絢爛瞬死
久々のステータス欄ですなあ。
今回も宜しくお願いします!
「はい!これにて冒険者登録は完了となります!貴女様に主の御加護があらんことを!」
「ありがと。」
「さて、何からしましょうか?というか、本当に魔物と戦うつもりですか?」
「一応戦える。それに...スキル、だっけ?私にも出来るか確認したい。」
「了解しました。簡単な物からやりますが、無理はしないで下さい。貴女に死なれたら私は...。」
「...可愛いね、アルビオは。」
「か、可愛い?」
「まだ会って少しの女の命を心配するなんて、他の人には出来ない事じゃない?そういう男は嫌いじゃないよ。」
「は、早く行きましょう!」
「分かった。」
冒険者登録を済ませた美華はアルビオに連れられ、『ゲイルウルフ討伐』に向かう。大陸全土に分布する魔物らしく、倒した分だけ報酬が貰えると言う。
「何度も言いますが、力量を超える様な行動は慎んで下さい。」
「ありがとう。でも大丈夫よ。」
「分かって下されば良いのですが、新人の聖騎士は前に出たがるので...あっ、すいません。行きましょう。こちらです。」
「うん。」
アルビオの後に付いて行き、首都の外を目指す。首都の周りを街が囲っているので、街の外の森に行くのは何分とかからなかった。森の中をアルビオと共に探索していると、二体程のゲイルウルフが姿を見せる。
「おっと、早速ですね。メイファ様、行けますか?」
「やってみる。」
美華は体全体に力を入れる様に構え、ゲイルウルフに凄まじい速さで接近する。任務でターゲットを殺す時の様に感覚や筋肉の出力を上げて接近するのだが、調子が良いのかスムーズにその状態に移行出来た。そのまま二本のナイフでゲイルウルフの喉を掻っ切り絶命させる。
「...うん、何時もの感じ。どう、かな?」
「え、ええ!凄いです!(見えなかった...!あんなの人間の出せる速さなのか...?)」
「良かった。なら最後の一頭もやるね。」
髪に留めていた二対のアクセサリーを外しそこから極細のワイヤーを取り出し、後ろからゲイルウルフの首にかけそのまま引っ張る。容易くゲイルウルフの首は切れてしまう。
「スキルの確認は"ステータス"って言えば良いんだっけ?」
「え?あ、はい!念じれば頭の中に浮かびます。最初なので少し驚くかもしれません。お気を付けて。」
「分かった。"ステータス"。」
ひとたび言葉に出しながら念じると、頭の中に画面の様なものが浮かび上がる。初めての現象に、美華は静かに驚く。
「...凄いね。これ。」
「でしょう。偉大なる主の御業です。この"ステータス"があるからこそ人々は己に与えられた"可能性"を見る事が出来るのです。これが無ければ人の安寧など、到底実現不可能でした。」
美華は熱心なアルビオの説明を聞き流しながら画面に載っている情報を注意深く分析して行く。
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名前 美華
年齢 19
状態 健康
武器 鋼糸麗鸞
保持スキル
プレシャススキル:『透過』
トゥルースキル:『極地』『聖女の威光』
スキル:短剣術 Lv.EX
称号スキル:____
『透過』:姿を消して移動可能。その場合は魔法及び魔力の関係するあらゆる攻撃が無効。姿を見せる場合は物理攻撃等を無効化出来る。
『聖女の威光』:無条件で常時カリスマ性が跳ね上がる。男性は効果が倍増する。
『極地』:闇に潜む者の至るべき精神世界。感覚を最大限に引き出し行動可能。
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美華は見たものを一通りアルビオに報告すると、アルビオは目を見開きながら興奮気味に驚く。
「凄いですよメイファ様!貴女こそやはり聖女だった!それにプレシャススキルをお持ちでいらっしゃるなんて...!」
「...不本意。武器も見れるのね?」
「ええ!念じれば防具も!」
「やってみるね。」
美華は再び頭の中で念じ、画面を出す。その次に更に念じると武器の詳細画面に飛ぶ。
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『鋼糸麗鸞』:魔力による鋼鉄の糸を作成し自在に操作し、攻撃をする。糸は物質に刺す事でその物質を操作する事が出来る。
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「...このドレス、こんな機能あったかな?」
「実際に見て見なければ分かりませんね...。更にゲイルウルフを探してみましょう。」
そう言いながら数歩歩いた所で今度はゲイルウルフの大きな群れに囲まれる。
「数は...15。」
「多い、だがここは聖騎士の力を見せる時!聖女よ、貴女は私が御守り致します。」
「了解。援護する。」
「少し違いますが、行きます!」
美華は瞬時に『極地』に入り、武器の性能を確かめる。ステータスと同じ様に念じてみると、ドレスから極細のワイヤーの様な糸が出て来る。
(こう、かな?)
