戦えますので。
今回も宜しくお願いします!
4000pv超えました!これからも宜しくお願いします!
「そういえば、何で俺を見て面白そうだなんだって分かったんだ?」
「そんなの一目見れば分かるよ!ドワーフでも無いのに肌は黒いし、変な形の剣に変な服だったからね!」
「確かにトレイズ様のような肌の色は珍しいですね。」
「でしょでしょ!やっぱりボクの勘は正しかったんだ!」
騒ぐルイスを連れて受付嬢のいるカウンターに向かう。受付嬢に『トレント伐採依頼』を受けようと話し掛けると、驚いた表情をしながら奥に走って行ってしまう。暫く経ち、受付嬢の代わりに来たのは小太りの男性だった。男性は慌てた様子でルイスの元に走って来る。
「ルイス様!こちらにいらっしゃるのなら連絡を下さってもよろしかったのでは!?」
「やだよめんどくさい。そんな事はカレンにやらせてよ。」
「私の様な者が皇帝陛下にそんな事を頼めますか!」
「大丈夫さ。カレンはそんな事で怒ったりしないよ。」
「そういう事ではなくてですね...!ああところで、この方達は?」
「トレイズだ。昨日冒険者になった。」
「イシュです。同じく昨日冒険者に。」
「セルカだ。オレも大体同じだな。」
「なっ!何故ルーキー如きとルイス様が一緒に居るのですか!?」
「三人共ボクを知らなかったみたいでね。怖がらないで接してくれたから、パーティーを組む事にしたのさ。」
「ルイス様を......知らなかったですと......?」
男性は絶句してその場で立ち尽くしてしまう。余程の衝撃だったのか、ルイスが目の前で手を振っても反応が無い。何秒かしてようやくルイスの振る手に反応する。
「お前達、本当にルイス様を知らなかったのか!?」
「ああ。全く知らなかった。」
「ええ。全く。」
「初めて聞く名前だったぞ!」
「何か傷付くなあ...!」
「ルイス様はかの『五騎士』の一人『黒蝶』のルイスであり、帝国の最高戦力なんだぞ!?ルーキーなら憧れや羨望の対象でもあるはずだ!!」
「そんな大層な説明をされても、俺には俺の目的があって冒険者になった。そんな事は知らんし、興味も無い。もういいか?さっさと依頼を受けたい。」
「ほらね?」
「まさか、そんな...。」
「ルイス、来るなら来い。」
「はーい!それじゃ、また後でね!」
「え、ああ...はい...。」
小太りの男に別れを告げ、受付嬢に依頼の手続きをしてもらう。目的地はまたも林エリアの為、ギルドを出て向かう。
「そういや、さっきの奴は誰なんだ?」
「ここのギルド長だった気がする...名前も忘れちゃったしなあ...。」
「ダメじゃねえか。まあいい、行くか。」
「ところで......トレイズの目的って何?」
「それは...まあ後でだ。」
「ふぅん...。分かった。村の外で話してよ?隠し事は無しだからね!」
「ああ。隠しても得はねえからな。」
村を出て林エリアに向かう。林エリアには今回の依頼の目標である木の魔物『トレント』がいる。木と木の間を歩いていると、そわそわしていたルイスが話しかけてくる。
「ねえねえ、そろそろいいでしょ?トレイズの目的、話してくれよ~。」
「トレイズ様、お話しになられるのですか?」
「ああ。借りれる力は借りたいからな。ルイス、俺が今から話す事を聞く代わりに、その目的を果たす為に協力してくれないか?」
「いいよ。但し、その目的とやらが面白そうならね。もひ面白そうだったら......ボクに出来る事なら、頑張るさ。」
「OKだ。さて、どこから話そうか...。いや、単刀直入に話そう。俺はこの世界の人間じゃない。そして、目的は元の世界に帰る事。以上だ。」
「違う...世界...!!」
ルイスの顔は子供が新しいオモチャを貰った時の様な表情になる。
「異世界か...良いね...!でもでも、証拠が無いと信じられないな。何かない?」
「証拠か...。これはどうだろうか。イシュ、『銃』を。」
「はい、どうぞ。」
「『銃』?」
「コレは俺がいた世界で使われていた武器だ。」
「コレが武器なのかい?初めて見る形だな...。」
ルイスにコルトガバメントを見せる。ルイスは訝しげな目でコルトを見る。
「使い方は、コレを握って引き金と呼ばれるこの部分を指で引けばいい。やってみろ。そうだな、あの木に向けて撃ってみろ。」
「こう、かな?...おおっ!?」
ルイスは木に向けて引き金を引く。銃は正常に動作し、木に向けて弾丸を放つ。放たれた弾丸は木を大きく穿ち、穴を開けてしまう。
「これが『銃』...。」
「どうだ?証拠と言ってはなんだが、十分だろう?」
「...うん。分かった!トレイズが元の世界に戻る方法を一緒に探してあげる!」
「そうか。ありがとう。」
「但し!条件があります!」
「条件か。何だ?」
