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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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竜ですから!

寝てて遅くなりましたすいません!今回も宜しくお願いします!

「それで、お前らは何であそこに居たんだ?」


トレイズとイシュは再び冒険者ギルドに戻り、酒場の席に着いていた。向かい合う席には昨日戦ったエルフの戦士アルザと、艶のある黒の美しい長髪で、黒の鎧を着けた眼光の鋭い美少女が座っていた。


「私は昨夜セルカに掴まれて飛んだ後、傷付いたセルカが墜落した衝撃で気絶してしまったんだ。そして、目が覚めて移動しようとしたらああなった。」

「トレイズ、お前の攻撃が予想以上に効いたんだよ。結界を破って森の外に出た途端に久し振り過ぎる痛みが来て、落ちてしまった。」

「なんつーか...面白いなそれ。てか、お前あの竜だよな?セルカ、だっけか。」

「ああ。俺は何万年と生きて来たから、人化魔法位は使えるさ。」

「それも面白いが、さてどうするかな...。」

「トレイズ、殺すなら私だけにしてくれないか。セルカは好きで奴らに従っていた訳では無い。」


アルザは真剣な表情で懇願して来る。迷いの無いその目は覚悟が有る事を示していた。


「イシュ、どうする?約束がまだ有効なら、イシュがアルザを殺すべきではある。」

「確かにあんな事言いましたけど...。」


イシュは暫くうんうんと唸りながら考えた後、名案を思い付いたような顔をする。


「私はアルザを殺したりはしません!アルザの目はもう昨日みたいな目をしていません。トレイズ様、私はアルザをもう一度信じてみたいです。」

「イシュ様...!」

「良いんだな?」

「はいっ!」

「何であんな事をしたかは知らんが、殺したりはしない事は決定した。」

「ありがとう...!そうだ。昨日の事なんだが、体が自由に動かなかったのは覚えているんだ。操られていると言うか、何時もは出来ない動きが出来たり。」

「上位の催眠魔法だろうか。どちらにせよ、奴等はやはり気に食わん。」

「お前らの言っている『奴等』ってのは?」


アルザとセルカの言葉に含まれていたキーワードについて尋ねる。アルザは少しむずかしい顔をした後、声を潜めながら説明を始める。


「私とセルカが所属している...いや所属していた(・・・・)組織の名前は、『純潔会』。アスカントで魔族絶対排斥を掲げる派閥だ。奴等は『神の創る理想郷』をエサに大量の駒を獲得している。私は迫害を受けるエルフを救えればと思い、藁にもすがる思いで門を叩いたらこのザマさ。」

「アルザ...私は何か勘違いをしていた様です...。あなたの本質は何も変わってなどいなかった...。」

「イシュ様、確かに私は変わらないでしょう。だからこそ、何も変えられなかったのです。そう、何も...!」


そう言って、アルザは悔しそうな表情でテーブルに握り拳を置く。隣に座るセルカの表情もどこか悔しそうだった。


「それなら、その『奴等』を追いつつ冒険者稼業と行くか!ところで、お前ら冒険者証持ってたりしたいのか?」

「私は持っているよ。数十年前に取ったばかりだ。」

「オレは持っていないな。」

「なら作らないとな。イシュ、一緒にやってやれ。セルカ、字は書けるだろう?」

「あ、あまりオレを馬鹿にするんじゃない!これでもある程度学はある。見ていろ!」


そう言ってセルカとイシュはカウンターに書類を書きに向かう。暫くして聞こえたのは、受付嬢の「これは古代神聖文字!?」と言う聞き覚えのあるトーンの台詞だった。

結局代筆して貰った様で、笑いを堪えるイシュと顔を赤らめながら冒険者証を持つセルカが席に戻って来る。


「つ、作って来たぞ...。」

「おう。これで四人パーティー完成って訳だ。」

「昨日命を賭けて戦った者と肩を並べる、か。不思議な感覚だ。」

「昨日の敵は今日の友って言うじゃねえか。どっちも神サマに用があるんだ。」

「そうだな。」


実はアルザとセルカを連れてギルドに戻って来た時から、冒険者ギルド内はかなりざわついていた。ただでさえ珍しいエルフが二人いるのに、かなりの美女も居るのだ。注目されるのも無理はなかった。


