死神の斡旋
遅くなりました。今回も宜しくお願いします!
「チッ...艦砲に耐えるバケモンなんて居たのかよ...ッ!」
「...終わらせよう。フンッ!」
クリスは大剣に魔力を注ぎ巨大化させた状態で剣をブーメランの様に投げて来る。
「なんてモノ投げやがる!」
「当てたか...だが、そうでなくてはな!」
「なっ!?ガハァッ!!」
トレイズは先程の46センチ砲で飛んで来た大剣を狙い撃つが、それを読んでいたクリスに接近を許してしまう。そしてクリスがフードの内側から出した双剣によって、瞬時にトレイズの体に幾つもの切り傷が生まれる。
「ぐあっ...!」
「今ので気を失って貰う予定だったのだがな。」
「うる...せえっ!」
「まだ動けるか。」
「クソがッ...!」
クリスはトレイズが落とした銃剣を蹴り飛ばす。銃剣を取るのを諦めたトレイズはサバイバルナイフを取り出しクリスに攻撃するが、即座に回し蹴りでナイフを弾き飛ばされる。
「お前が『死神』か...!」
「ほぼ正解だが...だったらどうした?」
「頼む...!俺はどうなってもいい...イシュにだけは...手を出さないでくれ...!」
「......お前はそんな事を言わない人間だと思ったが。」
「分からん。分からんが、俺のせいでイシュまで不幸になるのは間違ってるって分かるだけだ...。頼む...!」
「...その心意気は評価しよう。そして今は闘技大会だ。暫く眠っていろ。」
「な...ガハッ!」
朦朧とする意識を無理矢理繋げて懇願するトレイズを、クリスは腹に拳を撃ち込み気絶させる。
「最後は『クリス』選手の一撃で沈んだー!!二回戦第一試合は『クリス』選手の勝利!!なお、超弩級とも言える戦いで闘技場が使用不可能になってしまった為、第二試合は今日夜、もしくは後日となります。」
「ト、トレイズ様あっ!!」
「彼は医務室に運ばれる。行ってあげてくれ。」
「は、はいっ!」
控え室で試合を見ていたセルカとルイスも驚きを隠せない。
「ト、トレイズ!」
「ルイス、医務室は分かるな?案内してくれ!」
「わ、分かった!」
セルカとルイスは急いで階段を降り、医務室に走って向かう。医務室の中の個室に入ると、ベットで眠るトレイズとその横で看病するイシュがいた。
「ルイスさん!セルカさん!」
「容体はどう?」
「今は落ち着いて眠っています...まさかトレイズ様が負けるなんて...。私が止めていれば...!」
「イシュ、これはトレイズが決めた事だ。戦士の覚悟を貶める様な言葉は控えろ。」
「トレイズ様に覚悟があったとしても、こんな事になるなんて駄目なんですよ!ううっ...。」
イシュは涙を浮かべながら眠るトレイズの手を握っていた。そこにフードを被ったままのクリスが入って来る。
「トレイズはまだ寝ているのか。」
「クリスさん...。」
クリスは顔を覆っていたフードを外し、自身の素顔を見せる。美しい銀髪の長髪に『神』とも言える顔立ちが組み合わさり、息を呑む美しさがあった。
「貴女がッ!!」
「お前がイシュか、悪いが今はお前と争うつもりは無い。」
「そんな事を言っても...!!」
イシュは咄嗟に取り出したナイフでクリスを攻撃するが、人差し指と親指だけで止められてしまう。
「トレイズには治癒魔法を掛けてあるから死ぬ事は無い。それに、トレイズはお前の事をとても心配していた。『俺はいいからイシュには手を出すな』とな。」
「トレイズ様が...?」
「だから私はお前に手を出さない。私は絶対に戦士の願いを無下にはしない。」
「トレイズ様...ごめんなさい...。」
トレイズの願いを聞いたイシュはナイフから手を離し、またトレイズの側の椅子に座る。
「さて、トレイズ起きるまで暫く待つとしよう。」
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「うっ...なんとか生きてるみたいだな...。ん?」
「トレイズ様......んん...。」
「...可愛いな。」
