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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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オーダーメイド

遅くなってしまいました...!すいません。

トレイズ達は皇帝の私室で運ばれて来た料理を食べていた。豚の様な動物の丸焼きに魚のステーキ、野菜と塊肉がゴロゴロと入った鍋など多種多様な料理に一行は舌鼓を打つ。


「美味いな。皇帝の喰うモンはやっぱり違うってか。」

「トレイズ様!この魚美味しいですよ!お野菜は私の村ほどではありませんが、魚は滅多に食べられませんでしたから幸せです!」

「イシュさんはエルフだね?帝国では今までの悪習が無くなっていなくてね。エルフと魔人族は人と同じ扱いはされないんだ。ドワーフや亜人族も扱いは雑だし。だから気を付けて欲しい。」

「ありがとうございます。でも私は大丈夫ですよ!トレイズ様が居ますし、自分の身は自分で守ります!」

「貧民街の人攫いにも気を付けて欲しい。あそこに連れて行かれて戻って来た人は数える程しか居ない。帰って来れても大抵四肢が無いんだけどね...。改善したいけど、ほぼ迷路な上に貧民層を纏めてる組織もあるし...考えると胃が痛くなって来た...。」

「お前も苦労人だな...。」


用意された料理はあっという間に無くなってしまう。ルイスは紅茶を一口啜り、こう切り出す。


「大会まで暇だからボク達はギルドで依頼でもやっておきたいな。それと、この前依頼達成したけど反映されて無いから申請書にサインおねがーい!」

「良いけど、あまり問題は起こさないように。」

「はーい。」

「それと、ルイスとトレイズ達には極秘の任務も行ってもらうよ。」


ルイスの取り出した書類にサインしながらカレンはさり気なく言い放つ。流石のルイスは面倒だと察したのか、瞬時に反応する。


「極秘の任務って何さ!」

「ギルドの一般依頼には出ない私個人、もしくは有力貴族からの依頼さ。主に突然変異した魔物の討伐や、私からは軍部の人間の粛清依頼が主になると思う。」

「俺達を雇うなら、当然だが金は出るんだろうな?」

「特別報酬として通常の依頼とは桁の違う報酬を出そう。入手困難な素材を優先的に回したり、冒険者ランクが上がりやすい様に色々なサポートもしよう。帝国内でなら貴族待遇も出来るし、もしかしたら本当に貴族になって苗字も、なんて事も十分有り得る。どうだい?」

「いいスポンサーだ。もちろんやらせてもらう。」

「トレイズならそう言ってくれると思っていたよ。契約成立だ。」

「ああ。」

「ちょ、ちょっとー!トレイズー!」


トレイズとカレンは立ち上がって契約成立の証として固く握手をする。ルイスはやはり嫌だったようで頬を膨らませて抗議する。


「なんでさトレイズー!ボクそういうのやなのー!」

「少し待ってろ。...カレン、後一つだけ頼みがある。」

「なんだい?」

「『別の世界に行く魔法』についての情報を一番最初に俺に回してくれないか?」

「『別の世界に行く魔法』...?分かった。時間がかかると思うけど、それについての調査なんかは最大限努力はする。成果があったら報告するよ。」

「すまない、ありがとう。」

「トレイズー!何で受けたのさ!」

「最初に約束したじゃないか。俺に協力してくれるんだよな?」

「うっ...そうだった...。」

「今から街に出てお前の服と武器をデザインしてやってもいいぞ?」

「仕方が無いなトレイズは!よし行こう今行こう!」

「分かったから引っ張るな。また今度だ皇帝。」

「ああ。一週間後、楽しみにしている。」

「トレイズ様、ルイスさーん!待って下さいよー!」

「子供みたいにはしゃいで元気な奴だ...。」


扉を開け先に走って行くトレイズとルイス、そしてそれを追い掛けるイシュを見てセルカはやれやれと呆れる。


「あの、セルカ...さん。」

「さんは照れるな。セルカで良い。」

「それは私も照れる...。良かったら今度、暇な時に食事でもどうだろうか?」

「嬉しいがそれは出来ないだろう。あの三人から目を離す訳にはいかんのでな。オレが暇な時にこちらから誘おう。」

「そうか、分かった。」

「今日は世話になった!ではな!」


そう言ってセルカは背中から大きい翼を出し、高速でトレイズ達を追いかけて行ってしまう。そんなセルカに見惚れている皇帝の背後に何かが出現する。皇帝はその気配を瞬時に察知し、拳に炎を纏わせて振り向く。