「1つ、元の世界に帰る時はボクも連れて行って欲しいんだ。」
「ふむ。良いぞ。」
ルイスの出した一つ目の条件は断る理由も無いので承諾すると、それにイシュとセルカが反応する。
「ルイス様だけズルいです!それならば私も!」
「オ、オレも!」
「イシュ、訳も無く妻を置いて何処かに行く夫は居ないぞ?安心しろ。セルカは......考えとこう。」
「二つ目はね...そうだなあ。......そうだ!トレイズの居た世界の武器と洋服が欲しいな!デザインしてくれても良いよ!」
「武器は分かるが、服か。」
「ボクだって女の子だからね。可愛いのを頼むよ!」
「期待に添えれるかは分からんが、努力しよう。」
「よし、決まりだね!『黒蝶』ルイス・カルナヴァンは今から君達の仲間だ!」
「ありがとう。さて、ひとまずは依頼だな。」
「目標は『トレント』だったね?なら、妙に皺の多い木にちょっかいを出してみるといい。当たっていたら、トレントが怒って這い出てくる筈さ。」
「ほう。イシュ、セルカ、聞いたな?行くぞ。」
「了解です!」
「了解だ!」
トレントの発見方法を聞いた三人は早速皺の多い木を探す事にした。セルカは戦い方が限られるので、役に立とうと必死な感があった。少し探していると、セルカの方から反応がある。そして、そこから木の魔物である『トレント』が土の中から這い出てくる。
「居たぞ!」
「出やがったな。」
「ここはボクの力を見せてアピールをしておくべきかな?三人共下がってて!ボクがやるっ!」
ルイスは唐突に飛び上がると、手に黒い靄のような物を纏わせる。それは徐々に形を作っていく。やがて、光さえ飲み込まんばかりの黒い長剣がルイスの手に収まる。
「さて、良いトコ見せるよ~!ハアッ!」
そのまま急降下し、トレントを黒い長剣で一刀両断する。トレントは声を上げる暇と口を失い、あっさりと絶命してただの木になる。
「今のは魔法か?」
「違うよ。ボクのスキルさ。」
「プレシャススキルか?」
「当たり!『極黒』って言うんだ!カッコイイでしょ!」
「どんなモノなんだ?」
「自分の魔力を『黒い魔力』に換えて、その『黒い魔力』を使って色々な事が出来るスキルさ。今みたいに剣を作ったりね。分からない事の方が多いけどね。」
「ふむ......。まあいい。依頼には三体が達成条件と書かれてるから、あと二体だな。」
「ボクはイシュちゃんとセルカがどう戦うか見てみたいな!」
「ふふふ!私だって戦えるんですよ!」
「戦うが極力抑えるぞ。」
トレントを求めて林の奥に向かう。一体目のトレントから証拠品となる枝を取っておくのも忘れない。ほどなくして二体目のトレントが地面から這い出てくる。
「行きます!"絡まれ"!」
地面から突き出てきた何本もの蔦がトレントに絡まる。トレントは必死に抜け出そうとするも絡まる蔦に阻まれ抜け出す事が出来ない。
「終わりです。"砕け"!」
大木の様な太さの蔦が新たに二本地面から突き出る。蔦は身動きの取れないトレントを凄まじい勢いと早さで連打する。直ぐにトレントはバラバラの木片になってしまう。
「あんなの、前は無かったぞ。」
「えへへ...ステータスでスキルの詳細を確認して見たら何と、植物達に出せる指示がたくさんあったんです!確認はするものですね!」
「俺は寧ろしなかった事に驚いているんだが?」
「あはは...忘れてまして...。」
「まあいいけどな。さあ、後一体だ。」
最後の一体を探すべくまた更に奥に進む。そして、一本だけ明らかに太さも皺の数も違う気が見つかった。その木に試しにコルトで撃ってみると、予想は当たり一際大きいトレントが這い出てくる。
「さて、オレの出番か。控えめに、ね。"閃光一撃"。」
前に真っ直ぐ突き出したセルカの手の平から一瞬、光の線が放たれるのが見えた。見ると、トレントには大きい風穴が空いていた。トレントは力無く倒れる。
「こんなものでは戦ったとは言えんな。トレイズ、帰ろう。」
「そうだな。これで依頼達成だ。」
「見た目と違って皆やるねえ...。伊達に異世界からの旅人を名乗って無いね。」
「そんなモンじゃ無い。ただ迷い込んだだけの"イレギュラー"だ。」
依頼の達成条件を満たしたトレイズ達は村に向かう坂道を降りて行く。もう夕方だった様で、空は紫色に染まっていた。先頭を歩いていたセルカが真っ先に何かに気付く。
「何だ......?これは...燃えている...?ッ!まさかッ!」
「どうした!」
「いいから走るぞ!!もう、手遅れかもしれんがな!」
「ボクにも分かる...!カレン、コレが君の言っていた面白い事なのか...?」
セルカに急かされ坂を降りて行って見えた物は、紅蓮に染まるバイコヌール村だった。
早く別の人物の視点に移りたいなーと思いつつ、出来ませぬ...。