間話:皇帝の推薦状&猫と白衣
遅くなりました!今回は間話になります!最後のはオマケ程度って事でお願いします!
時間は少し遡る。
「皇帝陛下ー!!」
「貴様何者だ!」
「捕らえろ!」
「邪魔だ!どいてくれっ!」
金髪の美少年が鎧を着けた兵士達を押し退け、煌びやかな装飾の施されたカーペットの上を走る。そして、美少年の視線の先には玉座で佇む赤髪の男が居た。
「何事だ?......君はロッシェ君、だったかな?」
「皇帝陛下に名前を覚えて頂けるとは...光栄です。本日は皇帝陛下にお願いがあって参りました。」
「無礼者め...!」
「下がれ。...聞こう。何だね?」
またも鎧の兵士がロッシェを止めようとするが、皇帝は手を上げてそれを制する。
「セルカ姉様をご存知でしょうか。」
「セルカさんか。ああ、知っているよ。聡明な女性だ。彼女がどうした?」
「僕を...僕をセルカ姉様と同じ第七混成部隊に入れて下さい!」
「ほう...?中々面白い事を言う。詳しい動機が知りたいな。私の部屋で話を聞こう。来い。」
「皇帝陛下!宜しいのですか!?その様な者を私室に...!」
「それは...私が彼に殺されないか?と言う心配かな?だとしたら...失礼極まりない、な。」
「し、失礼致しました!!」
「ふう...ロッシェ君、こっちに来てくれ。」
「は、はい!」
皇帝は食い下がる部下を下がらせ、奥の扉に歩いて行きそこにロッシェを来させる。扉を開け、私室に入りロッシェと二人きりになる。
「そこのソファーにでも座ってくれ。」
「はい。失礼します。」
「第七混成部隊に行きたい理由を再度聞かせてくれないか?」
皇帝はソファーに座るようロッシェに促した後、再びロッシェに質問する。
「セルカ姉様と共に戦いたい、共に居たいと思ったからです。」
「何故そこまで彼女に拘る?気持ちは分かるが、君なら一流の冒険者を目指せるはずだ。彼女が軍という物に縛られる理由になるのか?」
「なります。闘技大会で彼女と初めて会った時、僕は彼女の噂を少しばかり聞いていましたが、『どうせただの美人止まりだろう』『自分よりは強くないだろう』、そう思っていました...。しかし現実は違った!彼女を視界に入れた瞬間身体に電撃が走ったかの様な、そんな強い衝撃を覚えました。夜の闇の如き美しい髪、全てを見透かしているかの様な視線、妖しい微笑み...全てが美しかった。いざ戦ってみると僕は歯が立ちませんでした。だがそれによって彼女は僕の憧れになったんです!お願いします!彼女と共に、彼女の見る景色を僕も見たいんです!」
ロッシェは拳を握り締め目を輝かせ熱く語る。皇帝は語るロッシェの様子を興味深げに見ていた。
「君の彼女を想う気持ちは分かった。だが、直ぐに自分の思う通りに行く訳が無い、そこに辿り着くまでの過程がある。これは分かるね?」
「はい。」
「君には私の親衛隊に入ってもらい、そこで経験を積み、私が良いと思えば第七混成部隊に君を移そう。どうかな?」
「分かりました!それで、いつから親衛隊に行けば?」
皇帝は一度ニッと微笑んだ後、ロッシェの肩に手を置き軽快に告げる。
「今からさ。」
「え?」
「さあ行こうか!」
「え?え?今からですか!?」
ロッシェは皇帝に連れられ私室を出る。皇帝が手を一度叩くと、沢山の使用人が出て来る。
「彼に親衛隊装備一式を!さあ行きたまえロッシェ君。...これを。私からの推薦状だ。まあ階級等は着いてから決まるさ。ではな。」
「そ、そんな!えぇ...付いていけない...。」
皇帝は部下から受け取った紙に一通り書き、ロッシェに渡す。ロッシェは紙を持ったまま使用人に引っ張られ、開けられた大扉を通って玉座の間から出て行く。残った皇帝は玉座に戻り、静かに呟く。
「丁度人が足りてなかったから良かった...。」
「これが親衛隊の鎧ですか。流石は帝国軍認定の一級品...強度が違いますね。」
「我々はこれで。そちらの紙を隊員にお渡しして頂ければ話が進みますと思いますので。では。」
「ありがとうございました。...にしても皇帝陛下、何だか『丁度いいのが来た』って感じだったような...?まあいいか。」
親衛隊の鎧に着替えたロッシェは使用人と分かれた後、宮殿の直ぐ近くにある親衛隊基地に向かう。基地と言うが仲は宮殿同様華やかで、形を整えられた木に大きな噴水もあった。そしてその奥には白い建物が建っている。
「あそこだよな...。」
