初ダンジョン
今回も宜しくお願いします。
トレイズ達訪問者達の突然の襲撃から新たに決意を改め数日が経った後、いつもの朝に美華達はギルド隣に聳えるダンジョン入口の前に居た。
「ダンジョン...ここだったんだ。」
「そうです。ダンジョンから取れる豊富な資源やマジックアイテムを素早く回収し、負傷者の手当て等も即時に行う為にとこの施設が作られたのです。」
「我もダミーを置く時はかなり拘ったからな!中々良い心掛けだとは思うぞ。」
施設の中には様々なアイテムを売る売店や武具屋の様な店、医務室や浴場等の設備が充実しており、冒険者で賑わっていた。そして施設の中心、設備に囲まれる様な位置に一つの階段があった。
「ここが...入口。」
「ダンジョン攻略はやはり長期が予想されます。この『巡礼窟』も最下層は分かっていません。ポーションや食料の運搬はどうしましょうか...。現地調達も視野に入れておきましょうか?」
「ん?それなら私がいくらでも積めるぞ。」
「え?アレそんな使い方出来るのか?」
「フフフ、シャクショールに出来ん事はそうそう無いぞ?」
ヨハンの提案は通り、美華達回復ポーションや食料等を買ってヨハンに預けておく。ルテチオンの隠し腕の様な物に捕まれて食料等が消える様は何とも言えないものだった。
「結構...深いね。」
「お手を貸します。足元に気を付けて下さい。」
「ん、ありがと。」
「人の嫁といい雰囲気にだな...。」
「違うでしょ。」
準備が出来た一行はダンジョンへと続く階段を降りて行く。魔力灯による明かりがあるとは言え、中は薄暗く注意が必要だった。暫く階段を降りていると、広場の様な場所に出る。
「ここはまだ一階ですから、魔物も掃討されているので居ません。先に行きましょう。」
「了解。」
先を目指して歩いていると、下に続くであろう階段がある。警戒しつつ進み二階に降り立つも、出て来た魔物はキラーアントと呼ばれる巨大な蟻の魔物数匹だけだった。
「行くよ。援護、お願い。」
「了解!」
「私の攻撃は巻き込んでしまうな...。下がっておこう。」
「私も援護をば。」
美華の鋼糸による攻撃とアルビオとティエレによる斬撃により、キラーアントの群れはあっという間に殲滅されてしまう。
「初めて見る魔物だけど、そうでも無い。」
「私達にかかればこんなものでしょう。さあ先に進みましょう。」
キラーアントを殲滅した後、美華達は次々と下層に進んで行く。キラーアントばかりだったのは9階までだった。10階に降り立った美華達の前に立ちはだかったのは、大きなドラゴンだった。ダンジョンの魔物らしく翼は無いが、その体は巨体そのものだった。
「いきなりドラゴン...。」
「こんな直ぐに出た覚えは無いですが...!」
「来るぞッ!"ルテチオンシールド"!」
ヨハンの出した巨大な盾で美華達はドラゴンの炎をやり過ごす。ここまで到達した他の冒険者達もドラゴンが居るとは思わなかったのか、逃げ出す者と武器を構える者にはっきりと別れた。
「ここは私がやってみせよう!!フハハッ!改修を重ねたルテチオンの性能を見せてやる!"ルテチオン・ツインソード"!」
ヨハンは虚空から巨大な剣を持つ機械の腕を二本出し、ドラゴンに躍りかかる。腕はヨハンの動きと連動しているらしく、二本の剣による質量攻撃でドラゴンは実にあっさりと首を落とされる。
「魔鋼による強化はやはり良い物だ!うむ、これならいける!いけるぞ!」
「何かすぐ倒せたね。」
「ヨハンが強いのでしょうが...あれ本当にどうやって出してるんだろうか...。」
ドラゴンが一撃で倒された事と謎の機械の腕に驚いて固まる冒険者達が居る中、美華達は次の階層を目指して階段を降りて行く。11階に降りて暫く歩くと、前方に剣と盾を持った骸骨が歩いている。
「アレ...骸骨?」
「スケルトンです。数は...三。」
「私が行きましょう。まだ良いところ見せていないので。」
ティエレはそう言うと素早くスケルトンの懐に入り込み両刃剣による斬撃で即座に撃破する。
「骸骨如きでは相手になりませんね。さあさあ、次です。次。」
「ティエレは鎧を脱がないの?」
「ここだけの話、私魔人族なんですよ。しかも精神体に進化しましたので、実体が無いんです。この鎧はそれを留める為のものです。」
「...そうなのか?」
「ええ。言い難い事でしたが、隠し事はいけないと思いまして。アルビオ、貴方にとって私は敵でしょうか?」
「アルビオ?」
問い掛けられたアルビオは困惑したような表情を浮かべていた。
「...魔人族は...敵だと、聞いていた。凶暴で、人を殺す事を好むと。だがティエレ、おまえは違う。なら主の教えは違ったのか?私は...今まで何を信じて来たんだ...。」
「アルビオ、少し聞いてたのと違っていただけでしょ?大丈夫。アルビオは間違って無かったと思う。」
項垂れるアルビオに美華は優しく言葉を掛ける。アルビオ自身も既に答えは決まっている様だった。
「メイファ様......ありがとうございます。ティエレ、気を使わせたようですまない。」
「いえいえ。私もすっきりしましたし、おあいこでしょう。」
「先に進むぞ。夜には戻りたいからな。」
待っていたヨハンに急かされ、一行はダンジョンを制覇するべく先を急ぐのだった。
明日も更新出来るか分かりませんが、長くなるかもです。