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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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作戦会議

遅くなりました!本当に最近ヤバイ...!

〜祝祭日まで三日〜


「おはようございますトレイズ様!」

「朝から元気が良いなお前は...ふわぁぁぁぁあ。」


朝、イシュの元気な声に起こされる。夜通し弾丸作成に明け暮れていたので眠気がまだ残っていた。


「トレイズ様、夜更しはダメですよ?」

「お前の訓練の為の準備をしてたんだよ。これなら、夜更かしの理由にはなるだろ?」

「私の訓練の準備ですか?んー...それなら大丈夫?です!」

「それじゃあ俺は風呂に入るから、終わったら始めるか。」

「はい!」


イシュを部屋で待たせ、村長宅裏にあるドラム缶風呂に入る。梯子もスキルで作ってあるので、入りやすくなっていた。今では他の村人も使いに来る程好評だった。

風呂から出て着替えを済ませて再び部屋に行くと、イシュがそわそわした様子で何故か正座をしていた。


「イシュ、始めるぞ。」

「はい!」


もはや訓練場扱いの村長宅裏に行き、事前に準備していたアタッシュケースから『物質作成』で作ったコルト・ガバメントを取り出す。イシュは不思議そうな顔で銃を見る。


「これは?」

「今日の訓練で使う武器だ。簡単に言えば、俺が使っているのと同じ物だ。」

「トレイズ様の物と同じ、ですか。」

「この武器の名前は『銃』だ。」

「『銃』...。」

「早速だが持ってみろ。」

「え?は、はい。」


イシュは右手で銃を持つ。しかし、その後どうすれば良いかは分からないようで、銃を360°からしきりに観察していた。


「これをどうするんですか?」

「いいか、持ったまま開いている穴を遠くの的に向けるんだ。」

「こう、ですか?」


イシュは片手で銃を的に向けて構える。


「そうだ。だがこのままじゃ反動で怪我をしてしまう。左手を持っている部分の下を優しく握るようにしろ。」

「こんな感じでしょうか?」

「良いぞ!そんな感じだ。少し手をどかしてくれ。」


イシュの左手をどかし、銃に弾丸の入っているマガジンを挿入する。小気味よい金属音が鳴り、少し重みが増す。


「何をしたんですか?」

「弓矢で言う所の矢を入れたのさ。大事に使えよ?俺が夜通し作ったモンだからな。」

「りょ、了解ですっ!」

「OKだ。よし、左手をさっきの位置に戻せ。的に向かってココを右手の人差し指で押すんだ。」

「こう、でしょうか!キャッ!」


バガッと鈍い爆発音が鳴り、遠くの的が粉砕される。元にしたコルト・ガバメントより威力が段違いに高い。


「大丈夫か?これが銃だ。」

「弓矢とは全然違う...。」


イシュの銃からマガジンを抜き取り、解説を始める。


「いいか?銃ってのはこの『マガジン』に弾丸、矢が入っていないと撃てねえ。そして弾丸の入った『マガジン』が入れられてる状態でこの『引金』を引くと、今みたいに弾が飛ぶ訳だ。ここまでは分かったか?」

「一応、はい。」

「よし。銃を使う上で気を付けて欲しい事が何点かある。まず最初に、銃を無闇に誰かに向けるな。引金を引けば、子供でも簡単に大人を殺せるのが銃の長所であり短所だ。次に、撃つ覚悟が無いなら何であっても銃を向けるな。躊躇った一瞬が命取りになる事がある。」

「怖いですね...。」

「そうだな。だが、身を守る上で弓矢よりは銃が良い。ポケットに入る大きさで、かつ狙う所によっては怪我で済ませる事も出来る武器だからな。」

「そうでした...!これはあくまで私の護身用の武器なのですね?」

「一応な。だが魔法の効かない相手や、魔道士が相手の時にはかなり使えるだろう。そうだ、祝祭日当日には勿論持たせるが、その時は服のポケットに隠しておけ。隠し玉として取っておくんだ。なんせ、この世界には絶対に無いだろう武器だからなあ...!」