トレイズが眠りから覚めベッドから上半身を起こすと、側にはイシュがベッドにもたれて寝ていた。左を見ると奥のソファーでセルカと見覚えの無い銀髪の女性が互いにもたれ合って寝ており、手間の椅子にはルイスがイシュと同じ様な態勢で寝ている。
「おーい。イシュ、起きてくれ。」
「ははい!!おはようございますトレイズ様っ!!」
「うおお。びっくりした。」
「トレイズ様!!ご無事で良かった!イシュは心配でした!」
「その割には可愛い寝顔だったがな...。」
「あう。それは...私も疲れましたし...?ね?」
「分からんがな。ルイスとセルカも起きろ。それと、そこの銀色の。」
側で寝るルイスとソファーで寝るセルカにも声を掛け、銀髪の女性にも一応声を掛けておく。
「トレイズ、目を覚ましたんだ。良かった。」
「心配を掛けたな。」
「そんな...これはボクのせいでもあるしさ。」
「ルイスには機会をくれた事にも、あの事を話してくれた事も感謝してる。ありがとう。」
「そう言われると照れるな...。」
「ハッ!起きたかトレイズ!」
「ムッ!トレイズ!貴様には聞かねばならん事がある!」
セルカと銀髪の女性は同時にソファーから立ち、トレイズに迫る。
「銀色の。お前は誰なんだ?」
「私の名はクリス。闘技大会の時も言ったが、ご名答。『死神』だ。」
「お前女だったのか。それに『死神』か...。」
「今回は異世界から来た貴様の『目的』を聞きに来た。」
「目的?......強いて言うなら『元の世界に帰る事』ぐらいか?」
「本当にそれだけなのか?」
「別にこの世界で何か起こそうなんて考えて無いぞ?」
「...そうか、分かった。次の質問だ。貴様はこの世界に召喚された。誰に呼ばれたか分かるか?」
「俺が呼ばれた?誰にだ?何の為に?」
「やはり分からないか。それでは...『主』『神』『純潔会』この三つのキーワードに聞き覚えが無いか?」
「全部あるが...まさか?」
「大体察しただろうが、貴様を呼んだのは恐らく『ギルテカリス』だろう。奴はこの世界を人の手で滅ぼさせるつもりだ。そして、過程にエッセンスとして異世界からの旅人を思いつき、召喚した。その最初の旅人がお前だ。」
「『ギルテカリス』...。主神だなんだが何故そんな事を?」
「分からん。だが、貴様は強力なスキルと武器を持っている。十分この世界に混乱を齎せる程のな。」
「アンタは『死神』だろ?何でそんな事気にする必要がある?」
「私は人が好きなんだよ。それに、正しくは『死神』では無く『天上神』だ。民衆に恐れられてしまって名前が変わってしまっていただけで、そんな物騒な名前では無い。断じて。」
クリスは名前が変わってしまった事に結構傷付いている様で本来の名前を強く推してくる。
「もう俺に用は無いんだろ?」
「いや、貴様には頼みたい事がある。」
「何だ?」
「私と共に打倒ギルテカリスに協力してくれ。代わりに貴様の目的を手伝おう。」
「最初からそのつもりだったな?」
「おそらくな。」
「俺に拒否権は無さそうだな。いいぜ。お前らもいいだろ?」
側に居たイシュとルイス、そしてセルカに同意を促す。
「私はトレイズ様について行きます!」
「ボクはトレイズの決定に従うよ。」
「オレもこの際共に行こう。神との戦いを特等席で最後まで見届けてみたいからな。」
「OKだ。それで、具体的には何をすればいい?」
「帝国軍に入り『純潔会』殲滅、及び内部の粛清にあたってくれ。奴らは何をするか分からん。今はそれが優先だ。闘技大会はカレンに中止させる。話は終わりだ。また会おう。」
そう言うとクリスは黒い霧に包まれた後、その場から姿を消してしまう。
「行っちゃいました...。」
「俺は疲れたからそのまま寝るぞ...まだ深夜だった...。」
「そうだったね...ふわわ...。」
元の世界に帰るのはまだまだ先になるなと感じつつ、トレイズは再び眠りにつく。
そろそろトレイズ編行ったん閉じるかもですが...果たして書けるかどうか!




