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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
美華編 第1章 「生きて行けるなら」
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訪問者

遅くなりました!今回も宜しくお願いします!

「これで...!」


美華は巨大な蜘蛛の魔物、『ヌレイスパイダー』に鋼糸を巻き付け粉々にする。


「"ルテチオンバルカン"!」


中心に水晶の様な物を持つ金属の塊が突如出現し、それに付いている銃口の様な部分から光の弾が高速かつ連続で放たれる。弾は群れるヌレイスパイダーを次々と粉砕して行く。


「これで粗方片付いただろう?」

「ええ。蜘蛛の駆除依頼はこれにて完了です。まさか私達位しか勝てる冒険者が残って居なかったとはね。」

「最近は古文書でしか聞かん魔物が増えて来ている。その対策に、ギルドもランクの高い冒険者を送るしか無いのさ。最近もシュレアとの国境付近で『鋼蠍(メタルスコーピオン)』を見たと言う報告もある。そんなもの、図鑑でしか見た事が無い。」


アルビオが溜息混じりに愚痴を零していると、後方から見慣れない姿の人物達が近付いて来る。


「...ビンゴ。そこの冒険者!!」

「何だ!?誰だ貴様は!?」


先頭に居た肌の黒い男が大声でこちらに呼び掛けて来る。アルビオは咄嗟に剣を抜き、ティエレも背中の両刃剣を無言で構える。


「...どういう事?」

「その顔立ち...中国人か?」

「ッ!」

「ドンピシャか。俺に付いて来い。嫌なら...無理矢理にでも連れて行くまでだ。」

「...嫌。」

「だそうだ。ルイスは甲冑野郎だ。セルカ!お前はあの高そうな服着た奴を!イシュは騎士野郎を頼む。俺と死神はイレギュラーをやる。」

「了解ですっ!」

「あいさー♪」

「少し手荒だが、致し方ないか。」

「展開が早い...!場慣れしている!」


美華がはっきりと拒絶の意思を示すと、男は仲間に指示を出し即座に戦闘態勢に入る。


「先ずはお兄さんからかなっ!」

「速いですね。私も本気でやらねば危ういか...!」


ルイスと呼ばれた少女は黒い線を描きながら真っ先にティエレに突撃する。ティエレは刀による攻撃を両刃剣で受けるが、ティエレの口からは焦りが見えた。


「貴様の相手はこのオレだ!」

「"ルテチオンシールド"!」

「蹴破るッ!」

「なんだと言うのだっ!?」


セルカと呼ばれた麗人の繰り出す蹴りに即座に反応し、ヨハンは金属の巨大な盾を出すも炎を纏う蹴りに破壊されてしまう。ふと左側を見ると、ティエレが首に刀を当てられているのが見える。


「ティエレを負かす相手が居たか!面白い!"ルテチオンツインアーム"!」

「フッ!!」

「我がルテチオンと張り合うだと...!?」


ヨハンは金属製の腕を二本出しセルカに拳撃を繰り出すも、セルカも同じく拳を突き出し巨腕を止めてみせる。


「眠っていろッ!」

「...し、しまった!?ぐあぁっ!」


セルカは驚くヨハンの一瞬の隙を突き、素早く懐に入り込み腹に拳を撃ち込む。その一撃でヨハンは気絶して倒れてしまう。


「ヨハン!くっ!何なんだ貴様らは!?」

「今はお答え出来ませんっ!"目覚めよ!"」

「何なんだこの蔦!?け、剣が!」

「降参して下さい!命までは取りたくありません!」

「くっ...!」


蔦に剣を弾かれたアルビオは、悔しさに顔を歪めながらその場で膝を着いて項垂れる。


「アルビオ...!」


強いはずの仲間が次々にやられていく様を美華は呆然と見るしか無かった。自分の目の前には大きな銃剣を持った黒人とフードを深く被った人物が立っている。


「もうお前だけだ。降参しな。」

「...ッ。分かった...。」

「物分りのいい奴で助かった。死神、早めに済ませろ。このままじゃ外交問題だ。」

「了解だ。」

「...女の人...?」


フードを取った人物は銀髪の美しい女性だった。女性はそのまま質問をして来る。


「ハローイレギュラー。」

「英語??」

「これが挨拶らしいのだが、違ったか?まあいい。私の名前は...死神で良い。最初の質問だ、お前はこの世界に呼ばれて来たのか?」

「...分からない。いつの間にか居た。」

「そうか...。次だ。お前はこの世界で何をしたい?」

「...今の目標は魔大陸に行って魔王様に会いたい。面白そうだから。」

「魔王に、か。...危険性は無さそうだ。イレギュラー、お前が今後この世界に混乱をもたらす事になったとしたら、その時は私がお前の首を刈りに行く。それを忘れるな。」

「...?分かった。」


銀髪の女性はまたフードを被ると来た道を戻って行く。肌の黒い男やその仲間の人物もそれに続いてその場から去って行く。


「...手も足も出なかったですね。」

「相手に殺意が無かったとしても不覚...!」

「...ぐうぅ...私は気を失っていたのか、情けない...。」


各々が負けた悔しさと自らの未熟さを嘆くが、直ぐに再起し汚名返上を誓う。


「フフフ...次は私だけで終わらせる位にはしないといけませんね...!」

「この剣に誓って次こそは...。」

「ルテチオンの改良を急がねばならんな!」


美華は思い出した様に唐突に走り出す。


「...待って!」

「メイファ様!どこに行かれるのですか!」

「あの人を追いかける!」



「トレイズ、あの娘走って来たけど。」

「あ?話は済んだんだがな。」

「待って!...ハァ...ハァ、貴方の事をまだ聞いてない!」

「聞いてどうする?」

「何かあった時に助け合えるかもしれない。それに、ここに飛ばされたのが私だけじゃないっていう事実だけでも...励みにはなる!」


トレイズは銃剣を肩に置いてひとしきり考えると、美華に向き直る。


「その気持ちは分かる。だが、俺達はもう自分の国に帰る。何かあった時は...まあ、宜しく頼むぜ?じゃあな!」


トレイズと呼ばれた肌の黒い男は仲間を連れて再び歩き出す。美華は追いかけてきたアルビオに肩を叩かれるまでその背中をずっと見ていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何?帰った?」

「はい。何をしたかも何をしに来たのかも分かっていませんが、先程出国を確認したそうです。」

「そうですか...。ありがとう。」

「失礼致します。」


報告を受けたキュレアデアは椅子に座ったまま机の引き出しから一枚の写真を取り出す。写真に映る幸せそうな家族とその中心に写る少女を見ながら、悲しげに呟く。


「主よ、私に何をさせるおつもりなのですか...?」

明日も頑張って上げるようにはしたいです...。

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