「取り敢えず、『ゲイルウルフ討伐』を再開するか。行くぞ。」

「そうですね。」

「分かった。」

「オレに任せればいい!」

「そんな事言ってるとまた墜落するぞ。」

「なっ!あ、あんな事、二度とあってたまるか!」


トレイズが意気込むセルカにツッコミを入れつつ、四人は林に向かう。移動の最中、アルザのイシュを見る目が昨日と同じ物に戻っている事を、トレイズは見逃さなかった。

警戒しながら歩いていると、林エリアに到着する。辺りを索敵していると、直ぐにゲイルウルフが見つかり戦闘になる。


「イシュ、使うのは魔法だけにしておけよ。」

「?分かりました。」

「トレイズ、来るぞ!」

「ふははは!オレに任せろと言っただろう!"我こそが悪夢ジーザス・コンシュマール"!!」


セルカが魔言を唱えると、セルカの周りに炎で構成された槍が次々と作られていく。


「原初の魔竜の力を見せてやる!灰燼に帰せ!」


炎の槍は一斉に放たれゲイルウルフ数体ごと林を焼く。やがて、焼くべき敵を失った炎は掻き消される様に消えていく。


「明らかにやり過ぎだな。」

「木を無闇に焼いてはなりません!」

「エルフとしては今の行為は見逃せんな、セルカ。」

「わ、悪かった。オレの魔法は殆ど範囲攻撃だから...細かい事は苦手なんだ...。」

「今ので尻尾とか無くなっちまったから、本当にただ木を焼いただけだぞ。今度から気を付けろよ。」

「あ、ああ。」


気を取り直しゲイルウルフを探す。常に依頼が出される程の繁殖力は本物の様で、直ぐに十体程の群れに出会う。


「セルカは下がっていてくれ。お前が出なくても大丈夫な相手だ。」

「分かったが...もどかしいな...!」


セルカを下がらせ、三人でゲイルウルフの群れを相手取る。ゲイルウルフ達は数の優位を確信しているのか、飛びかかるタイミングを威嚇しながら見計らっている。


「ハッ!」


アルザが弓から矢を放つと、先頭に居たゲイルウルフの眉間に矢が刺さる。一撃で仲間が殺された事に他のゲイルウルフが驚愕している時、トレイズは斉射の準備を完了していた。


「退いてなあ!蜂の巣にしてやるよ!」


けたたましい破裂音が重なる様に発せられ、耳に届く時には鈍い振動音の様な音に聞こえる。夥しい数の弾丸が一挙に放たれ、残りのゲイルウルフの体を穿ち文字通り蜂の巣にする。


「ふん、相手にならねえな。さて、証拠品を回収といこうか。」

「分かりました!この位の作業は私がやりますとも!」

「出来るか?ナイフで怪我をするなよ。」

「お料理も作れますから大丈夫です!」

「分からんが任せた。」


イシュにゲイルウルフの尻尾の回収を任せ、残る三人で周囲を警戒する。その後は索敵、排除、回収の繰り返しだった。気付けば空は紅くなっており、もうじき夜になる事を告げていた。


「そろそろ戻るか。まあ、初めてにしては中々集まったんじゃねえか?」

「うふふ...初めての夫婦の共同作業です...!」

「こんなのが初めてで良いのか?」

「トレイズ様となら何でも!」

「お前が良いなら良いさ。」

「オレはそういうの苦手だ...。」

「微笑ましいじゃないか。」

「だがなあ...。ああムズかゆい!背中辺りが特に!」


夫婦の甘い会話に悶絶するセルカをアルザが宥めながら、今夜の宿探しをする為村に戻る。夜の村は今日の疲れを癒したい冒険者で昼とはまた違った活気があった。


「さて、宿探しだな。」

「いっぱい貰えましたし良いところに泊まりましょう!」

「こういう所で金は使えん。安い所にする。」

「あう。」


ギルドに尻尾と銀貨の交換をしに行った時、回収した尻尾の数は優に百を超えていた。その為、またも冒険者達をざわつかせ、新記録を樹立しながらの報酬である銀貨115枚の受け取りとなったのだった。


