胃が痛い
日付け変わってました!今回も宜しくお願いします!
「そうだな...。では宮殿に案内しよう。付いて来い。」
「よ、宜しいのですか!?」
「構わん。ルイスの客人だからな。」
「行こ!」
「だだっ広い庭だな。」
「本当に広いですね...。」
『あ、おい。今竜化を解くから少しは待たないか。"竜人化"』
竜状態のセルカは何時もの人の姿に戻る。ふぅと溜息をついてトレイズ達の後を追うセルカを、皇帝は少し惚けた顔で見詰める。その視線に気付いたセルカは皇帝に問いかける。
「どうかしたか?」
「ああいや、人になれるのだなと思ってな。それに...美しい。」
「何万年生きてると思っている。これ位の魔法など造作も無い。それと、オレにそんな言葉は似合わんだろう。」
「話をじっくりと聞きたいが、今は宮殿に案内するのが先だな。行こう。」
「ああ。」
「貴様達は各自持ち場に戻れ。それに客人をもてなす準備も頼む。」
「はっ!」
その場にいた兵士達に指示を出し、皇帝はトレイズ達を宮殿に案内する。宮殿を囲う様な形の庭は広く、美しい草原と湖もあった。道は石で舗装されており、その道を真っ直ぐ歩いて行くと宮殿に着く。
「ようこそ我が宮殿へ。こんな客の歓迎の仕方は初めてだな。」
「『タージマハル』?違うな。あれはもっと上がタマネギみたいなってるか。」
「タ、タマネギですか?」
「何でもない。...似てると思ったが、違うか。」
「早く入らない?カレン、ボク喉乾いたから紅茶が飲みたいな!」
「だそうだ。準備を。」
「かしこまりました。」
「では、玉座の間に行こうか。」
トレイズ達を先導する皇帝は宮殿の入口近くにいた使用人に紅茶の準備を命じる。皇帝に導かれるまま宮殿に入る。開け放たれた入口を潜り中に入ると、壁には全て絵が描かれており天井も同じだった。
「教会みたいで嫌だな。」
「凄い...。」
「どうだ、なかなか良い絵だろう?私はあまりその手の知識は無いが、芸術品の良さは分かるつもりだ。」
「違う。こういう絵にはあまり良い思い出が無いだけだ。」
「それは数奇なものだな。さて次は玉座の間だが、その奥にある私の私室で歓待しよう。付いて来てくれ。」
さらに奥にある何人かで開ける巨大な扉を皇帝は片手で開ける。扉の先には豪華絢爛と呼ぶに相応しい空間が広がっていた。正面奥には金色の玉座があり、石で作られた壁や床や天井全てに金で装飾が施されていた。
「こりゃまた豪華だな。」
「少し眩しいですね...。」
「こんな物はいい。私の部屋はこっちだ。」
玉座の近くまで歩いて行くと、玉座の後ろの壁に重厚な扉があった。皇帝はその扉に手を置き何かを小声で唱えると、扉はひとりでに開く。
扉を開けると、そこには木で作られたテーブルに高価そうなソファー、魔物や人物を模して作られたであろう銅像等が並べられた文字通りの"私室"があった。皇帝とトレイズ達は二つの陣営に別れるようにソファーに座る。
「此処で誰かをもてなすのは久しぶりだ。ゆっくりしていってくれ。さて、何か食べるか?」
「確かに腹が減ったな。」
「そ、そう言われれば私も...。」
「オレもだ!」
「ボク喉乾いたー!」
「ルイスはともかく、先ずは食事だな。料理と酒を。それに紅茶だ。」
「かしこまりました。」
「それと、私の部屋に入る時は必ずノックを忘れるな。忘れれば...分かるな?」
「しょ、承知しております...。」
「なら良い。行け。」
皇帝は私室の中に居た使用人を軽く脅しながら料理等を手配する。部屋にトレイズ達と自分だけと確認した皇帝は、一回深呼吸をして再び喋り始める。
「もう良いかな...。それでルイス、何しに来たの?祭りも控えてるのに面倒事はダメだよ?胃が痛くなるからね。」
皇帝は先程までとは打って変わって、何処か弱々しい気迫の無い喋り方に変わる。
「何かお前、喋り方変わったな?」
「私はあくまで"皇帝"を演じているに過ぎないんだ。本来はルイスがやるべきなのに、私なんかに押し付けるから...。お陰で毎日胃が痛い。」
「それはごめんね!でもボクには皇帝なんか務まらないし、カレンが適役だったんだし!」
「止めてくれよ!バイコヌール村の冒険者達の死因や遺族への説明結構大変だったんだからね!?村が丸ごと無くなるなんて、どうやったって隠し切れないし!それも含めて荷が重過ぎるよ...。」
「もう済ませてる辺りやっぱり凄いよ...。」
「『純潔会』は既に軍部にまで侵食しているらしい。早く手を打たないと不味い事になる。そうだな...。トレイズ君。」
「なんだ?」
「帝国の開催する闘技祭に参加しないかい?上位に行けば、すぐに将軍ぐらいにはなれるはずさ。元々そういうのを決めるものだったのが、国民に一種のショーとして披露する事にもした訳だ。」
「上位に食い込めば後はルイスのスカウトで、ってか?OK。その話乗ったぜ。自分の力を試してみたい。」
「わ、私もやります!」
「残念だが、出場者の配偶者はダメなんだ。勝負にならないからね。見てて辛いだろうから私が禁止したんだよ。」
「残念です...。」
「オレも出よう。魔竜が帝国の味方となれば中々面白いだろう?」
「絶対に胃が痛くなる案件だからダメ。名前は少し変えてほしい。」
「そ、そうか。分かった。」
「ルイスは出る?」
「トレイズと真剣勝負か...!やる!」
「俺と戦うのが前提か。途中で呆気なくやられるかもしれんぞ?」
「んー、それは無いかなー。この国あんまり強いの居ないし!」
「ルイス、君が言ってもなんの説得力も無いからね?」
「え、そうなの?」
「はぁ...。」
皇帝を務めるカレンの辛さを理解出来たトレイズ達は、労わる様な視線を皇帝に向けるしか出来なかった。
もう少しで主人公変えたい...!でももう少し書くものあるから先だろうか...。