「ッ!!はぁ......なんだ貴女か。音も無く背後に表れるのは止めて欲しいと何度も...。」

「性分でな、すまん。ところで、あのトレイズと言う男の過去を近い内に調べてくれ。」

「何故です?」

「"イレギュラー"だからさ。やろうと思えば奴はこの世界を破滅に導けるぞ。もしその思想があるなら...確実に消す。」

「あの男が貴女の言う"イレギュラー"なのですか?」

「詳細は今度話そう。ではな。」


皇帝の背後に表れたボロ布を被った、女性の声の人物はまたも唐突に黒い霧となって姿を消す。


「彼女が警戒する相手...敵か味方かまだ分からない...か。トレイズ...何者なんだ...?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はーやーくー!遅いよトレイズ!」

「お前がはしゃいでるだけだろうが。少しは落ち着け。」

「ふふふ、何だか微笑ましいですね。」

「全く、騒がしい奴だ。」


宮殿から出たトレイズ達は、帝国ダートスの首都である『帝都ケルンフェン』の鍛冶屋に向かっていた。帝都は大勢の人で溢れており、その中でも鎧を着けた者がかなり目立っていた。トレイズ達とすれ違った人達はまずエルフであるイシュに驚き振り返り、遅れて歩くセルカに気付きもう一度振り返るというのを繰り返していた。

向かっている鍛冶屋はルイスお気に入りの鍛冶屋らしく、帝国のみならずシュレア王国等の一流冒険者達が通う所らしい。


「言う事を聞かない子供みたいで疲れるな...。」

「子供ですか、良いですね。私もお母さんになれるでしょうか!」

「ハァ...子供は良いんだが、あんなのだと疲れるな...。」

「どしたのさトレイズ?」

「何でもない。ところで着いたのか?」

「うん!此処がボクの知る限りでは一番いい所さ!」


ルイスが指で指し示した場所には『ジュード鍛冶廠』と書かれた看板が掛けられた石造りの建物があった。建物は周りと比べると、色々なメンテナンスを怠っているのが見て取れた。


「本当にここか?」

「だったはずだよ。こんにちはー!」


ルイスは先に建物の扉を開け中に入って行く。それを追い掛けてトレイズ達も中に入ると、中は暗く鍛冶屋とは思えない程静かだった。


「誰か居ないのー!」

「そ、その声はルイスか!」


ルイスが大声で呼ぶと、奥の空間から太ったドワーフの男性が走って来る。


「居たんだジュード。魔力灯も点けずにどしたの?」

「最近、ワシが作ってやりたいと思える冒険者が居らんくて、皆突っ撥ねていたんだよ。どいつもこいつも武器を消耗品だと思ってからに...!それで、暇だからと武器の研究をしていたら何時の間にか金が無くなっててこの有様だ。」

