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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
美華編 第1章 「生きて行けるなら」
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恋敵

遅れました。今回も宜しくお願いします!

美華達は現在ダンジョン12階層に居た。またも出現したスケルトンの群れを殲滅した後、携帯食料を食べながらの休憩に入っている最中だ。


「スケルトンも武器を持つんだね。初めて見るから驚いた。」

「人骨に精神体の魔人族が入ったり、怨みが原因で蘇ったりと理由は様々ですが...。最低限の知性はあるのでしょうか。」

「スケルトンの研究はした事が無かったな。あの時は見向きもしなかったが、今思えば興味深い骨だな。」

「さて、行きましょうか。今日で踏破出来なくとも支障はありませんでしょうし。」


再び歩き出そうとしたその時、前方から人が走って来るのが見える。走って来くるのは冒険者で、その後ろには巨大なトカゲとスケルトンが群がってその冒険者を追いかけていた。


「逃げろおお!!」

「アンタらも逃げるんだ!待ち伏せだー!!」



「結構多いね。私が半分出来るかな?」

「ルテチオンの新装備を試す時が来たか!」

「私の出る幕は無いな。」

「その様で。」


群がる魔物を見て逃げる姿勢も取らない美華達に逃げる冒険者は更に混乱する。


「なんで逃げない!?」

「知るかっ!押し付けてでも逃げるんだよ!」

「悪く思わないでくれよ!」


冒険者達は必死の形相で美華達の横を駆け抜けて行く。魔物達は直ぐに目標を変え、こちらに突撃して来る。


「出力を五分で固定!焼けろッ!!"ルテチオン・メガカノン"!」


虚空から現れた金属の物体から眩いばかりの光が放たれる。その後一拍遅れて凄まじい爆音と衝撃波が伝わって来る。音が止んだのを確認して目を開けると、先程まで居た夥しい数の魔物は塵も残らずに消えていた。


「第2射までに冷却が必要か...5分でこれとは...。まだ改良が必要か?」

「...凄かった。」

「先に進みましょうか。」


アルビオはヨハンの攻撃方法に慣れたらしく、何事も無かった様に一行を先導する。

階段を降り13階に到着した時、待ち伏せをしていたかの様に三つ首の犬に挟まれる。犬は三つの首それぞれが口に炎を蓄えており、もう間もなく炎を吐く事を示していた。


「ケルベロス!?何でこんな位置に!」

「...私が。」


美華は二本のナイフに鋼糸を付け、左右に居たケルベロスの真ん中の頭に投げて刺す。


「...こう、かな!」


そのまま糸を上にあげて腕を交差させ、空中でケルベロス同士を激突させる。二頭のケルベロスも予想だにしない攻撃に対応する事が出来ず、空中で行き場を失った炎の爆発に巻き込まれて爆散する。

美華はナイフを手に戻し、軽く息を吐く。


「危なかった。さっきの魔物といい、少しおかしいかも。」

「確かに、少し気になりますね。注意して進みましょう。」

「フッ!隠れて小細工をする様な輩にやられる私では無いわ!行くぞ!」

「少しは気にしませんかねえ。」


その後もケルベロス五頭が物陰から現れたり、鉄の槍を持つリザードマンと武器を持つスケルトンの集団の襲撃に遭った。そしてその全てが一行の行動を把握しているかの様なタイミングでの事だった。


「...明らかにおかしいぞ。」

「ええ全く。ここまで広大なダンジョンでこんな事が連続で起こるとはまず考えられませんし。」

「...罠?敵は...冒険者?」

「或いは暗殺者かもしれませんね。かなり手慣れている様にも感じます。魔物の配置にも技術を感じました...調教師でもいるのでしょうか。」


その後は暫しの静けさが訪れ、美華達は意図的な襲撃に遭わないまま15階に到着する。周囲を警戒しようとした時、前方と後方から来た冒険者の集団に挟まれる。


「...何のつもりだ。私を聖騎士と知っての行動か?」

「聖騎士アルビオ、その女から手を引け。お前も、その聖騎士から手を引くなら命は取らない。」

「私の名前を知っている...!?誰からの依頼だ!!」

「言えないな。だが、貴様が一番知っているだろう。さあ、答えを聞こうか。」


前方の集団のリーダー格と思われる男はアルビオと美華に交渉を持ちかける。アルビオは黒幕について一思巡らせた後、静かに剣を抜いて構える。


「...死ぬ気か?幾ら聖騎士と言えど四対十。多勢に無勢というものではないのか?」

「愚問だな。私は聖女様を護るとこの剣に誓った身だ。聖女様に刃を向ける不信者は斬る!」

「仕方が無い...。女だけを殺せ。」

「貴様ッ!」

「...嫌いなんですよねえ、そういう中途半端なのは。」

「え?」


突然場が静まり返る程の殺意の篭った声が聞こえたと思うと、リーダー格の男の後ろにいた冒険者の首が飛ぶ。何時の間にか男の後ろにいたティエレが頭を無くした体を蹴り飛ばす。


