凄いや!セルカさん!
タイトルは気にしないでくだs
今回もよろしくお願いします!
時は少し遡る。
「甘い物ですよセルカさん!何を食べましょう〜!」
「甘味か。そんな物は久しく食べていないからな、オレも興味がある。」
「でも甘い物が食べれる所って何処にあるんでしょうか...?」
「喋れはするが読み書きは出来んのでな...。人に聞くしかあるまい。」
「そうですね!すみませ〜ん!」
「行動が早いのは良いことだがな...。」
イシュは素早い足取りで近くいた若い女性を捕まえる。
「な、何?あら可愛い...じゃなかった。何ですか?」
「この近くに甘い物が食べれる所を探しているのですが、何処か良いところはありませんか?」
「甘い物?それなら、『シャナーニュ』ってお店がオススメよ!あそこのケーキは絶品なの!」
「ケーキ...!そのお店は何処にあるんですか?」
「ここを真っ直ぐ行けば、真っ白の石造りの建物があるわ。そこが『シャナーニュ』よ。」
「ありがとうございます!さあ行きましょう!」
女性は自分の来た道を指差し、建物の特徴を教えてくれる。女性の指差した方向には商店街があり、様々な店が並んでいた。
「それにしてもケーキか。何百年か前に食べた事があるが、随分とパサパサしていたぞ。」
「そ、そうなんですか?でもでも、食べてみないと分かりませんよ?」
「となると、オレが食べたケーキを作った者は相当下手だったのだろうか...。」
「そう思うしかありませんね...。」
商店街を歩いていると、あの女性に教えられたとおり真っ白い石造りの建物があった。
「ここでしょうか。」
「分からんが、取り敢えず入って確認しても良いんじゃないか?間違っていれば出るだけだ。」
「そうですね。...すみませーん。」
「いらっしゃませ。何名様でしょうか?」
「あ、あの、ここ『シャナーニュ』で合ってますか...?」
「はい。こちらケーキと紅茶の『シャナーニュ』で御座います。」
恐る恐る扉を開けると、若い男性のウエイトレスが出て来る。緊張気味に店の確認を取ると、無事正解が返ってくる。
「良かった〜!2名です!」
「かしこまりました。こちらのお席にどうぞ。」
イシュはホッと胸をなで下ろすと元気良く人数を伝え、席に案内される。店内は淡い魔力灯の光によって暖かい雰囲気が漂っており、非常にゆったりとしていた。
「いいお店ですね。」
「そうだな。ところで、メニューがあっても読めんな。おいそこの。」
「は、はい。ご注文でしょうか?」
「そんなところだ。オススメのケーキを一つと、紅茶を二つ。一つには砂糖とミルクを。」
「かしこまりました。」
近くにいた女性のウエイトレスを呼び止め、手早く注文を済ませる。
「セルカさん、手際良いですね!」
「料理名が長過ぎて分からん店もあったからな。この方法はかなり役に立つ。実際、何が出てくるか分からんのだがな。」
「大丈夫でしょう!きっと美味しいですよ!」
「フフッ。だといいな。」
注文した物が来るまでの間、イシュとセルカはしばしの談笑を楽しむ。イシュは故郷の話を、セルカは今までの戦いの話をする。そして話題は大会とトレイズの話に移る。
「セルカさんは大会に出られるんですよね?」
「出るぞ。竜になれんから大した結果は出せんだろうがな。」
「そんな事無いですよ!セルカさんはお強いですし!私は参加出来ませんから、特等席からトレイズさまの活躍を観させて頂きますからね!」
「そうするといい。...トレイズか。アイツは異世界から来たと言っていた。だとしたら何故...?」
「何故、とは?」
「基本的に星と言うのはその星を管理する神が、その星の民が別の星に行く事を規制している筈なんだよ。」
「トレイズ様は元の世界の神様の規制から逃れて出て来たと?」
「ああ。だが、おそらく偶然では無いだろうな。神を欺けるのも神という事だ。オレにはトレイズだけとは思え無い。恐らく二人目、いや三人目も来るかもしれん...。だとしたら本当に世界は変わるぞ。色々な意味でな。」
「な、なんだか難しい話ですね...ムムム...。」
「あくまでオレの予測だ。ほとんど兄様の受け売りの様なものだしな。」
イシュとセルカが話していると、店の扉が開く。入って来たのは見るからに重そうな鎧を着けた大男とその子分らしき男二人だった。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「おう!三名だ!ここは最近出来たんだな?」
「はい。当店が開店したのは丁度先月になります。」
「中々いい店だ...。今日オススメのケーキを一つ!それと紅茶を三つだ。」
「ありがとうございます。では、あちらの席でお待ち下さい。」
(あの人ケーキ食べるんですか!?)
