もしやと思っただけだ。」
「『アズミ』、ですか?」
偶然にしては出来すぎだよな...。
「クリスさん、もしかしたらですけど...!」
「少し可能性が高まったな。その『アズミ』とやらに話を聞きたいな。」
「セイエイの探してるって奴なのか?」
「まだ分かりませんが...可能性はゼロでは無さそうです。」
「そりゃあ良かった。探してる奴が魔人族って、普通は手がかりなんてそうそうねえぞ?幸運だよお前は。」
「...ええ。本当にそう思います。」
異世界に来て衣食住に困っていない時点で相当の幸運なんだよな。多少は仕方ないけど、良い人も大勢居るし。
「探し物は見つかったかい?」
「アルハムさん。いえ、ヒントだけです。」
「何も無いよりはいいさ。でも『魔族解放戦線』について調べるのは良いんだけど、あまり探りを入れているのを気取られ無いようにね。王もアレについて知りたくて色々人を回したけど、全部返り討ちに遭ってるからさ。あまり危ない事はしないでくれ。」
「分かってますよ。でもそれぐらいじゃクリスさんが許してくれませんよ。」
「そうだね。...それと、アルでいい。さん付けはこそばゆいからね。」
「え、ええ?分かりました。...じゃあ、アル。」
「そうそう。」
それはいいんだけど...結局核心に迫る情報は無いしなあ。まあまだ一回目だからそう焦る事は無いだろうけど...。
「とりあえず『魔族解放戦線』の支部に行くぞ。やはり直接行くしかあるまい。」
「えっ!」
「当たり前だ。こういうものはやはり本人に直接聞くべきだろう?」
「相手は魔人族の旅団ですよ!?俺達人間が行ったら...!」
「そんな事は断られてから言うべきだと思うが?」
「んな無茶な...!」
「では場所を聞いて来よう。待っていろ。」
そんないきなりな...!わざわざ死にに行く様な物だけど、クリスさんなら大丈夫なのかな?
「よし、場所は分かった。早速向かおう。」
「アレ恐喝だよね。」
「ですね...。」
クリスさんは近くに居た冒険者を半ば恐喝する形で『魔族解放戦線』の拠点を聞き出して来る。
「で、何処にあるんです?」
「近くだそうだ。何でもかなり大きいらしい。すぐ分かるだろう。」
「無茶すんなよな〜?」
俺達はクリスさんの先導の元、ギルドから出てその拠点のある場所に向かう。
「ここだろう。」
「はえー。でっかい。」
その建物は大きく、立派な建物が並ぶ王都でも屈指の偉容だった。小さいが庭園の様な物もあり、そこを通って建物に入る構造になっていた。
「行くぞ。」
「ええ!いきなりすぎませんか!もう少し誰か来るのを待つとかあるでしょう!」
「セイエイ、ここまで来たら私のノリぐらい分かるだろう?」
「そんな事言ったってなあ...。」
そう言いながらもクリスさんは一人どんどん進んで行く。俺達四人は少し後ろからクリスさんに付いて行く。
「...?待て貴様、『魔族解放戦線』に何の用だ。」
案の定止められた...!ここからどうする...!?
「『極星』と言えば私が誰かは分かるだろう?貴様らの団長に話をしに来た。通せ。」
「きょ、『極星』...!だ、だが!」
「...待って下さい。」
(な、何だ?何も無い所から人が...!)
突然現れたのは、白い鎧を身に付け顔を覆う兜を着けた人物だった。兜には半分女性半分男性の不気味な顔の模様が彫られており、声も男性と女性の物が交互に聞こえた。
「誰だ貴様?」
「...副団長を務めている『クアンタ』です。団長はご多忙ですので、また今度連絡をした上でお越し下さい。...うっ!...今日の所はお引き取りを。」
「クアンタと言ったな。では団長に伝えろ!『明日来る』とな。それではまた明日だ。」
「...連絡はしておきます。」
「フッ!セイエイ、行くぞ。」
「え、良いんですか?」
「今日は様子見だ。明日話をしてみようと思う。」
「...了解です。」
「あの兜の奴、不気味だぜ。」
「怖いですね...。」
俺は兜の人物からの視線に気付かない振りをしつつ、先に行くクリスさんを追い掛ける。
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「感謝します副団長。」
「大丈夫。...一人で鎮めなきゃ。」
「何か?」
「何でもない。引き続き職務を全うしてくれ。」
「ハッ!」
兜の人物、『クアンタ』は建物の中に入って行く。少し歩いて着いたのは執務室の様な部屋だった。部屋は異様に広く、奥の机には鎧を着けクアンタと同じく顔を覆う兜を着けた人物が座っていた。その横には目の辺りを隠すマスクの様な物もを着けた白髪の男性と、黒い長髪の美青年が両脇に立っていた。
「...団長...うっ。」
「どうしたのですクアンタ!?何処か具合でも...!?」
「大丈夫。問題無い、アトリア。」
突然崩れ落ちる様に膝を付いたクアンタにアトリアと呼ばれた美青年は心配する様子で駆け寄る。
「クアンタ、報告か?」
「...一応ですが。『極星』が明日来ると言って来ました。止めても来るでしょう。」
「『極星』が来たのか。なら......居たのか?」
机を前にした団長と呼ばれた人物は、『極星』というワードに直ぐさま反応する。
「居ました。」
「どうだった?」
「可愛い......もとい、元気そうでした。やはり直ぐにでも動くべきでは?」
「まだだ。恐らくアスカントがもう直ぐに動く。我々はそこで武勲を立て、魔族解放の足掛かりとする。...それからでも、遅くはないだろう?」
「団長の言う通り待つべきだな。お前はどうだアトリア。」
「『エクシア』、貴方がそう判断したのならそれが正しいのでしょう。私はそれに従います。」
「...了解。明日も留守という事にしておきます。」
「頼んだ。」
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ガングだ!気味の悪い仮面野郎に追い返されちまったが、クリスさんはやる気満々だ。俺もやる時はやるが、あの仮面とはやりたくないね。
次回『そのまさか』。俺の腕の見せ所ってな!
今日は無理でも明日には更新します!