紅に染まる村で
少し短めです!
「おいおい...どうなってやがる...?」
「まさか襲撃が...?早すぎます!」
「生存者が居ないか確認しなければ...。行くぞ!」
紅に染まる村に突入し、中を走りながら生存者を探す。しかし、見付かるのは冒険者達の死体ばかり。殆どの死体に焼け焦げた跡や鋭利な物で切り裂かれた様な跡があった。その中にはトレイズ達の冒険者登録を担当した受付嬢らしき物もあった。
「ここまでやるのか...!」
「非道い...。」
「ボクが居る時にこんな事を...いい度胸だよ...!」
「トレイズ、どうやら元凶が来た様だ。」
崩れた建物の影から巨大な影がゆっくりと出て来る。それは翼の無いドラゴンだった。そして、その上には他とは見間違いようのないエルフ、アルザが居た。ドラゴンの周りには村で見たルナウルフの"出来損ない"やゴーレムが群がっていた。
「やあトレイズ、いきなり抜け出してすまなかった。村を焼いたのは本意では無かったが...貴様らを炙り出すのに必要な犠牲、という物だ。」
「アルザ!貴様、エルフの誇りを捨てたかァ!!」
「そんな物は大いなる大義の前ではゴミも同然だ。フン..."グローリー"の魔竜だからと期待をしていたが...使えん奴だったよお前は。」
「アルザ!貴方の様な者が居るから、争いは終わらないのでしょう!」
「その争いを無くす為に、今私はこうしている。イシュ、貴様のその力は返してもらお」
アルザが喋っている途中、その肩に黒い小刀が突き刺さる。アルザは無言でそれを抜く。
「...なかなか手荒な事をする。」
「ボクの目の前でこんな事をしたんだ。覚悟は出来てるよね?エルフのお兄さん。」
「戯れ言を...。やれ!」
アルザの掛け声と共に翼の無いドラゴンとルナウルフ達、そしてゴーレムが突撃して来る。
「トレイズ、コイツはオレが食い止めるから他の雑魚を頼む!"竜化"!」
セルカは魔言を唱える。一瞬体が光ったと思うと、次の瞬間には竜の姿になっていた。突進して来る竜を正面から力ずくで抑える。
「セルカは竜だったのか...!ん?...セルカってまさか...。」
『ルイス!それは後だ!今は雑魚共の殲滅が先だ!これ以上被害を増やす訳には行かない!』
「そうだったそうだった。さて、圧倒しちゃうよ!」
「イシュ、予備の弾も大丈夫だな?」
「はい!行けます!」
「よし、行くぞ!」
ルナウルフの群れに向けて引き金を引き絞る。凄まじい速さで放たれる弾丸はルナウルフ達の体に風穴を開けていく。
「"リロード"!」
「"貫け"!」
「こうして...こう!」
『貴様の様な若造に負けるか!"憤怒光"!』
地面から突き出てきた蔦とルイスの投げる黒い槍がゴーレム達を貫き、セルカの放った光線が翼の無いドラゴンを灰に変える。アルザは当たる直前に跳躍し光線を避けていた。
「やはりこの位は押し退けるか......。」
「降参か?」
「フッ...。トレイズ、私が何の備えも無く貴様達の前に現れるとでも?」
「そんな事はねえよな。」
「こうするのさ。フン!」
アルザが地面に手を置くと地面に巨大な魔法陣が浮き出て来る。
「さあ、絶望しながら神に許しを乞うが良い。」
魔法陣から先程の翼の無いドラゴンが数体出て来る。しかしそれだけでは終わらず、魔法陣からは更に見上げる大きさのゴーレムが出現する。
「おいおい...面倒なんてモンじゃねえぞ...?」
「大きい...!」
『雑魚が幾ら集まった所で何が変わる?纏めて焼き払ってやるわ!』
「右に同じ、ってね。『黒蝶』の力を見せてやるんだから!魔力解放、飛ばすよ!」
ルイスの背中から蝶の様な黒い羽が生える。ルイスは羽から黒い粒子を出しながら飛翔し、ドラゴンに突撃する。ドラゴンは口を開けその中に火を溜め、迎撃の準備をする。
「遅い、よ!」
いつの間にか握っていた黒い大剣をルイスは口を開けていたドラゴンの口に投げ込む。ドラゴンの吐こうとした炎は黒い炎となり、ドラゴン自身を内側から焼く。ドラゴンはゆっくりと倒れ、黒い魔力となってルイスの背中に吸い込まれて行く。
「地竜が一撃か。噂には聞いていたが...『五騎士』か、中々やる。」
「それはどうも。...っとおおお!!」
「なにっ!?」
ルイスの台詞の途中に突如として赤い炎の光線が背後から飛んで来る。光線の射線上にいたドラゴンの一体の半身が綺麗に消し飛ぶ。
「熱っ!何すんのさ!?」
『そこの駄竜が火を吐かんとしていたのでな。焼き払ってやったわ。』
「避けてなかったらボク丸焦げだったんですけどお...。」
『今のを避けれんのならオレが五騎士とやらになるだけだ。フハハハハ!』
「なにも面白くなーいー!!」
「流石の連携と言った所か。セルカ、貴様一日で何をした?」
『一日で竜は変わるものだ。もうかつてのオレとは違うぞ!』
「多分そんなんじゃ無いよなあ...。」
「ですねー...。」
残る地竜が遅れて口を開けて火を溜め込み、一斉に放つ。
「"守れ"!」
「助かる!」
「炎は...切れば良い!」
『そもそも飛べば良いのだ!』
トレイズとイシュは蔦の壁に隠れ炎をやり過ごすが、ルイスは炎を黒い魔力で切り裂きセルカは飛翔して炎を避ける。
「見れば見る程、規格外と言う言葉が似合うものだ。撃て。」
今まで動いていなかった巨大なゴーレムの頭部分が輝く。突然トレイズの近くが大爆発を起こす。爆発の衝撃波で砂埃が激しく舞う。
「速い...!」
「何も無かったですよ!?」
『面倒なのが出て来たな...。』
「まだ精度が低いか...。急速冷却!竜達よ、行け!続けて対地魔法攻撃、放て!」
地竜の炎とゴーレムの体中から放たれる幾条もの小さい光線の一斉射により、戦いは更に激しさを増して行くのだった。
ギリギリ日付け変わってしまいました...。