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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
トレイズ編 第1章 「戦場は無くならない」
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防衛戦

遅れました!すいません!!

「さて、どうする?」


いつの間にか、目の前には狼の様な魔物が三匹いた。ライオンと同じ程の大きさなので、威圧感はなかなかの物があった。トレイズ自身トラとは闘った事があるので、耐性はあるにはあったのだが、緊張感は最高点に達している。

三匹の魔物は犬歯を剥き出しにしながらこちらの隙を窺っていたので、襲い掛かってくるのに時間は要らないと見えた。


(考えろ...。魔力...いつの間にかあった銃剣...そしてあの空薬莢...。もしこれが俺の魔力で弾丸を生成しているとしたら、あの時撃てたのも無理矢理だろうが納得出来る。なら、それに賭けるしか無えか!)


銃剣を魔物の方に向け、引き金を絞る。爆発音に似た発砲音と共に弾が放たれる。弾丸は魔物の眉間に当たり、そのまま頭部を貫通して魔物を絶命させる。

一撃で仲間が倒された事に気付いた二匹の魔物はこちらに急接近し、一匹が跳躍して襲い掛かって来る。


「食らえェ!」


飛び掛ってきた魔物に銃剣を向け、今度はそのまま引き金を引き続ける。すると、爆裂音が隙間無く連続で発せられ、弾丸が凄まじい速さで放たれる。それに合わせて空薬莢も凄まじい速さで放出され、瞬く間に空薬莢の小山が出来上がってしまう。

飛び掛ってきた魔物は空中で避ける術等無く、撃ち出された弾丸の殆どに当たってしまう。魔物は木っ端微塵になり、目の前にいた魔物は残す所一匹になっていた。


「テメエが最後だな?死ねやッ!!!」


最後の一匹に向けて引き金を絞る。



カチンッ



「あ?」


小気味よい金属音が鳴る。


「んん?どうなってんだ!?」


もう一度引き金を引く。


カチンッ


「これってまさか......!?」


理由は分からないが攻撃出来ない事に気付いた魔物は、地球のオオカミよろしく襲い掛かって来る。


「弾切れだとおおおお!?」


咄嗟に魔物の爪による攻撃を銃剣で受けて防ぐが、徐々に押され始める。


「ぐぐぐぐ...!!マガジンも無いなにどうやって"リロード"すりゃあ良いんだあああ!!」


魔物の攻撃に抵抗しながら今言える文句を全力で叫ぶ。


ジャキッ


すると、銃剣から先程とは違う金属音がした。


「あ?ってうおお!」


一瞬気が抜けたせいで魔物の攻撃がすぐ迫るが、間一髪で回避に成功する。すぐさま魔物から距離を取る。

聞き間違える事の無い金属音に一縷の望みを賭けて、引き金を引く。


バガンッ!


銃剣から凄まじい爆発音と共に弾丸が放たれ、弾丸は魔物の体を真っ二つにする。周りには倒した狼型の魔物三匹分の肉片やらが散らばっている。


「ふう...。ったく、俺の言葉に反応するなんて聞いてねえぞ...。まあいい。これで好き勝手出来る訳だしな...!」


安堵の息と一緒に戦いを有利に進める手段が手に入った事が分かり、嬉しさで笑みが零れる。そうと分かればと、別の戦闘音が鳴る場所に向か

う。


「くっ...流石に前衛が居ないのは厳しいか...!」

「何でこんな時にファイターやらシーカーが出払ってるんだ!」


別の場所で、二人のエルフの男性が狼型の魔物と戦っていた。二人共魔道士の様で必死に魔法を使い抵抗していたが、魔物の動きに翻弄されていた。前衛が居ないことを嘆いていたエルフが魔力切れで膝を着く。それを心配して駆け寄ったもう一人のエルフに魔物が飛び掛かる。


ヒュッ!


突如飛んで来た矢が飛び掛ってきた魔物に刺さり、その魔物は絶命する。矢はその後も次々と魔物を屠っていく。矢を放った人物は近くにあった建物の上から飛び降り、二人のエルフの元に駆け寄る。


