戦士よ、永遠に。
遅くなってしまった!今回も宜しくお願いします!
「急速冷却開始!対地攻撃始め!」
「あの弾幕が厄介だな...畜生が。」
アルザはゴーレムの頭の横に立ち、地竜とゴーレムに指示を出していた。ゴーレムは光による攻撃と体から放たれる光線による弾幕で、燃えている村を更に焼いていく。
「はっ!」
ルイスの手から放たれる黒い魔力による波動が一発目で地竜の体を穿ち、二発目で頭を吹き飛ばす。数体居た地竜は今の攻撃で全滅したらしく、残るは巨大なゴーレムだけだった。
『邪魔だあああああ!!』
「くっ!」
上空からのセルカの突進がゴーレムに直撃し、ゴーレムは倒される衝撃であっさりと崩れただの石になる。アルザはまたも直前で躱し、既に地面に着地していた。
「チッ、つくづく脆い人形だ...。追加だ、凌いで見せろ。」
「させるか!」
「食らわんな。」
「クソッ、貫けないか...!」
地面に手を置いたアルザを阻止しようと弾丸を連続で放つも、アルザの展開した半透明の壁に全て阻まれてしまう。時間を稼がれ、アルザは今度はあのゴーレムを三体召喚する。
「さあ、神の裁きを受けろ!」
「裁かれるのはテメェの方だぜ!喰らいやがれ!」
出て来たゴーレムの頭に狙いを付け、新たに生成した対艦用の徹甲榴弾を撃ち込む。鋭い金属音が短く鳴り一秒程経った時、ゴーレムの頭が文字通りの大爆発で爆散する。
「一撃だとッ!?あの時の物とは威力が桁外れではないか...!トレイズ、何をした!?」
「あの時はあくまでイシュにテメェを殺させる為にお膳立てしようとしたに過ぎねえ。今は手加減なんて必要無いからなぁ。使える物は使わせてもらう!」
「クッ!行け!」
「一旦下がるぞ、イシュ!」
「えっ!?やっ、そ、それダメです!」
アルザの指示を受け二体のゴーレムは次々と光線を撃って来る。トレイズはイシュを脇に抱えて走り、光線を避けつつまだ残る建物の影に隠れる。
「今いるゴーレムはさっきの奴の改良型って所だろうな。危ないからイシュ、お前は下がってろ。アルザが直接来るかも分からん。念の為、コルトを握っとけよ!行ってくる!」
「分かりました!お気を付けて!」
全速力で弾幕の中を駆け抜ける。ゴーレムの弾幕を吸収していたルイスと、弾幕の厚さに戸惑うセルカに指示を飛ばす。
「ルイス、セルカ!俺がゴーレムの体を吹き飛ばす!敵の体勢が崩れたらすぐさま突撃してくれ!」
「りょーうかい!」
『了解だ!一気に決める!』
「行くぞっ!喰らいやがれクソ石野郎!」
こちらを向いていなかったゴーレムの右腕の付け根に徹甲榴弾を撃ち込む。徹甲榴弾は間もなく凄まじい爆発を起こし、その衝撃でゴーレムは右腕を無くし体勢を崩される。
「今だ!頼むぞルイス!」
「魔力解放!一撃で決めるっ!」
ルイスの背中から再び黒い羽が生える。しかしその大きさは先程までとは違い、倍近い大きさになっていた。そのまま黒い大剣を前に突き出しながら凄まじい速さで突撃し、巨大ゴーレムの体を上下に分ける。
「馬鹿な...!こうもあっさりと破られるかッ!ええい!」
アルザは手を地面に置き魔法陣を起動するが、魔法陣は光るだけで何も召喚しない。地面に手を置いたままアルザは呆然としながら叫ぶ。
「見限られたと言うのかッ...!!」
「とうとう何も出せなくなりやがったか!一気に押し切るぞ!喰らええ!」
対物ライフル弾を装填し最後のゴーレムの頭を狙撃する。弾丸はゴーレムの目を撃ち抜き、ゴーレムは視界を失い動きが止まる。
『魔力を加速に回すッ!最大戦速!』
遥か上空から炎を纏い加速したセルカがゴーレムに体当たりを敢行する。十分な加速を得た巨竜の体当たりは凄まじく、衝突の衝撃波で地響きが起こる。直撃をまともに受けたゴーレムは、セルカの纏っていた炎も相まって粉々に砕け散っていた。
「こんな、こんなハズでは...!私は、私はエルフを導く英雄だ!貴様ら賊になど負ける筈が無い!」
「だが、実際どうだ?味方にも見限られお前にもう道は無い。降伏しろ、命まで取ろうとは思わん。」
