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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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特訓あるのみ

遅くなりました!今回も宜しくお願いします!

「アルザには気をつけるのじゃ。奴の目は昔のアルザの目では無い。わしも疑いたくは無いが、可能性は十二分にある。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱり、アルザが黒か...?」

「トレイズ様、早く故郷の事を聞かせて下さい!」

「おお、そうだったな。」


長老にイシュの護衛を頼まれ、アルザに注意を払うよう言われた翌日の朝、トレイズは長老の家でイシュに地球の事を話そうとしていた。


「そうだな...。俺が住んでいたのは『地球』っていう星で、大陸が五つある所だ。」

「『地球』...!やはり別世界はあるのですね!」

「そうなるな。俺が住んでいた国は争いの絶えない国で、俺はそこで16までの11年間を少年兵として過ごした。その後に運良く保護されたんだが、その後は他にやることも無かったし、仲間を集めて戦争屋を始めたんだ。」

「戦争屋?」

「傭兵さ。金で雇われて戦う使い捨ての兵士だ。」

「そんな所で暮らしていたのですか...!?」


外の世界を見た事の無いイシュにとっては、こういう話は少し刺激が強過ぎたのかも知れない。


「ああ。それで何時ものように戦っていたら、いきなり時間が止まったみたいになった。それで、気が付いたらこの村の近くにいた訳だ。」

「なんとも不思議な事ですね...。」

「そうだな。だが、俺みたいな奴じゃなけりゃ見知らぬ土地でお前の護衛なんてやってないさ。」

「トレイズ様がこの世界に来られたのも運命の様ですね。私も『地球』に行ってみたいです!」

「戻る方法を見つけたら連れて行ってやる。でも空気が汚いぞ?」

「それなら綺麗にしたら良いんです!」

「ハハハッ。違いねえ。」


ふと女性とこの様な会話をしたのは何時ぶりだったかと考える。思えば少年兵の時は娯楽など無かったし、PMCを設立しても楽しみは食事と酒ぐらいだった。今だけは部隊の仲間の事を忘れそうだった。


「他に『地球』についての事は無いんですか?例えば、国は幾つあるのですか?」

「国は確か...120とかあった気がするぞ。小さい国は、独立しても金が無いから結局戦争になっちまう所が多かった。」

「そうなのですね...。」

「後、魔法が無いぞ。その代わりに地球の人間は機械を作って生き延びて来た。」

「魔法が無いのですか!?機械が発展した世界...!是非行ってみたいです!」

「帰れる方法は絶対にある。その時が来たら、一緒に地球旅行と洒落こもうや。そうそう飽きはしない所だ。」

「はいっ!約束ですよ?」

「死なねえ限り守るさ。」


イシュとの他愛無い雑談は夕方まで続いた。昼食を取ることを二人共忘れていたため、夕食のパンとスープはいつもより早く無くなった。

そして、それをジッと見つめる眼があった。気配を殺して闇に溶け込む様にしていたが、トレイズにはハッキリ見えていた。


(おい、イシュ。)

(なっ、なんですか?)


食事を終えてそのまま座っていたイシュにそっと静かな声で喋り掛ける。


(今俺達は見られてる。誰かは分からんが、おそらく此処に魔物をけしかけた奴だ。)

(何処にいるんです...!?)

(焦るな。今は下手に動いたら厄介な事になるかもしれん。しばらく泳がせる。)

(泳がせる...?)

(何日か様子を見るんだよ。見られている事が何回かあったら、この村に内通者が居る事になる。)

(なるほど...。)


しばらくすると気配は消え、残ったのは夜の静寂だけになった。機会を窺うような視線では無く、ただただ『見ていた』視線だった。


「ふう。どっか行ったみたいだな。」

「本当ですか?なんか緊張しました...。」

「今日は特に何も無かったが...行動を起こすとしたら、イシュの成人祝いか?」

「それなら後六日です。その時に襲撃があると...?」

「一番可能性が高いのはその日だ。この前の石ころで、敵は被害を最小限に留める手段を無くしたはずだ。となると、もう形振り構わず来るはずだ。」

「その日に備えねばなりませんね。」

「明日から少ししか無いが、魔法と戦い方の特訓だな。アトラとカイルも呼んでやるぞ。」

「分かりました!」

「今日の所は寝るか。」

「そうですね...ふわぁ...。」


イシュと共に二階の部屋に向かう。いつ決めたかは分からないが、慣れた感じでイシュがベットで、トレイズが床で寝た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜翌朝〜


