聖女だなんて
遅れました!今回もよろしくお願いします!
「だから、私は聖女なんかじゃ無い...!」
「だが私は見ましたぞ!突然光が降り注ぎ、消えた頃には貴女が居たのです!これはまさに奇跡としか言いようが無い!」
「...ええ...。」
美華は目が覚めるやいなや、何故か高揚している老人に絡まれていた。どうやら美華を聖女だと思っているらしい。
「...此処は何処なの?」
「ここは聖アスカント共和国。そしてその首都である『デュベリオン』にある主神教総本山、『ガエリア大聖堂』にある教皇の部屋ですな。そして私が主神教の最高指導者である教皇、キュレアデア・アメクダイです。」
「......本当に別の世界なのね。なら...この世界の事、色々教えてくれない?」
「勿論ですとも聖女よ!」
「登場の仕方、他に無かったのかな...。」
美華は椅子に座る様に促され、テンションの高い教皇にこの世界の事を教わって行く。魔大陸、スキル、帝国に王国、そして神。別の世界だと割り切っている美華にとって、それは全てが瑞々しい驚きだった。
「魔法、あるのね。」
「ええ。神ギルテカリスが作りし叡智の結晶ですな。これがあったからこそ、憎き魔物達と互角に戦えて来たのです!」
「それに...冒険者、私もなるわ。それについてなんだけど、冒険者証登録の時に必要なお金を貸してくれない?絶対に返すから。」
「お金など、私の貯蓄全てをお譲りしましょう!」
「そんなには要らないわ...最低限借りたいだけ。」
「だが時に聖女よ、冒険者とは危険極まる職業ですぞ。日常的に絶えず湧く魔物共を抑える重要なものではありますが...。貴女には是非我ら主神教の象徴、『聖女』になり神の教えを更に広めて欲しいのです!」
「嫌よ。私、一度死んだ様な人間だから好きな事をしたいの。ごめんなさい。」
「貴女の様な美しい女性が何故...。」
「言ったでしょ。私、一度死んでるの。だから、何処で死のうが同じ。」
美華は諦めたような口調でキュレアデア微笑む。キュレアデアは一瞬見惚れて固まったが、直ぐに険しい顔に直す。
「いや、しかしですな...。」
『教皇猊下!いらっしゃいますか?』
「はい、ここに。お入りなさい。」
『失礼致します!』
教皇が深く考えていると、大扉の向こうからノックと共に若い男の確かめる様な声が聞こえる。アロウが許可を下すと大扉が開き、そこから白い鎧に身を包んだ騎士の様な男性が入って来る。
「教皇猊下!...そちらの美しい方は?」
「彼女は聖女です。くれぐれも失礼の無いように!」
「...そんなんじゃない。」
「聖女...!?貴女が!?...麗しき聖女よ、私はアルビオ・テンダと申します。以後お見知りおきを。」
「...どうも?」
アルビオは真っ直ぐに美華の元に行くと、その場で片膝を付いて美華の手の甲にそっとキスをする。
「...失礼ですよアルビオ。」
「これは...。ご無礼をお許し頂きたい、我が聖女よ。」
「...そんなんじゃないのに...。」
「彼、アルビオは聖騎士の中でも期待の男でしてね。私自身かなり彼に投資をしているもので。」
「聖騎士?それは聞いていない気がするけど?」
「猊下、説明は私がしましょう。ンンッ!聖騎士とは、我が国アスカントを魔物共や賊共から守護する聖なる騎士達の事です。神にのみ仕え、神とその代弁者たる教皇にのみ従う。それが聖騎士です。」
「...ふぅん...遅れるけど私は美華。よろしくね。」
「メイファ様ですな。我が魂にしかと刻みました。美しい名前ですね、お似合いだ。」
アルビオが説明の後に美華を褒めちぎっていると、キュレアデアは急に何かを思いついた様な表情をする。
「そうですアルビオよ!貴君に特別な依頼を言い渡します!」
「はっ!何でしょうか。」
「聖女メイファ様は冒険者になりたいと仰られている。お供して差し上げなさい。」
「かしこまりました。ではメイファ様、参りましょう。」
「聖女よ、これを貴女に。」
キュレアデアは机の下にあった重厚な引き出しから取り出した木箱からなにやら高価そうなメダルを取り出す。ネックレスの様な加工がされており、首に掛けることが出来た。
「...これは?」
「聖女がもしも顕現された時にと造らせておいた特別なお守りです。色々な災厄から護ってくれる事でしょう。どうか貴女様に主の加護があらんことを。」
「...ありがとう。行ってくるね。」
「アルビオ、頼みました。」
「ハッ!この命に代えても聖女様を御守り致します!」
アルビオと共に大扉をの向こうに行き、閉まる直前に教皇に一礼をする。
「では聖女様、参りましょう。」
「...まだ何も分からないから、お願いね。」
「も、勿論ですとも!」
「あのコインが正しく動作すれば良いのですが...。」
一人部屋に残されたキュレアデアは大きい椅子に深く座り、真剣な面持ちで静かに呟く。
「彼女は私のモノにしなければ...。」
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「...綺麗な町。空気も美味しいし、活気がある。」
「嬉しいですね。私もこの街は大好きです。聖騎士になったのも、この国の人々の暮らしを守りたいと思ったからです。」
デュベリオンは白を基調とした建物が多く所々に違う色があり、そこにも趣が感じられる街だった。
「失礼ですが聖女よ、お歳は...?」
「......19。女の子に歳を聞くのは騎士らしく無いと思うから、気を付けた方が良い。」
「あ!あああ!失礼致しました...。メイファ様には母の様な暖かみを感じました。ですから、私より歳は上なのかなと気になってしまいまして...。ちなみに私は24になります。」
「...?分かんないけど、早く冒険者になってみたい。この世界でしたい事はまだ見つかってないけど、面白そうなの。」
「了解しました。エスコートさせて頂きます。」
「お願いね、騎士様?ふふふ...。」
「か、可愛い...。さ、ささっ!行きましょう!」
顔を紅潮させて張り切るアルビオを見て美華は楽しげな微笑みを浮かべ、過去の記憶を思い返してみる。
(...嫌でも思い出しちゃうけど...アレは私の責任でもある。都合良く死ねたら会えるかも知れないか......。)
「メイファ様!こちらです!」
「...分かった。今行く。」
過去を振り返っていると、何時の間にかアルビオが少し離れた位置からこちらに手を振っていた。美華は一旦思い返していた事を忘れ、アルビオの元に駆け足で向かう。
(お姉ちゃんは生きてても良いのかな......今はまだ、良いのかな...?)
明日更新出来るか分かりませぬ...辛い!