蛹の夢
ルイス視点?というか回想です!少し変かも知れませんが、今回も宜しくお願いします!
「お父さん!早く早く!」
「走ると他の人にぶつかるぞ!」
「あの娘ったら元気ね。誰に似たのかしら。」
「君に似たんだろう?」
「お母さんも遅いよー!ほらお父さんも早く!」
「分かったから少し落ち着きなさい!」
「うふふ。あらあら。」
幸せな光景だ。家族の幸せな時間。しかし、その光景は突然炎に包まれる。周りは赤に染まり、あちらこちらに様々な死体がある。
「お父さん!お母さん!起きてよ!なんで!?なんでなの!!なんで!!」
血に染まる二つの死体を前に少女は泣き叫びへたり込む。泣きじゃくる少女の耳の側で誰かの声がはっきりと聞こえる。
「お前のせいだよ。」
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「違うッ!!!」
「うおっ!どうしたんだルイス。酷くうなされていたが悪い夢でも見たのか?」
まだ日が昇る前の早朝、突然跳ねるように起きたルイスは汗をびっしょりとかき、呼吸も荒かった。
「何でも、無いよ。ちょっと昔の夢を見ただけ。」
「昔の夢か。それは例えば......誰かが死んだりする夢だったりしないか?」
「......何で、わかるの?」
「当たってたのか。それなら、俺も同じ経験をしてる。良かったらお前のその話、聞かせて欲しい。」
「何で?」
「俺はルイスの事を何も知らない。仲間の事を知らないなんて無責任過ぎるからな。」
「良いけどさ、ボクが話したらトレイズの事も話してよ?それと、イシュとセルカには内緒。起きたら中断するから。」
「分かった。約束しよう。」
「じゃあ、話すよ。」
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ボクはアスカントと帝国の国境近くの街出身なんだ。父は街の役人で母は何処かの名家の人だった。
街の学校にも行けて友達も居る、そんな普通な子供だった。両親は誕生日に街の百貨店にプレゼントを買いに連れて行ってくれたんだ。ボクの十五の誕生日に事件は起こった。
「お父さん!早く早く!」
「走ると他の人にぶつかるぞ!」
「あの娘ったら元気ね。誰に似たのかしら。」
「君に似たんだろう?」
「お母さんも遅いよー!ほらお父さんも早く!」
「分かったから少し落ち着きなさい!」
「うふふ。あらあら。」
「...緊張、してるのかい?大丈夫さ、あの娘ならきっと自分の力に出来る。」
「ありがとう。...そうね。信じてみるわ。」
母さんは何だか緊張した様な表情だったのは憶えてる。先に歩いてて少しした時に、唐突に爆発音がした。
「何だ今の音?」
「煙が上がってるぞ。火事か?」
「ま、魔物だ!魔物が侵入して来た!」
「そんな!?警備は万全なんじゃ!?」
「逃げろー!襲撃だー!」
暫くすると周りから人の悲鳴や怒号が飛び交い始めた。百貨店のある方を見ると魔物が人を襲っているのが見えたんだ。ボクは怖くて動けなかった。
「ルイス!危ない!」
「お父さんっ!」
「...ルイス、お前が...希望なんだ...生きろ!...ぐっ!」
「お父さん!大丈夫!?嫌!ダメ!死んじゃダメ!」
父さんは後ろから襲おうとした魔物からボクを庇って死んだ。
「.....お父さんは貴女に生きろと言ったわ。だから、今は生き延びるの。良い?」
「でも、でもお父さんが...!」
「お父さんは貴女を守って死んだの!だから、貴女が死んだらダメなの。」
「ううっ。わ、分かった......お母さん後ろ!!誰かいる!!」
「え?」
「死ね。裏切り者が。」
突然現れた白い礼服を着たフードの男に母さんは短剣で刺されて死んだ。ボクのせいで母さんも失った。
「フンッ!裏切り者には相応しい末路だな。早く『黒』を回収せねば...。」