次に糸をゲイルウルフに絡める様に念じると、更に糸が五本程出現し群れの先頭にいたゲイルウルフに絡みつく。
「...こうすれば、どうかな?」
そのまま糸を引っ張る感覚を頭の中で念じる。群れの先頭のゲイルウルフは突然バラバラの肉片と化す。流石の事態にアルビオも行ったん距離を取ってしまう。
「な、何だ!?伏兵か!?」
「...ごめん。私の武器。」
「ええ!?あれを、メイファ様が!?」
「うん。試しに武器を試してみたら、予想以上。一気に片付けるね。援護はお願い。」
「了解です!"祝福"!」
美華は更に糸を増やし、確認できる範囲で20本もの鋼の糸を出す。その全てを使い複数のゲイルウルフに絡ませ、先程と同じ要領でゲイルウルフを次々に肉片に変えていく。アルビオも長剣でゲイルウルフを切り付けるが、切られたゲイルウルフは何十回も同時に切られたようにズタズタになる。
「アルビオ、強いね。」
「聖女様、程ではッ!これ位は聖騎士として当然の事。一気に終いと行きましょう!」
「うん。終わらせよっか。」
その後はただの蹂躙だった。アルビオの剣技でスライスされるか、美華の出す鋼糸の罠に引っかかり肉片と化すかの選択肢しかゲイルウルフ達には無かったのだから。
「初めてにしては良かったと、思う。ありがとね、大体掴めた。」
「私は聖女様の強さに驚きました。私などでは手も足も出ぬままバラバラでしょう。」
「ふふふ...じゃあ、行こうか。」
「ええ。今日はお疲れでしょうから、騎士団の者に命じ首都で一番の宿と風呂を手配しましょう。」
「...有難いけど...。」
一生懸命に助けようとしてくれるアルビオを見ていると、美華は中々『大丈夫』とは言えなかった。
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ダートス帝国 第七特殊侵攻大隊 執務室
執務室の重々しい扉を鎧を着けた狼人の男がノックする。その後にはフードで顔を隠す人物が立っている。
「トレイズ大佐!客人が来ております!お通ししても宜しいでしょうか?」
『ああ、通してくれ。』
「失礼します!」
扉を開けると、大きい机を前にし椅子に座って静かに佇む黒人男性が居た。その両脇にはエルフの少女と金髪の長髪の少女が立っており、机から少し離れたソファーには黒く長い髪の女性が眠っている。部屋にフードの人物を部屋に入れると、狼人の兵士は黒人男性に向かって一礼する。
「私はこれで。失礼致します!」
「ああ、ご苦労。」
狼人の兵士が部屋から出たのを確認すると、黒人男性はフードの人物に話し掛ける。
「それで、いきなり押し掛けて来て何の用だ?『純潔会』についてか?」
「それと同じ位重要な事だ。」
「何だと?」
フードを取った人物は銀髪の女性だった。女性は少し焦る様な口調で黒人男性に報告する。
「二人目の"イレギュラー"が来た。」
「......何だと?」
口調をやや統一出来ていない感じアリ...かも。