「トレイズ様、顔が怖いですよ...。」

「すまん、性分だからな。俺はさっさと敵を倒してお前と村の外に出たいだけだ。」

「そうですね!大きな目標の前には壁があるってお母様も言っていました!つまり、その敵が私の壁なのですね!」

「さあ練習だ。的に安定して当てられるまで続けるぞ。」

「はいっ!」


再びイシュの持つ銃にマガジンを挿入し、射撃練習を促す。懸命に的を狙って引金を引くが、思いの外当たらない。


「難しいです...。」

「筋は良い。だがな、もう少しこうだな。」


イシュの手の上から重ねるように銃を両手で握る。すべすべとした絹のような綺麗な肌から温もりが伝わって来るのが分かる。


「はわわ...トレイズ様...。」

「もう少し力を入れて握るんだ。腕を真っ直ぐにして、しっかり狙えば当たる。...にしても綺麗な肌だな。」

「もう!そういう事言わないで下さいよお!」


イシュは恥ずかしそうにしながら引金を引く。放たれた弾丸は見事に的の真ん中を貫通し、更に奥にあった木に当たる。


「おー良いぞ良いぞ。やれば出来るじゃねえか!」

「複雑ですけどね!...あ、今ので弾が切れたみたいです。」

「貸してみろ。」


予め弾を入れておいた予備のマガジンをイシュに渡す。


「これを銃の下にある穴に入れるんだ。間違って向きだと入らない様になってるから、無理に入れようとするなよ。」

「大丈夫です。無事入りました。」

「その次は引金の上にあるこの小さい金具『ストッパー』を外すんだ。そうすれば、開いたままのココ、『スライド』っていう部分が元に戻ってまた撃てるようになる。」

「なるほど...!『ストッパー』に『スライド』ですね。」

「ここまでの事を忘れるなよ?銃ってのは簡単に殺せるが、自分の身を守るのには心強い。怖さを知った上でこそ、銃の長所を最大限に活かせる訳だ。分かったな?」

「はい!武器はやはり持つ人によっては変わるものですから!」

「それが分かってるなら言う事は無いな。さあ、練習再開だ。」

「はい!」


イシュとの射撃訓練は夕方遅くまで続いた。トレイズはその後、イシュの使った弾丸を補填する為、またもイシュが眠る隣で夜通し弾丸を作るハメになった。


「百発近く撃ってやがった...!今日も寝えねえのか...!?」

「むにゃ...。」


祝祭日まで後二日の翌日は、トレイズが夕方まで寝ていたせいで呆気なく潰れてしまった。その日は回復したアトラとカイルが訓練をしにやって来たのだが、トレイズに断られ渋々自主練をする羽目になっていた。実は射撃訓練の時も来たのだが、アトラが反動で脱臼した為帰ってもらっていたのだ。そして祝祭日前日となった日、村長宅裏に何時もの四人は集まっていた。


「今日は訓練をしないのか?」

「ああ。明日はいよいよ祝祭日だ。敵も出せる戦力を出してくる事になる筈だ。そこでだ、祝祭日ってのは当日どう言う流れでやるかを聞きたい。話はそれからだ。」

「そうだな...。当日は村の真ん中の祭壇に成人するエルフが立って、成人の儀の祝詞を読み上げるんだ。そして、読み終わった時に森神様が顕現なさったら晴れて成人として認められ、成人の儀は終わりだ。その後はまあ、宴だよ。」

「森神様が来るのか?」

「俺とアトラの時は光の玉みたいなのが来て占い師のばあちゃんに『成人と認める』って言って帰ったんだよ。」

「森神様、ね。」

「敵かあ。やっぱり魔物が来るのかな...。」

「俺はそう予測している。だがそれを操ってる元がいる筈だ。ソイツを叩けばいいとは思うんだがな...。」

「訓練を忘れないようにしなきゃいけないね。」

「アレは実戦で戦えるようにする為の訓練だからな。忘れられたら俺が困る。」


アトラは苦笑いしながら後頭部を搔く。どうやら実戦で戦うのはまだ自信が無いらしい。


「当日は俺がイシュの近くで護衛をする。二人は大木から少し離れた位置で警戒態勢を取っていてくれ。俺がイシュを守りながら陽動をする。」

「トレイズ様、私は大丈夫です!」

「ダメだな。万が一怪我でもさせたらジジイになんて言われるか分からん。人間が相手かも知れん。」

「で、でも...。」

「俺がそう簡単に死ぬ訳無いだろ?大丈夫だ、キッチリ敵は倒して約束を果たすさ。」

「......分かりました。私も出来る事はします。いいですね?」

「了解だ。無理はするなよ。」

「トレイズ様よりはしません!」

「よし、後は各々自主訓練ってとこだな。流石に模擬戦は危険だから出来ないがな。」

「了解だ。」

「分かったよ。」

「はい!」


最後の訓練は終始魔法や接近戦の確認だった。アトラとカイルはいよいよ実戦かもという事もあってか、表情は真剣そのものだった。イシュにはサバイバルナイフも持たせ、ナイフと拳銃による戦い方も教えておいた。


「今日は早めに解散しておく。明日は敵が来るだろう。邪魔者は倒し俺達でイシュを、いやエルフを守るぞ!」

「「おお!」」

「おー!」


四人はそれぞれの家に戻り明日の決戦に備える。アトラとカイルにとっては新しい可能性を試す戦いであり、イシュにとっては新しい人生の為の戦いである。

夜、部屋で寝る準備をしていたイシュは銃剣を磨いていたトレイズを不思議がり声を掛ける。


「トレイズ様は寝ないのですか?」

「また明朝に敵襲があるかもしれん。俺はこのまま警戒を続けておく。」

「分かりました。おやすみなさい。」

「ああ。おやすみ。」


こうして夜は更けて行き、シント・ハイエルフの村は成人の儀の祝祭日を迎える。






続けて朝か夜には投稿したいです...。

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