「前にもこういう事あったけど、今回は一番酷いね...。その感じなのに、なんで帝都の一等地に店構えられるのか未だに分かんないなあ...。」

「ワシにもプライドがあるんだよ。ところで、今日は何の用だ?冷やかしなら帰ってくれよ?」

「冷やかしならもう少し大勢でやるよ失礼な!今日は武器を作ってもらいに来たんだ。」

「冷やかしに大勢でやるも何も無いと思うが...はて武器?お前さんには必要無いものだと思ってたが、どういう風の吹き回しだ?」

「デザインはこのトレイズ君がやってくれるから、ジュードにそれを形にして欲しいわけ!」


そう言ってルイスは大仰に手を広げてそれをトレイズに向ける。肝心のトレイズは周りに展示されている武器を見ていてそれに気が付いていなかった。


「トレイズ、何か紹介されてるぞ。」

「あ?なんだ?」

「トレイズとやら、お前さんがルイスの武器をデザインするのか?」

「その件か。そうだ。デザインは俺がやる。」

「良いだろう。ルイス、金はあるんだな?」

「もちろん!全部カレンが払ってくれるよ!」


ジュードと呼ばれたドワーフは肩を竦め溜息をついている。ルイスは不思議そうな顔をするが、ジュードはそれを見て更に溜息を漏らしていた。


「ま、まあいい。トレイズ、奥に来い。打ち合わせがしたい。」

「了解だ。ルイスも来い。」

「分かったー!」

「イシュとセルカはそうだな...。暇になるだろうし甘い物でも食べて来い。ほら、金だ。どの位払えばいいとかはセルカに聞け。」

「トレイズ様と一緒に居たいのですがそこまで言われれば仕方が無いですね...セルカさん!行きましょう!」

「良いのかそれで...。。」

「セルカ、イシュの護衛を頼む。もし絡まれたりしたら......好きにしていいんじゃないか?」

「そうしよう。行ってくる。」

「行ってきますトレイズ様!」


イシュに金貨が入った袋を渡し、セルカに護衛を頼み店から出す。


「さて、やるか。」

「やろー!」

「久々に注文を受けて武器を作れると思うと嬉しいなあ!」

「ジュードはお金が欲しいだけでしょ...。」

「それもある!さあこっちに来い!イメージだけでも良いぞ。」

「ジュードはこんなんでも帝国一の腕だからね。後は経済の知識さえあればなあ...。」


トレイズはジュードに引っ張られ奥の部屋に案内される。部屋の真ん中には大きな机があり、それと同じくらいの大きさの紙が広げられていた。


「さて、大まかでいいから絵を描いてみてくれ。イメージする武器の絵をな。」

「了解した。絵はそれなりに描けるし、その武器についての知識もある。任せろ。」


トレイズはジュードから製図用であろう万年筆の様な木製のペンを持ち、大判の紙に考えていた武器の絵を描いていく。


「これは...剣か?」

「細くない?これで切れるの?」

「少し違うぞルイス。切るんじゃない。斬る(・・)んだ。」

「ふむ...そんなアプローチもあったか...。」

「え?ジュード今ので分かったの?」

「鍛冶屋だからな。まあそのまま見てろ。」

「よし......出来たぜ。コレだ。」


トレイズが紙に描いたのは、掴みやすい柄に特徴的な形の鍔、そして細く長い刀身を持つ『日本刀』である。勿論鞘を描くのも忘れない。


「これが『カタナ』だ。」

「『カタナ』?」

「成程。叩き切るのではなく、純粋な切れ味のみで斬る(・・)のか。」

「そうだ。だから厚さや過度な重みは要らねえ。鎧も切っちまえば良いんだからな。」

「へぇ...中々カッコイイじゃん!何か他に機能付けようよ!」

「機能...。そうだな、お前の黒い魔力を衝撃波として刀から撃てれば便利じゃないか?」

「楽しそう!他には他には?」

「一応、ワシの苦労も考えてくれよ...。」


現代の知識も組み合わせ考えるトレイズと、興奮するルイスの話し合いはかなり熱くなった。最終的に刀に持たせる機能として纏まった案はこうだ。


・黒い魔力を刀からも飛ばす。

・斬った相手に魔力を注ぎ、内側から爆発させる。

・黒い魔力で斬れ味を上げると共に強度も増す。


「ふむ。この位なら大丈夫だが、素材だけで凄い額になるだろう。何時もなら後払いだが、今回ばかりは素材代だけ貰っておきたいな。」

「じゃあこれ、ハイ。」

「これは、帝国銀行の鍵か。」

「これ見せれば引き出せるから。作った後に返してよ?」

「やれやれ。信用されてるなワシは。了解じゃ。それでは、このジュード一週間で仕上げて見せよう!」

「それじゃ遅い!五日で頼むよ!」

「は、はぁ!?じょ、冗談やめろ!」

「お願い!報酬は弾むからさあ!大会に間に合わないよ〜!」

「......まあ努力はする。但し!出来なくても文句は言うな、いいな?もしかしたらワシは、この刀が人生で最後の作品になるかもしれんからな...!」

「じゃよろしく〜!」

「よし、イシュ達を探そう。宿を確保しておきたいからな。」

「甘い物が食べれる所かあ。取り敢えず有名所、当たってみよっか。」

「そうしよう。」


ジュードの店から出てルイスと共にイシュ達を探す事にする。ルイスの案内で帝都内の喫茶店や甘味処を周りつつ、どうかイシュが絡まれたりしていない様にと願いながら。


「次はどいつだッ!」

「セルカさぁ〜ん!私は大丈夫ですから〜!」


そんな事は無かった。


早く上げれる様になりたいナー...。

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