「おうよく来たな。」

「アトラ君、カイル君おはよう!」

「お、おはようございます!」

「お、おはよう。」


トレイズが早朝に叩き起しに行ったアトラとカイルは、準備を整えて昼前に来た。アトラとカイルが来る前に、イシュはトレイズの作ったドラム缶風呂に入れていたので一層機嫌が良かった。


「ところで、何で僕達を呼んだんだ?」

「それは俺も気になってたんだよな。」


アトラの疑問にカイルが同意する。


「お前達を呼んだのは他でも無い。五日後に控えたイシュの成人祝祭を無事達成するため、イシュを当日護衛出来るようになる訓練をする為だ。」

「イシュ様をお守りするのか...!」

「それならやるぞ!」

「決まりだな。」

「二人共、一緒に頑張ろうね!」


太陽の様なイシュの笑顔に二人の顔は思わずだらしなくなってしまうが、慌てて表情を戻す。


「訓練って具体的には何をするんだ?」

「自慢じゃないが、魔法はそこそこ出来るぞ。」

「そうか、じゃあ魔法以外は?」

「えっ!」

「あー...それは...。」


アトラとカイルは聞かれたく無かった事を聞かれたらしく、二人揃って申し訳無さそうな顔をする。


「う、運動だけはからっきしなんだ...!」

「魔法は出来るんだが、剣の才能は無いんだよ...。」

「この前お前らが戦ってたのを見てたが、本当に出来ないとはな。」

「面目無い...。」

「剣術学んどければ良かった...。」

「だが大丈夫だ。短い時間しか無いが、俺が接近戦指導をしてやる。なに、死なない様に鍛えてやるだけだ。」


こうして、現役傭兵による特訓は始まりを告げた。四人で村長の家裏に向かう。


「最初は俺と模擬戦をして貰う。魔法は無しだ。よし、来い。」

「え?え?」

「そんないきなり...。」

「戦場での戸惑いは死を招くぞ。ハイ一回。」

「ぐあっ!」


困惑していたカイルを蹴り飛ばす。カイルは軽く吹っ飛ばされて行ってしまう。


「トレイズ様!?何をするんですか!?」

「特訓だ。」

「でも飛んでいっちゃいましたよ!?」

「しょうがないな。」

「しょうがないですか!?」

「カ、カイルー!!」

「後は、任せたぜ...。」

「カイルーーー!!」

「戦場で立ち止まって味方の死を悼むアホが居るかっ!アホが!!」

「ぐわああ!」


カイルに駆け寄ったアトラをすかさず蹴り飛ばす。アトラもカイルと同じく吹っ飛んで転がる。


「ったく馬鹿野郎が...。オラ、早く起き上がって来い!」

「ク、クソお...。」

「こうなりゃやるしか無いか!」

「その意気だ!来い!」

「う、うおおお!」

「遅い!」

「う、うわ!?」


慣れない動き方で殴りかかってくるカイルの手首を素早く掴み、横に移動しつつそのまま引っ張り倒す。


「こ、これ魔物相手に使うのか?」

「多分使わん。やったら死ぬだろうな。」

「じゃあ何で!?」

「知るか!」

「ちょっ、理不尽...」


今度は起き上がったカイルを投げる。投げ飛ばされたカイルは地面に倒れ伏す。


「相手は人間でもあるんだ。それに、こういうのに慣れれば相手の動きを読んで行動出来る。」

「た、確かに...。ぐふっ。」

「カイル君、大丈夫?」

「だ、大丈夫ですよイシュ様!この位ならまだやれます!」

「それならまだやれるよな?」

「え?あっえーっと...。」

「おりゃあ!」

「おっ?不意打ちとはなかなかやるな!だが遅い!」

「うわあっ!」


カイルが投げ飛ばされていた間に静かに忍び寄っていたアトラが飛び掛かるも、気配を察知していたトレイズに避けられ勢い余って倒れてしまう。


「不意打ちをするなら一撃で殺すつもりでやるんだ。外せば自分の位置が敵に知られる。不意打ちの失敗は真っ先に死が待ってるぞ。」

「た、確かに...。」

「これでアトラは一回死んだな。カイルは二回死んでるぞ。そら!次だ次!二人まとめて相手してやる!」

「エルフ舐めるなよ!」

「僕だって!」

「いい顔だ!来い!」


その後、三人の肉弾戦はムキになったカイルのせいで夜まで続く事になった。アトラとカイルは、結局トレイズに一撃も与えられ無かったのだが。

夜、ボロボロの姿で家に戻るアトラとカイルを見た村人達は大変驚いたと言う。




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