(後ろの二人は見るからに嫌そうだがな。)
大男は顎を擦りながら手際良く注文し、案内された席に着く。それを見ていたイシュとセルカは何とも言えない驚きに戸惑い、小声でその驚きを共有するしか出来なかった。セルカの言う通り、子分らしき二人はなんとも居にくそうな顔をしていた。
「ブリドさん、やっぱり酒場に行きましょうよ...。朝早くから依頼だったからもうお腹が...。」
「そうですよ...。何でケーキなんですか...まだ昼のメシも食べてないのに...。」
「うるせえ!ならお前らもケーキ食えばいいじゃねえか?」
「すきっ腹にケーキは重いっすわ...。なあカッツ?」
「セライの意見に同意...。」
「なら静かにしてろ!」
「「ええ...。」」
「こちら紅茶になります。」
ブリドと呼ばれた大男は、力無く抗議する子分、カッツとセライを大声で黙らせる。そんな男の元に紅茶が運ばれている。
「いい香りだ。ルクエ産か?」
「はい。こちらの紅茶、ルクエで昨日取れたばかりの茶葉で淹れています。」
「いいねぇ♪」
「はあ、美味いけど水が飲みてえ...。」
ブリドが紅茶を口に含めながら店内を見回していると、同じく紅茶を飲んでいたセルカと目が合ってしまう。
「そ、そこの!」
「なんだ?」
「綺麗な髪だと思ってな...その、名前を聞いても良いか?」
「セルカだ。」
「セルカ、だな!時間があったら俺とその、お茶なんてどうだろうか?」
「ありがとう。だがその様な時間は無くてな。人を待つついでにここに居るだけだ。」
「ど、どうしてもか!?俺は金ランクの冒険者でここらじゃ名は知れてる!その待っている奴ってのは!」
「まず名誉をひけらかす様な男に、女は付いて行かないぞ?男なら、力ずくででも連れて行くものだと思ったが...どうなんだ?」
「なら、力でアンタを俺の物にすればいい訳だ...!良いぜ。表に出な!」
「話が早くてなによりだ...!ふふふ!」
(セルカさん!まずいですよ!)
(心配するな!オレは負けん!)
(そうじゃないですよ!?)