「嫌あああ!お母さん死なないでよお!私を置いて行かないでよお...。何で!?お母さんが何をしたの!!」
「子供を作っていたとはな。安心しろお前も直ぐに母親の元に送ってやる...。」
「絶対に許さない...!許さない許さない許さない!!殺してやる!殺してやるッ!!」
「その魔力......!まさか!シルヴァァァァ!」
「お前が...母さんの名前を...呼ぶなああああああああ!!!」
「この順応性は予想以上だ...!ああ、あああ主よ!!」
母さんを『裏切り者』と呼んだ男を怒りに任せて八つ裂きにしたんだ。その時から自由に『極黒』を扱える様になったんだ。結局、この事件での生存者はボクとカレンだけだった。
「カレン!生きてたんだ!」
「ル、ルイスこそ生きてて良かった...。これからどうしよう...。叔父が死んだのは良かったけど家も無くなっちゃったから住む所が無いよ...。」
「取り敢えず食べ物と寝る所が必要だよね...。」
「ルイスのお父さんとお母さんは...?」
「死んじゃった。でも、お父さんとお母さんは私に生きろって...。だから、私は死ぬ訳にはいかない!」
「ルイスは強いなあ。僕には真似出来ないよ。」
「そんな事.....そうだカレン、冒険者にならない?」
「ぼ、冒険者?何で?」
「手っ取り早くお金稼げるから、かな?」
「えええ!?冒険者になっても戦えないのに!?」
「私変な魔法使える様になったんだ。だから戦えるんだ!カレンもきっと何か出来るから、やろ!」
「女の子にそんな事言われて引き下がれる訳無いでしょ!やるけど、死なない程度にね!」
「カレンもやっぱり凄いよね!そういう所!」
話していると懐かしいな。カレンは両親に捨てられて親戚の家で暮らしてたんだ。この時はまだ気の弱い所が言動にも出てたんだよね。
その後、帝国兵に事情を聞かれたりした後にボクとカレンは冒険者になったんだ。幸い父さんの名前で銀行のお金を幾らか引き出せたお陰で準備金にはなった。案の定、冒険者になってから大変だったよ。
「うわあああ!ル、ルイス助けて!」
「前衛の拳闘士が下がってどうするの!私も前衛だけど!ほら、相手はただのゲイルウルフなんだから!ていっ!」
「凄いなあ...ルイスの黒い魔法みたいなのが使えたらな...。」
「カレンも何か出来るんじゃない?」
「僕が?出来るのは魔力で体を強化する位かなあ。」
「え。なにそれ。どこ情報?」
「昔読んだ何かの本さ。『一部の人間は魔力を全身に巡らせて、それにより驚異的な身体能力を発揮できる。』ってね。」
「へぇ~。ふん!おお?おおお?体が軽い...!こりゃ凄いや!」
「えっ何で出来てるの!?僕何となく出来るようになるまで一週間掛かったのに!」
「まだ出来てるか分からないけど、ね!」
「石一個でゲイルウルフ一体......。ルイスには敵わないよ...。」
「カレンは拳闘士だよ?カレンにはカレンの強さが絶対にあるんだから!自分なりの戦い方を見つけてからが本番だよ?」
「焚き付けるの上手いよなあ...。やるしか無いって事ぐらい分かってるけど!」
その後の一週間位は魔力での身体強化の訓練と、黒い魔力を使う訓練に使った。そういえば、子供だけの冒険者で中々死なないボク達はかなり珍しがられたなあ。
ようやくボクが『極黒』を自分の意思で自在に扱える様になって、カレンも魔法を使う拳闘士として戦えるようになってから更に面倒な事続きだったよ。
「昇格試験、ですか。」
「やるしか無いんだよね?」
「ようやく冒険者になれてきた気がするし、やるしか無いね!」
「試験かあ、緊張するなあ。」
事件から一ヶ月での異例の昇格は簡単には行かなかった。色々な意味で、ね。
変な切り方になりましたが、そのままつなげる形で続きは投稿しようと思います。