「神の使徒たる私が...私がッ...!」
アルザは腰の剣をおもむろに抜きながら、ブツブツと呟き始める。
「生きている限りは負けではない!今こそ神の裁きを!」
「このテロリストがっ!」
「トレイズ様、大丈夫ですか!?」
「なっ!?イシュ、来るな!!」
「え?あっ!」
「神はまだ私を見捨ててはいなかった!呪い子よ、今此処で死ねええ!!」
「なんだ!?」
『イシュ!下がれー!!』
トレイズとセルカが必死で叫ぶ中アルザは剣を右手で上段に構えながら急接近し、イシュに向かって振り下ろす。
しかし
「ごめんなさいアルザ、私は貴方に殺される訳には行きません。」
「なん...だと...。」
イシュは無傷のままコルトを構えて立っており、コルトからは僅かに煙が出ていた。対するアルザは剣を持っていた右腕を撃ち落とされ、左手で右腕の付け根を抑えて跪いていた。
「こんな、こんな事が...!」
「アルザ、私は貴方を信じていました。いえ、信じていたかった。ですが貴方は私だけならまだしも、トレイズ様まで裏切った。この事は許されません。貴方は私が裁きます。」
「私は間違っていたのか...?神よ...私は...。」
タァンッ
「さようなら。誇り高きエルフの戦士よ...。」
イシュは跪くアルザの頭をコルトで撃ち抜く。その顔は悲しみに染まっていた。
こうして、アルザとの戦いは終わった。しかし、村は焼け多数の人が犠牲になってしまった。
「生存者を探そう...。俺達に出来る事は、今はこれだけだ。」
「はい...。うっ、うう...!トレイズ様!私は!私は...!」
「イシュ、泣くな。俺達がやらないといけなかった事だ。お前は悪くないさ。」
トレイズは泣きじゃくるイシュを抱き寄せ、頭を撫でて慰める。ルイスは明るくなりつつある空を眺めながら、悲しそうに呟く。
「払った犠牲は多すぎた...。『純潔会』か。さて、カレンに報告しないといけないな...。」
「トレイズ、これはオレの責任でもある。」
人の状態に戻っていたセルカが悔しそうな表情でそう吐露する。
「そう気に病むことは無いさ。でも確かに、俺はセルカがアルザと一緒にいた理由を聞いていなかったな。話せるか?」
「分かった。歩きながら話そう。」
生存者を探す為に村を歩きながら、ついでに話を聞く。
「オレの兄、『リリアナ・グローリー』は神とも呼ばれる素晴らしい竜だ。オレはそんな兄に認められたくて頑張って来たが、仲違いで喧嘩になった。大体二千年程前だろう。」
「待って!それってまさか...。」
「そのまさかは当たっているだろう。その喧嘩が後に"天竜決戦"と呼ばれていた事を後から知ったよ。オレは喧嘩の二千年後に目覚め、その時に立ち寄った小さな村でオレとアルザは出会った。」
「その時のアルザはどんな様子でしたか?」
「その時のアルザは希望に満ち溢れた若いエルフだった。その時にはもう理想郷の事を語っていたが、今程酷くは無かった。オレはアルザの所属していた『純潔会』と表面上は協力していたが、実際は信用など到底していなかった。だが、どんどんアルザは理想郷に傾倒して行った。そして、何年か経った後イシュの事を聞いて襲撃に至った訳だ。」
「アルザもただの『駒』だったのか。」
「そうだ。その事を知った私はアルザを『純潔会』から抜けさせるつもりだった。だが遅かった。遅過ぎた...。オレにとっては久しぶりの、この世界の事を色々教えてくれたアルザを助けたい思いからだった。オレは、エルフの可能性を信じるアルザを信じたかった...!だからオレは、奴等が憎い...!自分の種族を憂いた誇り高き戦士を弄んだ奴等が!」
「セルカさん...。」
「イシュ、お前が代わりにエルフの未来を切り開け。理想に散っていったアルザの為に、な。」
「......はい!」
村に、朝日が登ろうとしていた。それはまるで、犠牲になった人々の亡骸を癒すかの如く......
まだまだトレイズ編続きます故〜