英雄の遺言
少し短めですが今回も宜しくお願いします!
3000PV越えました!ありがとうございます!
「俺から仕掛ける。イシュ、さっきの魔法で援護を頼む。」
「分かりました!」
「良い返事だ。俺を巻き込むなよ!」
こちらに向かってきたゴーレムは三体で、明らかにイシュを狙っていた。右に走りながら一番前に出ていたゴーレムに狙いを付け、引き金を絞る。軽快な破裂音が連続で鳴り、魔力製の弾丸が凄まじい速さで放たれる。ゴーレムは腕で弾丸を防ぐが、霰のように降り注ぐ弾丸によって削られていく。しかし、両腕が無くなっただけでまだ形は残っていた。
「流石にこんなんじゃ無理か!"リロード"!」
「今です!"目覚めよ!我が同胞達!"」
軽い金属音が鳴り次の弾丸が装填されると共に地面から蔦が突き出てくる。今度は数を増えて五本生えて来ていた。
「"貫け!"」
イシュの命令に従い、蔦達は一斉に腕を無くしたゴーレムに突撃する。蔦達は硬そうな岩の体を難なく貫き、ゴーレムはあっという間に岩の塊と化した。
「ナイスタイミングだ!」
「はいっ!」
「これでも喰らえ!」
『想造弾丸』の効果を信じ頭の中でイメージした弾丸を作成する。イメージをしたのは対物ライフル、別名アンチマテリアルライフルだ。別のゴーレムに向けて引き金を引くと、爆発音と共に弾丸が放たれる。ゴーレムは腕で防ごうと試みるも、戦車の装甲を貫く弾丸が岩等に防がれる筈も無くゴーレムの体は粉々に砕け散る。
「ビンゴッ!」
「凄いですね...。」
三体目のゴーレムは蔦の一斉攻撃に少しずつ削られて行き、最後は銃剣から放たれた弾丸で止めを刺された。
「ふう...。粗方片付いたな。よし、他の奴等の援護に行くぞ。」
「村の方達は大丈夫でしょうか...。何で魔物がこんなに...。」
「まだ分からんな。早朝の襲撃もそうだが、どうにも狙いはお前らしいぞ?なんかしたのか?」
「ええっ!?何もしてませんよ!」
「だよな。まあいい、行くぞ!」
「はいっ!」
(イシュのスキルを聞いた時のジジイの様子といいこの襲撃といい、どうもきなくせえな。結界もあると言っていたが...。となると、内通者が居るのか?)
「? トレイズ様、どうかしましたか?」
「少し考え事をしてただけだ。行こう。」
急いで他の村人が戦っている場所に向かう。すると、いつか見たあの魔道士二人組が必死に戦っていた。魔法の腕はなかなからしいが、ゴーレムに致命傷を与えるとまでは行かなかった様子だ。
「アトラ君!カイル君!大丈夫!?」
「イシュ様!?」
「な、何故ここに?」
イシュは魔道士二人組に駆け寄る。守るべき対象であるはずのイシュが来た事に、二人はひどく驚いていた。
ちなみに、トレイズは今初めてあの二人の名前を知った。
「今は目の前の敵に集中しろ!」
「は、はい!"貫け!"」
イシュの命令に応えた蔦が地面から突き出て来る。そして、勢いそのままにゴーレムを貫いて空中に投げ飛ばしてしまう。そのまま自然落下したゴーレムは地面に叩き付けられ、ただの岩の塊に姿を変えた。
「今のは...?」
「た、助かった...。」
「大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」
「大丈夫ですとも!ではなく!イシュ様は何故こんな所に!?」
「コイツが戦うって言って聞かねえからな。俺の後ろで援護してもらってる。さっきの植物もコイツのだ。」
「先程の植物をイシュ様が?と言う事は、やはりイシュ様が『森の御子』だったんだ!」
「伝説通りだ!これで苦難の時代が終わる!」
アトラとカイルは勝手に盛り上がっていたが、何の事か分からないトレイズとイシュにとってはただただ謎だった。しかし、イシュは少しだけ心当たりがある様な表情をしていた。
「待て待て。何の事だ?何でお前らがそれを知っている?」
「『アスカント英雄譚』を知らないのか?五英雄の一人、ルプス・ケリドウェンの事だよ!彼女のプレシャススキルも『森の御子』なんだ!」
「ふむ。それで、伝説ってのは?」
「彼女はその生を終える時にこう言い残したんだ。『私と同じ能力を持つ者が現れた時、世界に変革の波が来る。その時こそ、真にエルフの絆が試される時だ。』とね。」
「それがイシュだと?変革ってのはまた曖昧だな。」
「そうさ!俺達はこの変革でエルフの苦難の時代が終わって、人攫いや亜人狩りに怯える事も無くなるって考えてる。でも、ルプスが言い残した言葉には続きがある。」
「嫌な予感がするんだが?」
「その通りだよ。さっきの続きに『しかし、エルフの変革を助けるのもエルフだが、その変革を良しとしない者もまたエルフだ。』とある。」
「なんだと...?」
(これじゃあまるで今の状況を予言してるみてえじゃねえか...。他にヒントが無い以上、これを信じるしか無さそうだな。とすると、内通者は誰だ?ジジイも怪しいが他の奴の可能性もある...。)
「念の為聞いておくが、お前らがあの石ころ共を呼んだわけじゃないんだな?」
「そ、そんな訳ないだろっ!?」
「イシュ様を危険に晒す事なんてする訳が無い!信じてくれ!」
「トレイズ様、彼らは内通者などではありません。エルフの未来を信じる一途な戦士です。」
「分かってるさ。いいか、怪しい奴がいたら教えろ。内通者は殺す。誰であろうとな。」
アトラとカイルは息を呑む。少し前から続く魔物の襲撃、そして今日の不自然な襲撃が彼の中で繋がる。そう、この村に外部との内通者がいるのだ。
最近は端末がゴミすぎて起動するのも億劫です:(´◦ω◦`):プルプル
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