『俺』
戦闘パートはまだ慣れません...。しかし今回も宜しくお願いします!
「はあああああっ!」
「うおおおお!」
カレンの拳とルイスの剣がぶつかり、ルイスの持つ剣は黒い粒子となって霧散する。ルイスは瞬時に後退しながら新しく剣を二本作成する。
「このお!」
「終わらせる!"拳撃強化・炎華"!」
「まだ速くなる!?」
すぐさま追撃して来るカレンは赤い光を帯びており、素早く移動する度に赤い線が見えた。
「食らえっ!」
「ぐっ...!」
「まだだ!」
「甘い!」
「なんだって!?」
衝撃波を伴う加速と共に放たれる正拳突きを、ルイスは重ねた二本の剣で辛うじて受ける。続く追撃は素早く躱し、後退する瞬間肩を切りつける。
「流石ルイスだ...。」
「カレンこそ、いつの間にそんなに強くなったんだよ...。」
「特訓していたら楽しくなって、ね!」
「そう、かい!」
離したはずの間合いを瞬時に詰めて放たれる拳撃を剣で受け流す。受け流した瞬間にカレンの拳から爆発が生まれ、ルイスの剣は霧散する。
「面倒だなあ!」
「そういう魔法でね!"プロミネンスピラー"!!」
「避けられないか。ならば斬り裂くッ!!」
「そんな!?」
カレンの拳から放たれた巨大な炎の柱をルイスは黒い魔力で作った剣から撃つ衝撃波で真っ二つに斬る。衝撃波は魔法を放ったカレンにまで到達し、カレンは回避と引き換えに魔法の中断を余儀なくされる。
「まだだ!まだ終わらない!」
「流石に往生際が悪いぜ?」
「負けず嫌いなのさ!"限界突破"!」
「まだやるってか!」
「当然だッ!」
魔言を唱えたカレンの体は赤い煙の様なものを帯び始める。カレンは地面を滑るように移動しながら突撃して来る。
「ぐっ...!」
「飛んで行けえええええ!!」
「何だってっ!?」
更に威力を増したカレンの拳撃を黒剣で受け止めるが、カレンの拳から発せられた爆発は先程とは比べ物にならない程凄まじく、ルイスは剣を破壊された上で吹き飛ばされてしまう。ルイスは背中から出した羽で姿勢を制御し、辛うじて着地する。爆発のダメージか、ルイスは苦しそうに呻きながら膝を付く。
「羽が無きゃ死んでたかな...うぐっ...!」
「これで終わりだ...!!」
「この一撃に全てを賭ける...!」
カレンは両方の拳に炎を溜め、赤いオーラで線を作りながら加速して突撃して来る。対するルイスは真っ直ぐ立ち、手に黒い剣を作り静かに佇む。
「行っけええええ!」
「良くやったけどね...!カレン、君はまだまだ甘いよ。」
カレンの拳がルイスに直撃する寸前、ルイスは一瞬だけ黒い霧に包まれたと思うと、次の瞬間にはカレンの後ろに立っていた。ルイスの手から剣が霧散すると同時にカレンのオーラや煙のような物は消え、足や手から出血しながらルイスに背を向け膝を付く。
「躱されちゃったか...少し、無茶し過ぎた...魔力切れだ...。」
「渾身の一撃は外れた後の事も考えろって、普段から言ってたんだけどな。」
「熱くなって忘れてた...よ...。」
そのままカレンは気を失って倒れる。状況を理解した観客達は割れんばかりの歓声を上げ、司会者もハッとした様子で大会の勝者を発表する。
「ルーキー同士の対決を制し、見事優勝を果たしたのは『ルイス』選手!!」
「なかなか、楽しめたんじゃないかな。」
『ボクはカレンを倒して大会で優勝した。そして、ボクとカレンが今に至る理由となる事件は、この大会の一年後に訪れた。白金ランクも近いんじゃないかって時にね。』
「なあ、ルイス。」
「どしたの?そんな神妙な顔して。」
「実は...マルクが変な男と話してるのを見たんだ。」
「帝国軍の奴じゃないの?」
「おそらく違う。帝国軍の奴は同僚と挨拶する時に鎖骨に手を当ててお辞儀をしたりしないよ...!」
「それって...そんな...。」
「ルイス、何かが起こる。」
「そうだね。少しばかり気になる事があり過ぎる...!」
『神ギルテカリスを信仰する主神教の教徒は、同じ教徒と会った時に鎖骨に手を当ててお辞儀をするんだ。何でマルクが?って調べている時に事件は起こった。そう、皇帝暗殺事件さ。』
宮殿内施設で調べ物をしていたルイスとカレンは戦闘音を聞き、玉座の間に走る。玉座の間では腹から血を流し絶命する皇帝の横に、黒い服に身を包んだマルクが立っていた。戦闘があったのか、既に何人かの兵士の死体が幾つも転がっていた。
「ルイスにカレン...何でお前らが此処に?」
「マルク、どうしてだい?君に何があった?」
「俺は...ルイス、お前の事が好きだった。だからこうなった。こうしないと俺は、俺の信仰は消えてしまう...!」
「ここで喋る気は無いって事?」
「そうだ...。一発で死ななかったら全部話そう。俺の知っている事、そしてどうしようもない俺の恋心もな...。」
「でもごめん。マルク...君は、タイプじゃないかな...。」
「お前のそういう所も好きだった。だが、失う物はもう何も無い......行くぞ。」
マルクは瞬時にルイスに詰め寄り、両方の長袖からダガーをそれぞれ取り出し切り掛る。
「速いね。」
「その為に身を捧げて来た。だが、俺はお前を知って『疑問』という物を初めて抱いた。俺は知りたい...俺は今まで何の為に罪の無い『異教徒』を。子供を殺して来たのかを。俺の人生は何だったのかを。」
ルイスとマルクは会話を続けながら驚異的な速さで剣戟を繰り広げる。ルイスは要所で黒い魔力による推力で剣を加速させ、マルクは両手のダガーを使い、少ない手数による致命傷を狙う。
「マルク!僕は信じていたのに!!」
「怒りに任せて拳を振るうな。もし状況がもう少し違えば、お前とは酒を飲めたかもしれないな。」
「ぐああっ!」
「カレン!」
激昂したカレンはマルクに拳撃を吶喊するも、避けられた上でダガーによる攻撃を受けてしまう。
「フッ!」
「はっ!」
「今のが見切られたか。」
「ボクも出来るからね!」
「流石だな。ふっ!」
マルクの投げた数本のダガーをルイスは瞬時に見切り、すべて切り落とす。ルイスはお返しとばかりに黒い魔力で作った剣を放っていく。マルクはそれを最小限の動きで避ける。
「俺はお前に殺されるか、お前を殺して死にたい。どちらかを達成する事で俺は初めて自らの意思で何かを成した事になる。例えそれが主の御心に背く事であってもな。」
「歪んでるね。マルク。」
「そうかもな。だがもう何も信じられない。今まで信じて来た物、心の拠り所が『無かった』と知った。俺は、俺じゃなかったんだ...。」
マルクは唐突に腕を交差させたかと思うと、元の位置に腕が戻った時には両手にダガーが三本ずつ握られていた。
「だから、俺はお前さん達の水先案内人になりたいのさ。」
回想シーンが長引くのは此処で済ませておこう的意味合いが、なきにしもあらず。