「銀貨貰う時に聞いた『ルクル休憩所』って所でいいだろう。行くぞ。」

「狭いんでしょうか...。」

「ポジションに考えろイシュ。狭いならくっつけるぞ。」

「確かに...!そう言えばアルザの姿が見えません。何処に行ったのでしょうか?」

「アルザは用事があると言っていた。一先ず宿に行くか。」

「.........。」

「セルカさん、どうかしましたか?」


何処か思い詰める様な表情をしているセルカをイシュが心配する。セルカは決心した様子で口を開く。


「......トレイズ、イシュ。宿で話がある。」

「...分かった。」

「話、ですか。」


ギルドの後ろに位置する宿、『ルクル休憩所』に到着する。中は奥に厨房がある受付と部屋のみというシンプルな物で、二階にも部屋があった。受付の若い男に部屋二つの宿泊金と夕食朝食の料金を三人分払う。


「それではお客様のお部屋は二階の12番と13番になります。こちらは部屋の鍵です。夕食は後で部屋にお持ちしますので、外出等は早めにお済ませ下さい。」

「ありがとう。」


男から鍵を受け取り、セルカに12番の鍵を渡す。


「オレとアルザの分まで払わせてしまってすまない。キッチリ返すから覚えていてくれ。」

「以外と律儀な奴だな。」

「兄様から『借りた恩は大きさに関わらず絶対に返せ』と教えられたんだ。返さないと竜じゃない。」

「いい兄貴だな。......話、聞くぜ。」

「ああ。」


13番の部屋の鍵を開け、セルカを中に入れた後鍵を内側から閉める。


「それで、話ってのは?」

「トレイズ、お前なら薄々勘づいていると思う。......アルザはまだイシュを殺す事を諦めていない。」

「やはり、か。」

「そんな!でも、だって...!」

「イシュ、落ち着け。...まあ、分かっていた事だ。アイツは簡単に何かを諦めるタイプじゃねえって事ぐらいな。」

「鋭いな。先に言っておくが、オレはアイツにイシュを殺させる気は無い。話はコレだけだ。」

「本当に律儀な奴だよ。」

「...オレにもようやく『仲間』が出来た様な気がしたからな。」

「何言ってるんです!同じ釜のご飯を食べたら仲間だって聞きました!今からですけど!」

「フッ、だそうだ。」

「イシュ......ありがとう。」

「えへへ。」


その後、部屋に届けられた夕食を三人で食べる。夕食はパンにステーキ、サラサラと飲める野菜のスープと値段にしては美味しい物だ。夕食を終えると、セルカは13番の部屋に移る。昼の疲れがあったので、少し早いがトレイズとイシュも寝る事にした。

少し小さいベッドに二人で寝る。蝋燭の火を消すと、部屋は真っ暗になる。


「トレイズ様...しますか?」

「こんな所だと声が漏れるぞ。」

「そ、それはダメですね...。」

「イシュ、アルザの狙いはお前だ。撃つ時は、絶対に迷うなよ。」

「...はい。悲しいですが、これもアルザの為ですから。」

「お前が撃てない時は俺が奴を撃つさ。おやすみ。」

「はい。おやすみなさい。」


目を瞑りしばらくすると、トレイズとイシュは眠りにつく。夜は更けていき、無事にトレイズ達の外の世界一日目が終わったのだった。



早く書きたいと思いながらも書きたい事が増えたりどう書けばいいかで遅くなります...。

(/)・ω・(ヾ)つらい

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