唐突に誘って来たブリドをセルカはあしらった上に煽ってしまう。イシュは慌てて止めるが、セルカは何故かやる気に満ちていた。
扉を開けて店の外に出る。セルカとブリドは互いに距離を取り戦闘態勢に移る。なにかに気付き始めた民衆や冒険者達が、円形にセルカとブリドを囲む。
「おい...アレってブリドさんだよな...?」
「ああ。多分。でも、あの美人は誰なんだ?喧嘩の相手になるのか?」
「ブリドさんやっちまえ!」
次第にギャラリーは増え、ヤジを飛ばす人も出て来る。ヤジからブリドの名前が出て来る辺り、成程ブリドが胸を張るのも分かる。
「中々有名らしいな。」
「へへへ、俺だって少しはできるぜ?」
「それは楽しみだ......行くぞッ!」
「応ッ!」
互いに拳を握り締め前に出る。ブリドの正拳がセルカの顔面に迫るが、セルカはそれを避けた上でブリドの懐にあっさりと入り込む。
「速い!?アンタ一体...!」
「フッ、この程度でオレは手に入らんぞ?ではな!」
そのままブリドの腹に拳を撃ち込む。ブリドは一撃で気を失い倒れ込み、セライとカッツに支えられる。
「ブリドさんが一撃...!?何者なんだ?」
「美人な上に強いなんて...惚れた...!」
「一体何者なんだ!?」
「な、名前は!?」
「セルカだ。」
「セルカ...!」
「うおおお!セルカ様ー!」
「なんなんだコイツらは...。イシュ、どこだ?」
「やめて下さい!早く離さないと痛い目に会いますよ!」
何故か人気になっている事に溜息を付きながらイシュを探していると、どこからかイシュの抗議する声が聞こえる。声の方向に行くと、何やら良い服を着た若者がイシュに詰め寄っており、その若者の周りを鎧を付けた五人ほどの冒険者が囲っていた。
「貴様、その手を離せ。」
「セルカさん!」
「女、お前がこのエルフの持ち主か?そのエルフを買おう。宝石貨十枚でどうだ?奴隷に払うには破格だぞ?」
「ふざけた事を抜かすなクズが。焼くぞ。イシュ、さっさと行くぞ。」
「は、はい!」
「ま、待て!私が誰か知らんのか!?」
詰め寄る若者を威圧して退け、イシュの手を取り鍛冶屋への道に戻ろうとすると若者は食い下がって来る。先程の野次馬の中から、若者に楯突くセルカを心配する声がチラホラと聞こえる。
「知らん。知りたくも無い。」
「わ、私は帝国七星の一柱であるアルム家の長男、クリム・アルムだぞ!その物言い後悔させてやる!やれっ!」
「旦那、黒髪の女は好きにしてもいいですかい?」
「ああ好きにしろ!」
「聞いたな!かかれ!」
若者の指示で周りの冒険者達が武器を出しながらゆらゆらと迫る。
「下衆は何処まで行っても下衆か。イシュ、かなり下がって合図を出すから目をつぶれ。少し、眩しいかもしれない。」
「え!?わ、分かりました!み、皆さん下がってください!それから合図が出たら目をつぶって!」
イシュに指示を出し下がらせ、体の芯に魔力を静かに悟られぬ様込めていく。すると、先頭のリーダーらしき冒険者が下卑た笑い方をしながら歩み出て来る。
「へへっお前一人で何が出来んだァ?今降参してエルフを引き渡せば、性奴隷で勘弁してやるよ!ギャハハハ!」
「口を開くより先に相手の動きを見ろ三流のゴミが。イシュ、目をつぶれ!」
「は、はい!皆さんも!」
イシュに指示を飛ばし、体に込めた魔力を瞬間的に解放する。
「消えろ..."炎光騎士"。」
セルカの体から眩いばかりの光が発せられ、一瞬の間の後爆音の様な音が鳴る。イシュ達やギャラリーは強過ぎる光から身を守る為、目をつぶり手で目を塞ぐ。光が収まり目を開けると、気絶したクリムと冒険者達が転がっていた。
「ふう...殺さずにとは面倒なものだ。」
「一瞬でしたね...やっぱりセルカさんは凄いです!」
「この位ではオレも少し収まらんな...。まだ居るのだろう!?次はどいつだッ!」
「セ、セルカさん!?私は大丈夫ですからトレイズ様の所に...あっ。」
「お前ら、何してんだ?」
「「あ。」」
この後事情を話してトレイズは納得して次の用事に向かうのだが、この時セルカは自分のファンクラブ(かなり大規模)が出来ている事をまだ知らない。
用事多すぎて書けない時多めです最近...