「ダメですよ、すぐ正体を明かしては。罠というのは確実に仕留める事が出来るタイミングで退路を閉じる物。このタイミングは...ハッキリ言って悪手でしょう。」

「お前...!ま、まさか!『黒ば」

「おっと、昔の話は止めて下さい。恥ずかしいので。」


後退りをしながら何かを口に出そうとした男の首がティエレの持つ両刃剣によって体から切り離される。瞬く間に仲間を二人も殺された冒険者達は数的に優位であるにもかからわらず、その多くの表情は恐怖で青ざめていた。

ティエレは両刃剣を二つに分けて双剣に切り替え、逆手に持って楽しげに呟く。


「さあ、狩りの時間です。あ、主犯格は殺してはダメですよ。」

「分かった。」

「賊共が...!!」

「我が伴侶に手を出そうとは...余程の覚悟あると見える。」


ティエレの言葉を合図に美華達は一斉に動き出す。冒険者達はその動きに反応する事が出来ずに一方的に殺されて行く。人の視力では見えない鋼糸に切り裂かれ肉片と化す者、黒い双剣と光り輝く長剣の錆になる者、鉄の巨大な腕に潰される者と襲撃者達は次々と屍になっていく。そんな中、リーダー格である男は混乱の極みに居た。


"簡単な仕事" "注意すべきは聖騎士だけ" "楽して稼げる" "鎧の男の動きが見えなかった" "何も無いのにバラバラになる仲間" "こんなはずじゃなかった"


後悔と驚愕の渦に意識を持っていかれ呆然と立ち尽くしていると、目の前に真っ黒い兜が現れる。


「ヒイッ!」

「これで貴方だけです。まだ、やりますか?」

「う、うわあああああああ!!!」

「おっと。」


リーダー格の男は半狂乱の状態で叫びながらティエレを押し退けて逃げようと走る。


「ぐわあっ!」


男は突然何も無い所で転んでしまう。急いで立とうとするが、何故か土を踏む感覚が戻って来ない。


「あ、足がああああああ!!」

「逃げちゃダメだよ。」


男には土を踏みしめて歩くはずの足首から下が綺麗に切れていた。男の視界に再びティエレが映った時、男の意識はふっと途切れる。


「気絶しちゃった。」

「適当に治癒魔法を掛けておきます。手足を縛ったりは...要らないでしょう。」

「少し経って起きなければ叩き起すか。」

「そうだな。この傲慢は償わせる。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぐっ...!い、痛え...!」

「お目覚めになりましたか?」

「ヒイイッ!!た、助けてくれ!」

「それは貴方の行動で変わるかもしれません。今から言う質問に丁寧に、且つ正直に答えて下さいね。」

「わ、分かった!分かった!」


目覚めた瞬間にティエレを視界に入れた男は再び途切れそうになった意識を必死に留める。男はへたりこんだまま息を荒らげて質問を待つ。


「そんな数はありませんが...まず1つ、依頼主は誰ですか?」

「ハエバルの娘だ!!そこの聖騎士に纏わり付く売女を殺せと言われた!なあ、依頼主を言っちまったんだ!助けてくれ!」

「アルビオ、心当たりは?」

「...オイア枢機卿の一人娘だ。前々から言い寄られていて困っていたが...ここまで来ると怒りを通り越して呆れてしまうな...!」


アルビオは剣を握りしめたまま怒りに顔を歪ませる。ティエレは男に顔を近付け、耳元で囁く。


「私の事を知っていますか?」

「え?あ、ああ、でも昔の話...え?まさか、嘘、え?」

「その様子じゃあ、帰す訳には行かないですねえ...。ごめんなさい。」

「嫌だっ!止めてく」


男は命乞いの台詞を言い終わる前にティエレの手刀で首をはね飛ばされ絶命する。


「さて、依頼主の元に行きましょうか?...おや、新手でしょうか?」

「待て!違う...あれは、聖騎士か?」


アルビオと同じ鎧を着けた男が階段を降り美華達の元に来る。


「アルビオ様、これは一体?」

「賊の襲撃に遭った。ところでここまで来るとは、何かあったか?」

「はい。教皇様が至急聖女様を連れて戻れと。」

「教皇様が?一体何があった?」


同じ聖騎士らしい男の報告を受けたアルビオは思いもよらない人物からの招集に、男に対し思わず理由を聞いてしまう。男は焦った様子でアルビオに招集の理由を告げる。


「聖戦が...勃発したそうです。」

今回もですが、少し忙しくなって来たので次から二日に一話くらいの不定期更新になります。

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