一撃必殺
遅くなりました。夜に上げたい...!
「よおルイス...俺は...やった、ぜ。」
「凄いや!!ジュードありがとう!」
「机に水置いとくから飲めよ?そのまま死んで貰っちゃいざという時困るからな。」
『姉貴を守る会』の旅団結成記念日から四日後、トレイズ達は再びジュードの鍛冶屋を訪れていた。満身創痍で椅子に座るジュードから刀を受け取ったルイスは、嬉しそうに何回も刀を見る。
「ルイス様、お待ちしておりました。先日トレイズ様がデザインされた服、仕上がっております。ささ、こちらへ。」
「どんな服なのかな~!新しい服を買うのは久しぶりだから楽しみだよ!」
「きっと気に入って頂けると思います。」
続いて『グレム洋服店』に向かい依頼していた服を受け取りに向かうと、店長のハーシーが待っておりそのままルイスと共に奥の部屋に消える。
暫くすると、トレイズのデザインした『セーラー服』に着替えたルイスが出て来る。
「どうかな?似合う?」
「ああ。よく似合っていると思うぞ。」
「ルイスさん可愛いです!私も着たいです〜!」
「ハーシー、もう一つ作っておいてくれ。大体同じサイズで良い。色は白だ。」
「承知致しました。トレイズ様は良いセンスをお持ちの様で...。」
「決断早すぎやしないか!?後気持ち悪いよお前!」
店を出てルイスの武器の試し斬りをするべく、依頼を受ける為ギルドに向かう。セルカは明らかに乗り気では無い。
「トレイズは何でこんな武器を知ってたの?それに、トレイズのいた世界には銃があるのに刀なんて使うの?」
「刀は良く斬れる事で俺の世界でも有名だったしな。何よりデザインが良い。刀はたまに使うぞ。狭い空間で銃を咄嗟に取り出せない時とかな。後、お前の着てる『セーラー服』って言うそれも、友人に見せてもらったのを覚えてたから作れた。つまり、俺の知識はあまり関係無いって訳だな。」
「へえ『セーラー服』って言うんだこれ。刀もいい感じだし...。」
「私も早く着てみたいな~!」
「四日振りのギルド...憂鬱だ...。」
現在のルイスは黒のセーラー服に専用のベルトを着け、腰の右側に刀を挿していた。
(なかなかマニアックな格好になったな...。マックスが見たらさぞ喜ぶだろうな...。)
ルイスの格好がマックスの好みをど真ん中で貫いているなと考えながら歩いているとギルドに着く。ルイスはギルドに入るなりカウンターに走り受付嬢に話し掛ける。
「ねえ!何か厄介な魔物の依頼でもないかな?出来れば歯応えのあるのが良いなー!」
「ルイス様には皇帝陛下からの直接依頼が御座います。内容は『ガイアベビーの討伐』となっております。出来るだけ傷を付けずに仕留めて欲しいと。ルイス様は討伐後は報告のみで報酬の受け渡しが可能です。」
「了解!それで決まり!」
「かしこまりました。」
「試し斬りの相手は見つかったのか。」
「ガイアドラゴンの幼体が間違えてダンジョン内に来たらしいんだよね。それで、それの外殻が欲しいってさ。」
「なるほど。つまり一撃で決めろって事か。」
「そゆこと~♪ささっ、行こうか!」
男性冒険者達からプレゼントを半ば押し付けられていたセルカを救出し、逃げる様にギルドを出る。
帝国は広い。ナリア大陸の四割を占める広い土地には幾つものダンジョンがある。中でも帝都は難易度の高いダンジョンに囲まれており、ダンジョンから生まれる豊富な資源のお陰で発展した程である。
「今回の依頼はそのダンジョンの中でもかなり難易度の高い所だね。正直面倒で奥まで行ったことないから知らないけど、まあイケルでしょ!」
「根拠の無い自信だな。」
「ボク、そうそう負けないし!」
「援護は任せろ。関節部を狙えば外殻の損傷は防げる。」
「私達は暇そうですね。」
「オレ達は狙って攻撃するのが難しいからな...。仕方が無い。」
トレイズ達は帝都内にあるダンジョン『深淵』の通路を歩いていた。帝国内指折りの難易度を誇り、中級冒険者の死亡率が最も高い登竜門的存在のダンジョンだった。宝石の見つかる確率も高く人気のダンジョンなのだが、この時だけ妙に人が居なかった。
「人払いされてるなあ。横取りなんてされたらそりゃ依頼主の七星が怒るか。」
「カレンは皇帝に向いている様な気がして来たな。一年でこんだけ纏められたら凄いモンだ。」
「そうだよねえ。......見える?アレだね。」
「確認した。脚を狙撃して崩す。ルイス、カウントをする。一撃で決めろ。」
「まだ馴染ませて無いから上手く出来ないけど、一撃で決めるくらいは!」
前方、少し離れた位置に静かに佇むガイアベビーを確認したトレイズは伏せて銃剣を構え、ルイスは習った通りに居合切りの構えを取り魔力を溜め加速に備える。
「3...2...1...FIRE!」
『グオオオオ!!』
「ハッ!」
銃剣から徹甲弾が放たれ、ガイアベビーは右脚を撃ち抜かれ体勢を崩す。体勢を崩し倒れる瞬間、一気に加速したルイスの居合切りでガイアベビーは頭を落とされ一瞬の内に絶命する。
「良い腕だ。」
「まだ魔力が馴染んで無いし名前も決めてないから少し甘かったかも。でもノルマ達成かな?」
「そうだな。イシュ、セルカ、もう大丈夫だ。起きていい。」
「仕事が早いな。」
「流石です!」
「人が来る前に撤収だ。長居すると帝国の利益が少なくなる。」
「了解了解~。」
ガイアベビーの死骸を放置し足早にダンジョンを後にする。ギルドに戻り、担当した受付嬢に討伐の報告をして報酬を受け取る。
「なかなか貰えた。」
「これといった使い道も無いがな。」
「宿屋のご飯が増えますか??」
「変わるのはそれぐらいだろうな。」
「ボクはカレンに部屋を借りて刀にボクの魔力を馴染ませなきゃ。今回の報酬は渡しておくね。明後日の早朝に宿に来るから!じゃね!」
「ああ分かった。......さて、明日はケーキでも食べに行くか?」
「行きましょう!この前はゴタゴタで食べれませんでしたから!」
「そう言えばそうだったな。アレはオレのミスだ...。」
「気にするな。さ、行くぞ。」
「はい!」
翌日、トレイズ、イシュ、セルカの三人は二人がこの前食べ損ねた『シャナーニュ』のケーキを食べに商店街エリアに向かった。 一方ルイスはカレンの私室奥に篭もり、刀に黒い魔力を注ぎゆっくりと馴染ませていく。
「ふううう...。」
「あまり無茶はしないでよ。そんな事やるの久しぶりなんだし。」
「久々に大会が楽しみだからね...!多少の無茶は承知さ...。」
「ケーキ美味しいです!」
「まさかここまで美味しくなっているとは...人間は凄いな...。」
「紅茶も旨いな。いい店を見つけた。コーヒーがあればな...。」
それぞれが自分の一日を思い思い楽しんだ後、再び朝が来る。帝国の未来を変える闘技大会の朝が来たのだ。
最近色々忙しい^^;