建物に向かって歩いていると、途中で真っ白な服に見を包む長髪の美しい女性とすれ違う。女性はロッシェとすれ違った直後、振り返り声を掛けてくる。
「あなた...新人さん?」
「ああ、僕ですか?そうです。今日から親衛隊になるんです。」
「おめでとう御座います。今日からですか。あら、自己紹介がまだでしたね。シュトルヴと申します。」
「ありがとうございます。ロッシェです。シュトルヴさんも親衛隊なんですか?」
「いえいえ。そんな大層な者ではありません。私は帝国軍で衛生兵の職に就いております。」
「なるほど。シュトルヴさんが衛生兵とは、まさに戦場の天使と言ったところでしょうか。」
「ロッシェ様はお世辞がお上手ですね。私なんかいつも友軍に煙たがられている厄介な衛生兵ですわ。」
「シュトルヴさんを煙たがる奴が居るんですか?」
「自業自得かもしれませんが、そうなんです。」
「そんな事があるんですか...。」
「お時間取らせてしまってすいません。それではこれで。いつかまた会った時は、よしなに。」
「ええ。では。」
シュトルヴは軽くお辞儀をした後軽く微笑み、ゆっくりと立ち去って行く。
「綺麗な人だったな...。あ、急いだ方がいいよな。」
本来の目的を思い出したロッシェは足速に親衛隊の建物に走る。大きい建物の中に入ると、入口付近に居た衛兵に止められる。
「待て、見ない顔だが何者だ。」
「これを。隊長殿に会いに来ました。」
「ちゃんと印が押してある...。了解しました、こちらへ。」
「ありがとうございます。」
衛兵に連れられ、今度は隊長の執務室と思われる部屋の前に連れて行かれる。衛兵が部屋のドアをノックする。
「ケリド隊長!皇帝陛下からの使いの者が来ております!」
「入っていいぞ。」
「失礼致します!」
ドアを開け中に入ると、奥に鎧を付けた若い青年が机の前に座っていた。衛兵はロッシェを部屋に入れると、直ぐにドアを閉めて退出する。
「それで、皇帝陛下からの使いの方が何かな?」
「使いでは無く...。取り敢えずこれを見て頂ければ。」
「これは...?」
ロッシェは皇帝から渡された紙をケリドに手渡す。ケリドは紙に書かれている文を読んだ後、少し驚いた様子でロッシェを見て来る。
「あのー、何か?」
「これには君を親衛隊の副隊長に任命すると書いてある。しかもちゃんと皇帝陛下の印が押されている。」
「なんですと!?」
「確かに私が隊長になったのも昨日なんだ。成程、これは信憑性がある...。分かった。君を親衛隊の新副隊長として歓迎しよう。宜しく頼むよ。そうだ、名前は?」
「ロ、ロッシェです。ロッシェ・ランドール。」
「ロッシェ君、我等と共に皇帝陛下をお守りし、帝国の更なる繁栄の為共に邁進しようじゃないか!」
「そう、ですね...。(陛下、話が少し違います!)」
ロッシェは背中を流れる変な汗の存在を感じながら、静かに同意するしか無かった。
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帝国軍本部 第四機械化大隊 隊長室
机を前にし、椅子に深く腰掛ける白衣を着た顔色の悪い男の膝の上に、少し身長の低い猫人の女性が座っていた。女性は白衣の男にべったりくっ付いており、喉からゴロゴロと音が鳴っていた。
「ロンス、明日は会議があるんだから早く寝ないと駄目ですよ?」
「分かっている。だがまだノルマを達成していない。もう少しやらせてくれ。」
「駄目です。結局長引くのが目に見えてます。『ここまでここまで』って伸ばすから寝不足になるんですよ!だからもう今日は私と寝るんです!」
「少し足が痛いな...キュレル、少し太ったか?」
「んにゃ失礼な事をレディに言いますか!?確かに最近美味しいケーキ屋さんを見つけましたが...!ちゃんと運動してましたし...ああでも!」
「心当たりしか無いじゃないか...。まあ、今日は一緒に寝るか。」
「本当ですか!?やった!」
「確かに疲れているからな。さて、風呂にでも入って寝るか。その前に酒か...?待てよ、その前に夕食取ったか...?」
「しっかりして下さいよ...。あ、お風呂も一緒ですから!」
「ん?まあいいが、この前みたいにはしゃぐとのぼせるぞ。」
「一体いつの話を...。」
ロンスとキュレルは一通り談笑した後、執務室の中にあった部屋の一つに消えて行った。
「やはり身長が伸びていないな。胸だけ大きくなって行っているな。」
「やめてー!!」
間話となりましたが、これ後々また書きたいな...。