「大丈夫か!」

「アルザか!助かった!」

「危ない所だった。ありがとう。」


アルザと呼ばれた男性は長い髪を後ろで一本に束ねた、顔立ち美しいエルフの男だった。アルザは二人のエルフに問い掛ける。


「無事で何よりだ。ところでイシュ様は?」

「イシュ様ならご無事だ。」

「昨日来た人間が助けたらしい。」

「そうか...。」


アルザと呼ばれたエルフは何故か顔を曇らせる。


「どうした?」

「いや、外の者、ましてや得体の知れない人間とイシュ様を接触させてしまうとは...。」

「長老様の認めた者だ。信用するしか無い。」

「長老様が認めたと言えど我々は神に愛された種なのだ...!何故人間如きに、この村の用心棒等やらせる必要がある!」

「長老様の判断に従うしかないだろう?それに今は魔物共を殲滅するのが先決だ。」


明らかに余所者であるトレイズを毛嫌いするアルザを、二人のエルフは静かに諌める。アルザも冷静になったのか、表情は静かな状態に戻っていた。


「そう、だな。済まなかった。行くぞ!この村は我等の手で守る!」

「ああ!」

「了解だ!」


その時、三人の前に魔物が表れる。数は十体程だったが、その中に一頭一際大きい個体がいた。

その個体は、周りの魔物の三倍程の高さがあった。


「ただの突然変異したゲイルウルフかと思っていたが、まさかリーダー格までいるなんて...!」

「あれは神話に出て来るルナウルフ...?神話級のバケモノに勝てるのか...!?」

「怯むな!ここで魔物共にやられてはイシュ様をお守りする事が出来ない!我等の手で"神の勅命(プロヴィデンス)"に選ばれた神姫、イシュ様をお守りするのだ!」

「「おお!」」


アルザ達が逃げないと言う事を察したのか、ルナウルフは短く吠えて攻撃の指示を出す。リーダー直々の指示を受けた魔物達は、一斉にアルザ達に襲い掛かる。


ガガガガガガガ!!!


突然、けたたましい爆発音が連続で鳴り響く。音はアルザ達に襲い掛かった魔物のグループから、少し離れた場所から発されていた。爆発音がすると同時に、魔物達が次々と倒れて行く。


「な、何だ!?」

「分からんがチャンスだ!行くぞ!」

「ああ!」


魔物達が混乱に陥ったのに乗じ、アルザと二人は敵陣に切り込んでいく。アルザは弓では無く腰に挿していた長剣で魔物を斬り、魔道士である二人のエルフは攻撃型の赤魔法で魔物を殲滅する。


「なかなかやるなお前ら。」

「お前はあの人間...!」


突っ込んで来た魔物達を殲滅した所に出て来たトレイズに、アルザは明らかな敵意を向ける。


「おっと今は一先ずあの魔物を倒すのが先だ。行くぞ!後ろの二人は援護を頼む!」

「え?あ、ああ!」

「任せろ!」


魔道士のエルフ二人に援護を頼んだトレイズは真っ先にルナウルフに向かう。遅れながらも、そのすぐ後にアルザも突撃する。


「オラオラッ!!」

「ハァッ!!」


ルナウルフは迎撃するべく右前脚で薙ぎ払いをするが、トレイズはあっさりとそれを避けた上に銃剣で斬り付ける。トレイズを攻撃した隙に、アルザは長剣で左前脚の付け根付近を斬る。

それによって出来た傷に向けてトレイズは銃剣を連射し、後衛の二人もファイアボールで追加攻撃を行う。

ルナウルフが一瞬大きく怯んだのをトレイズは見逃さない。気配を今可能な限り殺し、ルナウルフの背後に素早く回り込む。


「これで終いだ!出来損ない(・・・・・)にしては良くやったよ!」


ルナウルフの頭に向け、頭の中で強力な一撃を想像して銃剣の引金を引き絞る。


ボンッ!


鈍い爆発音が鳴った後、遅れて破裂音と衝撃波がトレイズ達に伝わる。トレイズが頭の中で描いたのは『M1エイブラムス』戦車の主砲である51口径105mmライフル砲であった。銃剣から、戦車の主砲さながらの弾丸が放たれる。弾丸はルナウルフの頭を粉微塵に粉砕する。首から上の無くなったルナウルフは血を噴き出しながら倒れる。


「ふう...これで魔物共は掃討完了ってか?」

「そのようだな...。」

「お前、名前は?」

「人間に名乗る名前は無い。」

「そうか。俺はトレイズだ。しばらく厄介になるから、まあ宜しくな。」


トレイズはそう言ってアルザの肩を軽く叩き、足早に去っていく。トレイズが去った後、トレイズとアルザを見守っていたエルフの二人組がアルザに声を掛ける。


「そんなに冷たくするなよ。単純に戦える奴が増えたって考えろよ。」

「そうだな。にしても、どうしたんだアルザ?お前らしく無いな。アイツがルナウルフに止めを刺した時も驚いた顔してたし。」

「いや、単純にアイツが放つ奇怪な武器に驚いただけだ。」

「確かに。あれは驚いたぞ。」

「それは仕方無いな!戻ろう。被害の確認もある。」

「先に行っててくれ。俺は少し気になる事がある。」

「分かった。それじゃまた後でな。」

「ああ。」


魔道士のエルフ二人を先に帰したアルザは、まだ月の浮かぶ空を見詰めて一人呟く。


「美しき我が主よ、全ては貴方の御心のままに...。」


エルフの村に日が昇ろうとしていた。

タイトル変えようかと思いましたがやはり変更無しにしました。あらすじはその内大幅に変更したいと思っています。

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