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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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祝祭日

今回も宜しくお願いします!早く上げたいのですが最近立て込んでおります...!暫くは遅れて投稿なります!

「おはようございますトレイズ様。」

「ああ。衣装、似合っている。」

「えへへ...。ありがとうございます!」


朝、イシュは成人の儀式用の礼服に着替えていた。礼服は緑のワンピースの様な服の上に、細かな装飾が施され前が開いたローブを羽織った様な物だった。


「さあ、行くぞ。」

「ええ。」


いざ村長宅を出て村の中心にある儀式会場に赴く。村の中心には既に村人が何人か集まっており、何時もの村と比べるとかなり賑やかな様子だった。

その中にはアトラとカイルも居た。こちらに気付いた二人が駆け寄って来る。


「来たか。こっちはまだ変わった様子とかは無いぞ。」

「怪しい奴なんかも見えない。本当に今日来るのかって感じだ。」

「成人の儀がもう始まる。全員持ち場に付け。」

「「了解。」」

「イシュ、俺達以外の奴が近付いてきたら誰であっても警戒を解くな。怪しい動きをしたら迷わず撃て。」

「分かりました。」

「よし、行くぞ。」

「はい...!」


イシュと共に村の中心の大木に向かう。大木は綺麗に飾り付けがなされ、近くには祭壇がある。恐らくここに立って祝詞を読み上げるのだろう。

大木の近くに居た妖しげな服装の老婆がイシュの元に来る。


「イシュ様、我等この日をどれ程待ち侘びた事か...。今日は森神様の降誕日と祝祭日が重なる特別な日。本当にめでたい日ですな...!」

「ありがとうございますルータルさん。私もこれで大人のエルフです。」

「それでは、こちらの台に。」

「はい。」

「イシュ、存分にやれ。お前は俺が守る。」

「はいっ!」


イシュが元気良く返事をすると、ルータルと呼ばれた老婆のエルフが集まった村人に呼び掛ける。


「これよりイシュ様の成人の儀式を始める!それではイシュ様、宜しくお願いします。」

「はい...。すぅ...」


深く息を吸ったイシュから聞こえてきたのは歌だった。透き通る様な声で紡がれる歌声に、トレイズを含めた誰もが聴き入ってしまう。少し遅れて、祭壇近くに居た村人達が木製の楽器で伴奏を奏でる。


「これは...森神を讃える歌か。」

「む。歌詞が分かるのか黒いの。」

「誰が黒いのだババアが。歌詞はまあ、なんとなくだが分かる。」

「古代の神祖ハイエルフが使っていた言葉だ。この歌で森神様をお呼びし、成人として認めて頂くのだ。」

「褒めないと来ない森神...。」

「褒めて伸びる御方なのさ。」

「そんなもんか...?」


イシュの歌が佳境に入ると、イシュ自身も気分が乗って来たのか歌声が一層艶やかになる。祭壇の周りには色とりどりの花が咲き乱れ、村一番の大木は枝に花と実をつける。気付けば、上からは花弁が舞い降り、下では鮮やかな花が咲き誇るという状況になっていた。


「こいつはすげえな...。」

「素晴らしい...!」


余りに美しい光景に驚きを隠せない。村人の中には感動で涙を流している者もいた。イシュの歌が終わりに近付いた時、突如として森がざわめき始める。


「おお、森神様が来るぞ!」

「今回の祝祭は何時もと違う!森神様も喜んでおられるのだ!」

「宴の準備だ!」


村人達が騒ぎ始める中、迫り来る違和感に気付いたのはトレイズだけだった。森は確かにざわめいているが、その中にこちらに近付く何かがいる。そして、ソレは唐突に来た。


「......ッ!!イシュ!伏せろ!!」

「えっ!?」


森の中から現れたのは大型の黒いドラゴンだった。ドラゴンはイシュの立つ祭壇に向かって突進するが、トレイズによってその突撃は無意味な物となった。衝突の際、凄まじい風圧で周りの建物が薙ぎ倒される。大型のドラゴンの後、小型のドラゴンが十匹程森から出て来る。

黒いドラゴンの背中には見覚えのある人物が立っていた。


「外したか...。」

『アルザ、奇襲は失敗だ。こうなったら徹底的に殺るしか無い。』


黒いドラゴンの上に乗るその人物はアルザだった。そのアルザを乗せる黒いドラゴンは、さも当然の様に喋っていた。


「アルザァ、やっぱりテメェが敵か!」

「トレイズ、私の前に貴様が立ちはだかるか。...フンッ。異世界だと?主の言った通りだ。貴様は主の敵だ。呪子諸共焼き殺してくれる!!」

『異世界か...。俺は興味がある。』

「セルカ、その話は後だ。今は目的を果たす...!」


アルザはセルカと呼ばれたドラゴンの上で腰の剣を抜き、戦闘態勢に入る。


「アトラ!カイル!ボサッとするな!来るぞッ!」

「アルザ...。クソお!!」

「やるしか、無いのか...!?」

「アルザ...どうしてです!貴方はこんな事をする様な者ではありませんでした!何よりエルフの未来を想う強く優しい戦士だった貴方が、何故!」


イシュはやはりアルザが敵だと信じたくないのか、村を襲撃した理由をアルザ自身に問い詰める。村は既に小型のドラゴンの攻撃により、狭く濃い戦場となっていた。


「うるさいッ!主の力を奪った盗人に何が分かる!?私はお前を殺し、エルフを理想郷へと導いてみせる!」

『良いぞアルザよ!覚悟せよ、我が竜炎に焼かれるが良い!』

「上等だクソトカゲェ...!アトラ、カイル、お前らは小さいトカゲの処理を頼む。此処は俺が持たせる。」

「分かった!」

「死ぬなよ...!」

「イシュ、お前は逃げろ。森の外でも良い、早く逃げろ!」

「嫌です!私も一緒に戦います!」

「こりゃ言っても聞かないヤツか!?」

「はい!」

「仕方ねえ!行くぞ!」

「行きますっ!」


アルザは胸に手を当て静かな表情で剣を空に向ける。


「主よ、必ずや勝利を...。」

『行くぞッ!!』


祝祭日の決戦の幕が今、切って落とされる。

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